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問題な王子様 162話 外伝 9話 ネタバレ 原作 あらすじ ロルカの王妃とのお茶会

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162話 外伝 9話 エルナとビョルンは、まだロルカに滞在中です。

 

リサは悩んだ末に、

妃殿下が堕落したという

結論を下しました。

それ以外に、どんな言葉でも

今の状況を

説明できそうにありませんでした。

 

優しくて純粋だった大公妃が、

待ちぼうけを食わせて、

夫と密かに逃げた日にも

リサは、今日ほど

ひどく驚きませんでした。

それは、問題の毒キノコである

ビョルン王子が主導したことが

明らかだったからでした。

しかし、この決定は

純粋に大公妃の意思であるという点で

大きな破壊力を持っていました。

 

リサは、

本当にこれに耐えられるのかと

尋ねると、相変わらず

信じられないといった様子で

テーブルの上の箱を指差しました。

 

ずっと落ち着いた態度を

保っていたエルナも、

その箱を眺める瞬間だけは

揺れる瞳を隠すことが

できませんでした。

 

エルナは、

王妃が直々に送って来た

プレゼントなので、その真心を

無視するわけにはいかないと

答えました。

 

リサは、

真心も真心次第だと言うと、

ため息をつきながら

豪華な金色の箱を開けました。

ロルカの王妃が送って来た

過度な誠意は、改めて見ても

なかなか困ったものでした。

 

前日の午前、王妃は、

王室の女性たちとのお茶会の招待状を

エルナに送って来ました。 

各国から来た使節団の貴婦人のうち

そのプライべートで親密な

招待を受けたのは

レチェンの大公妃だけでした。

 

公式的な外交の席以外、

なかなか親交活動をしない王妃が

直接手を差し伸べたのは

かなり異例のことだと、

レチェンの使節団は

口を揃えて話しました。

しかし、リサにとっては

そんな、御大層なことよりも、

エルナがラルスの王子妃に

勝ったことの方が重要で嬉しくて、

本当に踊りたい気分でした。

 

ラルスの使節団の代表は

ラルスの皇太子で、

名前を聞いただけでも身震いする

グレディス王女の

一番上の兄でした。

デナイスタとハードフォートの

不都合な関係は、

この大陸の誰もが知っていることなので

ロルカは、彼らがぶつかることを

最小限にするために、

細心の注意を払っていました。

レチェンとラルスも、

私的な感情を排除し、

少なくとも表面的には、

お互いを同盟国として

尊重していました。

 

しかし、目に見えない

両国の使用人たちの戦争は、

主に、ごく些細で幼稚な部分で

勃発しました。

 

レチェンの王子と王子妃が

美貌で1位を獲得して先制すると

ラルス使節団の使用人たちは

人脈という切札を使いました。

王子だけを見ると、

レチェンの勝利だけれど、

王子妃部門では、圧倒的な劣勢を

避けられませんでした。

ド田舎出身のレチェンの大公妃が

フェリアの王族出身で、

大陸の王家とあまねく親交が厚い

ラルスの王子妃と敵対するのは

無理があったからでした、

 

まともな実家の家門や

人脈一つない王子妃。

顔一つを除けば何もない

レチェンの王子妃。

あちこちで話している

その口を全て探し出し、

細かく縫っておきたいところでした。

 

ところが、エルナが、

ロルカの王妃に、

単独で招待されました。

自分たちの王太子妃と

ロルカ王太孫妃の間の

深い友情を誇っていた

ラルスたちの鼻を、

へし折ることができる絶好の機会に

レチェン使節団の

すべてのメイドたちは熱狂しました。

今朝、届いた王妃からの贈り物を

確認するまでは。

 

リサは、腰や足が丸見えの服を

どうやって着るのかと

再び反対しました。

服に対する趣向が

前世紀にとどまっている

大公妃にとって、ロルカの伝統衣装は

下着に他ならないはずでした。

 

王妃も、必ず着なさいと

強要するつもりで、

プレゼントしたわけではないはず。

その気持ちだけ、

ありがたく貰えば十分ではないかと

リサは説得しましたが、エルナは

もちろん、

強要されてはいないけれど、

着てあげれば、

もっと喜ぶのではないかと

落ち着いて反論し、

異国のドレスを見回しました。

 

貴重なお客さんに

服をプレゼントするのは、

ロルカの長い伝統らしく、

両国の文化と風習が違うので、

この服を着るのは難しくても、

朝の庭で交わした友情が込められた

プレゼントとして

大切にして欲しいと、王妃は

プレゼントと一緒に送って来た手紙で

伝えて来ました。

通訳が翻訳してくれたその言葉が

エルナの心を動かしました。

 

レチェンの王子妃エルナ・デナイスタは

この世界の異邦人でした。

グレディス王女の座を奪った

泥棒扱いを受けた時代よりは

はるかに良くなったけれど、

長い間、自分たちの世界を

構築しながら生きてきた人々の間に

混じるのは、依然として

容易なことではありませんでした。

 

偶然、出会い、

朝の散歩を共にしたのが全ての

他国の幼い王子妃を

友人と呼んでくれる王妃の心が、

エルナにとって有難く、大切でした。

 

エルナは、

自分の居場所を作っていくと

再び決意を固めると、

息を整えました。

 

ビョルンの見解は

聞かないことにしました。

使節団の王子たちと

テニスをしに行った夫に、

このようなことで人を送るのは

どう考えてもおかしいだろうし、

何より、大公妃の分として

与えられた仕事は

自ら、やり遂げたいと思いました。

 

見慣れない服を触っていた

エルナの指先が、

華麗な装身具に触れた瞬間、

ノックの音が鳴り響きました。

この服を着ることが、

レチェンの王室の礼法に

適っているかどうかを調べに行った

メイド長でした。

 

カレンは頭を下げて、

歴訪国の伝統衣装を身に着けることで

両国間の友情を確認したことは、

先代の時にも度々あったので、

王室の礼法や外交的慣例に反すると

見ることはできないという

使節団の顧問の見解と、

まだ異教徒の服を着た

王室の貴婦人はいなかったという

補足を落ち着いて伝えました。

 

笑顔でカレンにお礼を言ったエルナは

自分を試させた王妃の贈り物に

再び向き合いました。

あまりにも恥ずかしくて

めまいがしそうでしたが、

ここでは、

格式張る時に着る服でした。

異教徒。

それとなくロルカを見下す

その視線を、

知らないわけではないけれど、

だからこそ、王妃の真心を

尊重したいと思いました。

 

エルナは穏やかな笑顔で、

「準備してください」と

頑固な意思を伝えました。

 

妃殿下が堕落したという

絶望的な事実の前で、

リサは、再びため息をつきました。

パクッと飲み込んだキノコの毒が

ついに、美しくてたおやかな淑女を

堕落させてしまったのは

明らかでした。

ロルカの伝統衣装を着て登場した

レチェンの大公妃が起こした

波紋は大きく、

王妃宮に集まって、客を待っていた

ロルカ王室の女性たちは、

深い沈黙の中で、

エルナを眺めるだけでした。

彼女は無意識のうちに肩を伸ばし、

首をまっすぐにしました。

 

薄くて柔らかい生地と、

繊細で華麗に細工された装身具は

些細な動きにも、チャラチャラと

くすぐったい音を出しました。

毅然としようとすればするほど、

その音は、より敏感に

神経を刺激して来ました。

 

長引く沈黙に、ひょっとして、

何かミスをしたのではないだろうかと

不安になったエルナは、

視線を下げて、自分の服装を見ました。

レチェンのメイドたちは、

見慣れない服なので少し迷いましたが

観察力の鋭いリサが、致命的なミスを

犯したはずはありませんでした。

 

それなら何だろうか。

余計なことをしたのかも知れないと

後悔した瞬間、

王妃が近づいて来ました。

驚いて見開いていた彼女の目に、

今や、完璧な喜びの光が

宿っていました。

 

ロルカ式に挨拶を交わしてもいいかと

王妃のそばに立っていた

中年のメイドが言葉を伝えました。

朝の散歩に同行していた人でした。

「はい、いくらでも」と、エルナは

ようやく安堵の笑みを浮かべながら

頷きました。

 

その言葉の意味は、

通訳なしでも通じたのか、

王妃はメイドの伝言を待たずに

近づいて来ると、しわの寄った手を

胸の上に乗せたまま

挨拶の言葉を伝えました。

それから、彼女は、エルナの両頬に

優しく、自分の頬を合わせ、

レチェンの大公妃を歓迎しました。

 

左胸の上に置いた手が持つ意味は、

列をなして近づいて来た

ロルカ王室の女性たちとの挨拶が

すべて終わった後になって

分かりました。

「これは私の心から湧き出た真心です」

エルナの予想より

ずっと素敵な意味でした。

ビョルンはシャワーを浴びた後、

すぐにバルコニーに出ました。

華やかな色合いのクッションが置かれた

ベッドの横のテーブルには

侍従があらかじめ持って来た

レチェンの銀行からの書類が

きちんと置かれていました。

 

ビョルンは

クッションの山に寄りかかって

一番上に置かれたファイルを

開きました。

一日の始まりが早かったせいか、

特に気だるさを感じる午後でした。

 

大まかに調べた書類を置いた

ビョルンは、

習慣的に葉巻を手に取りました。

カッターを探すために首を回すと、

ちょうどそこに立っていた

幼いメイドと目が合いました。

ビクッとした彼女は後ずさりすると

大公妃は、

ロルカ王妃の宮殿にいると、

とんでもないことを急いで言いました。

 

後になって、その意図に気づいた

ビョルンの唇の間から、

プッと失笑が漏れました。

昨夜、何度も、

ロルカ王妃からの招待状を

自慢していたエルナが、

のどかな風景の上に

浮かび上がりました。

 

そろそろ、帰ってくる頃では

ないだろうか。

時間を見計らったビョルンは、

火がついていない葉巻を置いた手で、

メイドが置いていった

ブランデーの瓶を握りました。

銀のお盆の先に置かれた

氷の入ったコップは、

すぐに琥珀色の酒で満たされました。

 

一歩退いたところで

待機中のメイドたちに向かって

軽く頷くと、ビョルンは、

ゆっくりとした動作で

グラスを握りました。

 

丁重に挨拶をしたメイドたちが

出て行くと、

寝室は静かになりました。

 

日光の当たる庭を見つめていた

ビョルンは、再び視線を

手に持っている書類に移しました。

退屈な午後でした。

王妃宮を離れた馬車は

まもなく別宮が見える道に入りました。

エルナは、ようやく

安堵のため息をつきました。

本当によくやった。

今日だけは、そんな誇りを持っても

良いような気がしました。

 

男女の区分が厳しいロルカの王室は、

女性たちの空間に

家族以外の男を入れませんでした。

未婚だったり、

夫と同行しなかった女性客を

招待した時は、

王室の男性たちでさえ、

その場に同席しないのが

彼らの礼法だと聞きました。

 

おかげさまで、今日の王妃宮は、

女性だけの世界となり、

エルナはいっそう安らかな気持ちで

ティータイムを

楽しむことができました。

 

出入りを許された男は

乳母の胸に抱かれている

幼い子供たちが全て。

エルナがいくらでも包容できる

見慣れない男でした。

 

それとなく野暮ったいところがある

シュベリン大公も、

その小さな紳士だけは

容認するはずでした。

 

馬車が徐々に

スピードを落とし始めると、エルナは

急いでマントを羽織りました。

体をしっかり包み込むには

暑い天気でしたが、貞淑でない姿を

御者と侍従たちに

見せることはできませんでした。

 

ビョルンは、

帰って来ているだろうか。

アンクレットが揺れると

ふとエルナは、

それが気になりました。 

 

見慣れない服装が、

どうしても恥ずかしくて

しきりに小さくなるエルナを

じっと見守っていた王妃が、

「足首がきれいな女性だ」と

笑いながら話しました。

 

ようやく、エルナは

皆の視線が、自分の足首に

注がれていることに気づきました。

体を動かす度に揺れる

アンクレットの音のせいでした。

 

顔を真っ赤に染めたエルナが謝ると

王妃は、

さらに明るい笑みを浮かべながら

首を横に振りました。

ロルカ王室の多くの女性たちも、

彼女に似た笑みを送ってくれました。

皆が、たくさん足首を

褒めてくれたおかげで、

足首を意味するロルカ語を

自然に覚えるようになりました。

 

照れくさかったことを

思い出しているうちに

馬車が止まりました。

マントの裾をしっかり握り締めて、

エルナは急いで馬車から降りました。

ビョルンが帰って来ているという

知らせを聞くと、心臓の鼓動が

もう少し速くなりました。

 

エルナはホールを早足で通り抜け、

階段を上りました。

彼に近づくほど、

ますます心は逸りました。

やがて寝室の扉の前に立った時は

両頬がほんのりと上気していました。

 

エルナは「ビョルン」と、

声をかけようとしましたが、

気が変わり、

静かに寝室の扉を開けました。

つま先を立てて

慎重に踏み出す足に沿って、

さらさらと、くすぐったい音が

きれいに響きました。

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今回のお話で、

エルナが他国の王室との人脈が

全くないことに

気づくことができました。

しかも、泥棒扱いされていたなんて

最初の新婚旅行の時、エルナが

どれだけ苦労していたかと思うと

切なくなりました。

 

今回の歴訪でも、

少しは辛い目に遭ったかも

しれませんが、

エルナの真心が通じて

ロルカの王室の女性たちと

心を通わせることができて

本当に良かったと思います。

 

腰と足が見えるロルカの衣装を着た

エルナを見たら、またまたビョルンは

誘惑されてしまうと思いますが・・・

この続きは、明日、公開します。

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