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問題な王子様 50話 ネタバレ 原作 あらすじ マンガ 37話 あなたに教わりたい

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50話 エルナは結婚式の参列者にお礼状を書いています。

 

エルナは、

インクの染みが滲んだ便箋を片付けると

新しい便箋を広げました。

上段に記された大公家の金色の狼が

日差しの中で華麗に輝きました。

しきりにミスをしてしまうのは、

おそらく、その紋章が与える

プレッシャーのせいのようでした。

 

羽ペンを握り直したエルナは、

息を整えた後、

再び手紙を書き始めました。

 

パーベルへ。

端正な筆跡で力を込めて書いた文字が

真っ白な紙を埋めて行きました。

 

結婚式に参加してくれた

王室の人たちに、お礼状を書くのが

貴婦人らしい礼儀だと

フィツ夫人が教えてくれたおかげで

ここ数日、エルナは

手首がズキズキするほど、

多くの手紙を書かなければ

なりませんでした。

どれも見知らぬ名前ばかりでしたが、

フィツ夫人が助けてくれたおかげで

ミスすることなく

書き終えることができました。

大公妃の義務を果たして初めて、

エルナは、

祖母とバーデン家の人々、

そして、パーベルに

手紙を書く余裕を持つことが

できました。 

 

ハルディ家には、一行の手紙も

送りたくありませんでした。

「ダメです」と、

フィツ夫人に厳しく戒められても

その意志だけは、

曲げるつもりはありませんでした。

 

書き終えた手紙を封筒に入れて

封をしようとしたところ、

リサが、急いで机のそばに近づき

溶かした蝋を

素早く封筒の上に落としました。

その続きを期待する目が

煌びやかな照明に劣らないくらい

キラキラしていました。

 

小さく笑ったエルナは

リサが溶かしてくれた赤い蝋の上に

ギュッと印章を押しました。

鮮明に刻まれた王家の紋章

あれこれ見ていたリサは、

微笑ましい顔で拍手をし、

素敵だ。本当に大公妃らしいと

称賛しました。

 

たかだか印章を一度押したことで

喝采を受けたエルナは、

照れくさそうに笑って

机を片付けました。

小さな汚れ一つ残らないように

丁寧に隅々まで拭き、

羽ペンとインク瓶も、

きれいに並べました。

 

自分の物とは思えない自分の物。

自分に与えられたすべての物が

そうなので、エルナは心苦しく、

また、そのために大切でした。

ほんの小さな傷一つさせ

残らないように、

いつも輝かせようとしていたので、

自ずと慎重になりました。

 

発送する手紙を持っていたリサは

この人は、あの時会った、

あの紳士ではないかと尋ねました。

パーベル・ロアー

貴族の爵位さえ持っていたら、

どんな手を使ってでも、

お嬢様と結ばせてあげたかった、

あの俊秀な王立芸術アカデミーの

画家でした。

 

エルナが、

「うん。そうだね。 パーベル」と

あまりにも気安く返事をしたので

リサは拍子抜けして、

「あ、はい、そうですね」と

言いました。

 

確かに、二人の仲は、あまりにも

あっさりしていました。

それこそ、

家族だと思って書いた手紙だろうし

ただ感謝の言葉を

伝えるだけだろうから

あえて口出しをすることで

エルナの心を

乱したくありませんでした。 

 

それから、リサは

ここまで急いで駆け付けて来た

本当の目的を思い出すと、

満面の笑みでエルナの手を握りながら

新婚旅行に持って行く物が届いた。

どれだけ、きれいか分からない。

早く見に行くようにと催促すると

エルナは、思わず机の前から

立ち上がりました。

 

新婚旅行の準備も

フィツ夫人が担当しているため

エルナは、

新しい物を注文したという事実さえ

知りませんでした。

すでに、十分多くの物が

積まれているのに、

何がもっと必要なのか、

ただ不思議なだけでした。

 

エルナを寝室に連れて行ったリサは

演劇的な動作で、

カーペットの上にたくさん積まれた

プレゼントの山を指差しました。

新しい帽子と靴とドレス。

それらを入れるトランクまで。

当惑するほど美しい品々が

エルナを待っていました。

 

リサは、

どの国に行っても、

大公妃が一番美しいだろう。

自分が必ずそうするので

期待してもいい。

最近フィツ夫人に、

本当に熱心に学んでいると

楽しそうにお喋りしながら、

ぼんやり立っているエルナの体に

あれこれ掛けてみました。

 

リサは、

大公妃付きのメイドになったおかげで

新婚旅行に参加することになりました。

それを初めて知らされた日には

とても嬉しくて

夜も眠れませんでした。

 

新米のメイドに、

そのような重責を任せることは

不安だったようでしたが、

幸いフィツ夫人は反対しませんでした。

その代わりに、

最善を尽くして学んで、身に着けて、

大公妃に迷惑をかけてはならないと

頼みました。

リサは喜んで、

その意志を受け入れました。

どれだけ一生懸命努力しているのか

毎晩、妃殿下を着飾らせる夢を

見るほどでした。

 

リサは、

とても似合っている。

フィツ夫人は、本当に目が高いと

褒めました。

フィツ夫人が厳選して選んだ品物は

どれもエルナによく似合っていました。

ハルディ子爵夫人が選んだ

下品なくらい華やかな物とは

違う気品が込められている点を

リサは特に気に入りました。

 

ぼんやりと立っている

エルナの顔色を見たリサは

嬉しくないのかと尋ねました。

レースとフリルが少なすぎて

好みに合わなかったのだろうかと

心配しました。

しかし、エルナは首を振りながら

そうではないと否定しました。

 

エルナは少し怯えた目で、

目の前にある

煌びやかな贈り物の山を見ました。

このすべてを

ビョルンがくれたと思うと

自然に気が重くなりました。

 

バーデン家の邸宅と

ハルディ家の借金。

彼に与えたのは借金の山だけなのに

自分は過分な物を受け取るだけでした。

 

エルナの長い沈黙を誤解したリサは、

よりによって最初の旅行先が

ラルスだなんて、

どうしても落ち着かないだろうと

言って、ため息をつきました。

そして、

どうしても、元妻の国に

新婚旅行に行かなければならないのか。

王子は、大公妃の気持ちも、

少し考えてくれればいいのにと

ぼやきました。

 

エルナは、

リサがかぶせてくれた帽子を

脱ぎながら、

自分は大丈夫だと返事をして

微笑みました。

 

グレディス王女の国に

新婚旅行へ行くと思うと、

どうしても

気が楽ではありませんでしたが

この旅は、新婚夫婦のための

ただの甘い旅だけではないので

そうするだけの事情があると

思いました。

 

リサは、

心配しないように。

グレディス姫と比べられないように

自分が大公妃を、

この世で一番きれいに飾ってあげると

言うと、戦意を固めながら

エルナの手をギュッと握りました。

 

よりによって、その時、

フィツ夫人が入って来たため、

リサの心臓が、

危うく落ちるところでした。

 

軽はずみなメイドを

チラッと見た彼女は、

すぐに表情を整えると、エルナに

客が到着したことを伝えました。

 

エルナは、遅ればせながら

今朝フィツ夫人から知らされた

一日のスケジュールを思い出しました。

王室の教師が訪問すると聞いたけれど

何を学ぶことになるかは、

まだ教えてもらっていませんでした。

 

身なりを整えたエルナは、

優しい笑みを浮かべた顔で

今行くと返事をしました。

予定より長引いた会議が終わると

戦闘に近い論争で

へとへとになった銀行の理事たちは

冷めたお茶だけを黙って飲みました。

ビョルンも、やや疲れた顔で

葉巻を吸いました。

 

毎日毎日、

王宮と議会の両方に呼ばれるという

多忙なスケジュールの疲れが、

今では、かなり溜まっていました。

王太子時代を思わせる強行軍でした。

父親の個人預金を

自分の銀行に預けるいう

破格的な条件を父親が出さなければ

決して承諾しなかったであろう

厄介なことでした。

 

国王陛下は本当に老練だ。

自分が決して

遠慮できない餌を投げた父親に対する

畏敬の念が、

軽い失笑になって漏れました。

金額も相当なものだけれど、

国王の預金を運用するという象徴性が

何よりも大きく、

新たに生まれた銀行が

激しく争っている今の状況では、

なおさら、そうでした。

よくよく考えてみると、

餌以上のものを、

むしり取っていくような

気がするけれど。

 

半分吸った葉巻を消したビョルンは

合併の件は、今日、合意した通りに

進めることにしようと言って、

会議を終わらせました。

 

最初の旅行先をラルスに決めたのは

政治的な目的があるのはもちろん、

ラルスの危なげな銀行を一つ、

潰す予定だったので、銀行にとっても、

かなり重要な目的がありました。

 

もしや、会議が

さらに長引くのではないかと

ハラハラしながら待機していた

理事たちは、嬉しそうな顔で

席から立ち上がりました。

 

彼らが急いで書斎を出ると、

ビョルンは、半分横になったように

椅子に座って目を閉じました。

ここまで来ると、

むしろ早く出発したくなりました。

少なくとも船に乗っている間は、

のんびり過ごすことができるだろうと

思ったからでした。

 

そういえば、大公妃は

出発の準備を終えたのだろうか。

ふと妻の顔が浮かんだ瞬間、

書斎のドア越しに、

理事たちが声音を変えて、

妃殿下と呼びながら

騒がしく挨拶する声が

聞こえて来ました。

 

エルナに出くわしたらしい。

ビョルンは凝った首を揉みながら、

そちらへ顔を向けました。

間もなくエルナが書斎に入って来ると

切羽詰まったように、

小走りで近づいて来ました。

 

エルナは、

いつもより激昂した口調で

少し自分と話をしてくれないかと

尋ねました。

ビョルンは頷きながら

腰を据えて座りました。

 

しばらく悩んでいたエルナは

ビョルンと向かい合う席に

慎ましやかに座りました。

ビョルンは、

髪を編んで巻き上げた

精巧なエルナの髪型を見ながら

彼女に、用件を言うようにと

ゆっくり告げました。

地獄の番人のようなメイドの腕前は

日に日に、目に見えて、

向上していました。

 

エルナは、深呼吸を繰り返した末、

自分に、あのようなことを教えろと

命令したのは王子様だと聞いたと

この上なく

拍子抜けする質問をしました。

ビョルンは平然と頷き、

「ああ、あれ」と返事をすると

水の入ったグラスを握りました。

 

そっと頷いたエルナは、

真っ赤になった頬を何度も擦ってから

再び彼を見ました。

どうも、よく学んで来たとは

思えない様子でした。

 

エルナは、

自分があまりにも下手で、

何も知らないから来なかったのかと

尋ねました。

ビョルンは、

「来なかった?」と聞き返すと、

エルナは、

あの日以降、一度も

自分の寝室に来なかったと

ドレスの裾を捻りながら

震える声で答えました。

子供のように振舞う妻が与えた

疲労が加わると、ビョルンの顔から、

意識的な笑いさえ消えました。

 

ビョルンは、

それが分かっているなら、

ここではなく自分の場所で

自分の役割を

全うすべきではないのかと

ため息をつくように

やや低い声で言い放ちました。

 

初夜以降、

一度も妻の寝室を訪れていない

最大の理由は、

忙し過ぎたためでした。

数日間、首都に滞在していたため

家に帰ることもできませんでした。

もちろん、

エルナが言ったような理由がないとは

言えませんでした。

妻の体がくれた楽しみは

大きかったけれど、

再び無知な女性を相手にする苦労を

甘受したくありませんでした。

準備ができて、

妻の役割をきちんと果たせる時に

また訪れれば良いことでした。

どうせエルナも、

自分を待っていないはずでした。

目が腫れ上がるほど泣いていた顔と

血痕。

ブルブル震えていた小さな体。

あの日の記憶を思い出すと、

確かにそうでした。

 

しばらく、エルナは、

白くて硬直している手を

見下ろしていましたが、

自分が、そういう面で、

とても至らないということは

分かっている。

当然学ぶべきことを知らないまま

嫁いで来たことも、今は分かっている。

その点は、

本当に申し訳なく思っていると

口を開きました。

そして、思い出すだけで

目の前がくらっとする少し前の記憶に

息を殺しました。

 

王室の女性たちに

寝室での営みを教えてきたという

ペッグ夫人は、

上品で優しい人でした。

エルナは、

なぜ、そのようなことを学ぶべきか

順々に教えてくれた彼女の言葉を

十分に理解しました。

しかし、

いざ恥ずかしい説明が始まると、

意識が遠のいてしまいました。

結局、エルナは耐え切れず、

授業を中断し、

すぐにビョルンを訪ねたのでした。

 

エルナは、

それも自分の役割の一部なら、

責任を回避するつもりはないと言うと

しばらく言葉を止めて息を整えました。

そして、エルナは、

それでも、他の人は嫌だ。

必ずそうしなければならないのなら

ビョルンに教わると言いました。

 

ビョルンは、

飲んでもいない酒に酔った気分で

「何だって?」と問い返しました。

あまりにも呆れて、頭の中が

朦朧とするほどでしたが、

エルナは深刻な顔で、

「あなたが教えてください。

私の夫じゃないですか」と

主張しました。

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いつもたくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

49話へのmidy様のコメントについて

私もDUNE様がおっしゃっている通り

グレディスはラルスから

自分のメイドを

連れて来たのではないかと思います。

カレンも、グレディスのメイドを

知っていましたし。

 

グレディスをお風呂に入れなくても

夏になれば、

襟元が開いているドレスを

着るでしょうから、

グレディスの首筋や鎖骨の辺りに

赤い痕が付いていれば、

「あらまあ」と

思ったりするでしょうけれど

見えなければ、

何とも思わなかったのではないかと

思います。

けれども、エルナは

頻繁に体に赤い痕をつけているので

カレンは、

ベッド以外では何の役にも立たないと

(マンガ45話)と

皮肉を言っているのではないかと

思いました。

 

ところで、

マンガの42話を読んでいたところ

エルナに招待状を送って来た

家門の中に、

ルウェリン家とエトマン家が

ありました。

作者様の遊び心を感じました。

 

キヨキヨ様、メロンパン様

DUNE様

私も、風と共に去りぬが大好きです。

これを津雲むつみ先生が

マンガ化されたのをご存じですか?

私は、最初にマンガで読んで、

その後、小説を読んで映画を観ました。

マンガは、

セブンティーンという雑誌に

連載されていて、

単行本が発売される前に

A5サイズの総集編が前後編で

発売されたのですが、

まだ、それを持っています。

小説は、

アレクサンドラ・リプリーが書かれた

続編も読みましたが、私としては

スカーレットに違和感を覚えました。

 

映画は省略された部分があるので

少し物足りないと思いましたが

とにかく、

ビビアン・リーがきれいだし

オープニングと

スカーレットが土を握り締めて

絶対に飢えたりしないと

誓うシーンが好きです。

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