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問題な王子様 53話 ネタバレ 原作 あらすじ マンガ 39、40話 時間が必要

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53話 ビョルンは、夕食は一緒に取ると言いましたが・・・

 

悩んだ末、エルナは

優しく微笑みながら、

大丈夫。夕食は自分一人で食べると

落ち着いて使用人に伝えました。

 

ビョルンを起こすことも、

いつまでも、

エルナを待たせることもできず

困っていた使用人たちは

初めて安心して

その命令を受け入れました。

早めに準備を終えて待機していたため

すぐに、夕食の食卓は整えられました。


エルナは、

本当にきれいだとお礼を言うと

まだ、自分の顔色を窺っている

メイドたちに、

もう一度、微笑んで見せました。

嘘をでっち上げたわけではなく

サンルームに設けられた夕食の食卓は

本当に素晴らしかったからでした。

 

淡い色合いの花々を組み合わせた

センターピースと、

雪のように白いレースのクロス。

繊細で華やかな模様が施された

銀の燭台まで、

船上で享受できるとは思わなかった

贅沢でした。

新婚旅行の初日を、一人ぼっちのように

過ごすことになるとは

思っていませんでしたが。

 

エルナはゆっくりと

食事をとり始めました。

食欲はなかったけれど、

余計な心配を、

かけたくありませんでした。

 

エルナは、一日中リサと一緒に

お茶を飲んだり、デッキを散歩したり

華麗な宴会場やカジノを

見て回りました。

夫にそっぽを向かれて

意気消沈した気分を

きれいに消してくれるほど

楽しい時間でした。

再び、客室に戻る頃には、

これくらいなら

悪くない新婚旅行の始まりだと

思いました。

 

ビョルンが眠っていることに

気づいたのは、夕食のために

新たに身支度を整えた後でした。

 

しっかり噛んだ食べ物を

苦労して飲み込んだエルナは、

意気消沈した目で

周囲を見回しました。

暖炉の温もりと、

明るい光に満ちた空間が、

突然、窓の外に果てしなく広がる

大海原のように感じられました。

大きなヤシの木の葉が落とす影は

陰鬱としていて、寂寞とした空間に

食器とカトラリーの音が

あまりにも大きく響きました。

 

結婚してから、

一人で食卓に座る日が多く、

この半月の間は、

ビョルンが忙し過ぎるせいだと

思っていましたが、

いざ新婚旅行が始まっても

変わったことはありませんでした。

 

本当に幸せになれるかな?

息を深く吸い込んで、

動揺を抑えたエルナは、

小さく切った豆を、

震える唇の間に押し込みました。

 

食器がカタカタいう音の中に

「お久しぶりですね、ビョルン」

と、グレディス王女が呼んでいた

彼の名前が、突然浮かび上がりました。

続いて、初夜に、

「名前を呼んでください」と

彼が命令したことも思い出しました。

 

そうだ。二人は夫婦だったと

すでに、よく知っていた事実が

改めてエルナの心を傷つけました。

 

自分にとってビョルンは、

すべての最初の

もう一つの名前だけれど、

ビョルンにとって自分は

永遠の二番目に過ぎないと思うと

寂しくて憂鬱な気分が

寒気のように染み渡りました。

それと同時に

夫の無関心な態度に対する

何となく悲しい理解心が

生じたりもしました。

そして、このすべてが、

過去の退屈な繰り返しに過ぎないので

こんなときめきと期待なんて、

彼にはないだろうと思いました。

 

エルナは、熱くなった目頭を

手で力いっぱい押さえました。

どうも慣れない環境のせいで

心が弱くなったようでした。

大公邸でも不慣れなのは同じでしたが

少なくとも、この広い海のように

果てしない孤独を与えることは

ありませんでした。

 

はたして、

二番目はいつまで続くのか。

エルナは自分に対して、

そんな悪い賭けをしている人も

いるということを

よく知っていました。

宮殿には数多くの口があり、

いくら聞かないようにしても

多くの、むやみに吐き出される言葉が

耳に入って来ました。

 

その度に、そのような言葉に

振り回されないようにしよう。

いい妻になろう。 最善を尽くそうと

固く決心してみるものの、

実は、永遠の二番目は、

どうすれば幸せになれるのか、

よく分かりませんでした。

 

泣かないでと、

エルナは沈んだ声で繰り返し

呟きました。

知らなかったわけでもないのだから

馬鹿なことをしてはダメ。

 

水を一杯飲み干したエルナは、

再びカトラリーを握ると、

少し前より熱心に食事をし始めました。

 

お腹が空くと心が弱くなるもの。

弱くなった心には

悪い考えが入りやすく、

悪い考えは不幸を招く。

だから、今できる最善は

よく食べること。

 

エルナは

自分の意志の大きさに切った肉に

フォークを深く突き刺し、

それを口の中に半分くらい押し込んだ時

突然、思いもよらない顔が現れました。

「こんばんは、エルナ」と

笑い混じりの挨拶が聞こえてきた所に

顔を向けたエルナは、

肉の欠片を口にくわえたまま

ぼんやりと目だけを瞬かせました。

彼女の卑劣な王子様、

すべての最初の別の名前、

ビョルンでした。

 

すでにソースは拭き終わって

久しいけれど、

エルナは再びナプキンを手に取り

唇を拭いました。

かなり可愛かったけれど、

たおやかな淑女にとっては

かなりの恥辱だったようでした。

 

恥ずかしかったのなら忘れると

ビョルンが笑顔で口にした言葉に

エルナは、

つんと澄ました顔をしました。

 

その反応が面白くて、ビョルンは

それにしては、ちょっと、

強烈な記憶ではあるけれどと、

それとなく一言付け加えました。

エルナは真っ赤になった唇を

もう一度拭うと、

わざとらしい真っ直ぐな姿勢で

彼と向き合いました。

 

エルナは、王子様が

食事の時間さえ守ってくれれば

こんなことはなかったと

不平を漏らしました。

ビョルンは、

エルナが怒っているようだと

指摘しました。

 

彼女が「少し」と答えると、

ビョルンは、

それならば、もっと早く

起こしてくれれば良かったのにと

平然と答えながら、

首を少し傾げました。

まだ乾ききっていない髪の毛が

額の上でそっと揺れました。

 

物思いに耽っていたエルナは、

そうしてもいいのかと、真剣な顔で

突拍子もない質問をしました。

おかげでビョルンは、もう一度、

愉快に笑うことができました。

 

ビョルンが目が覚ました時、

九時が過ぎていました。

今まで起こさなかったのを見ると

夕食の約束を忘れたのだろうと

大したことないと思ったビョルンは

ゆっくりとシャワーを浴びた後、

応接室に行きました。

だから、飢えた猛獣のように

肉をかじっている妻が与えた驚きは

さらに大きくなりました。

 

ビョルンは、

王子の眠りを覚ました程度では、

おそらく、

反逆罪にはならないだろうと答えると

信じられないといった顔をしている

妻に向かって微笑みました。

そして、急いで用意された料理を

ゆっくり食べ始めました。

じっと彼を見つめていたエルナも

再び、そっとカトラリーを握りました。

ほとんど、みじん切りに近い大きさに

切った食べ物を、

用心深く、もぐもぐさせる姿が

可愛いと思いました。

 

しばらく、食器とカトラリーが

ぶつかる音だけが

規則的に鳴り響いていましたが

やがてエルナは、

まだ解けていない怒りを表したいような

尖った口調で話し始めました。

しかし、ある瞬間から、

爽やかにさえずる鳥のように

楽しげに、ぺちゃくちゃと

一日の日課を並べ立てました。

 

しきりに感嘆しながら

クルーズ船の説明をするエルナを

見守っていたビョルンは

口元に笑みを浮かべながら

船に乗ったのは初めかと尋ねました。

 

目を丸くして

考え込んでいたエルナは、

小さく首を横に振りながら、

「いいえ、2回目です」と答えました。

ビョルンは「本当に?」と聞き返すと

エルナは、

ボートレースが開催された日の夜。

お祭りで、一緒に乗ったではないかと

答えると、真剣な目つきで

彼を見つめました。

 

冗談を言っているのではないと

分かったビョルンは、

笑いを噴き出しました。

あれを真剣に乗船の経験だと思うなんて

全く思いもよらない言葉で

人を笑わせる才能のある女でした。

 

頬がひりひりするほど笑ったビョルンが

侍従を呼ぶと、

まもなくテーブルの上に、

ワインが一本置かれました。

 

グラスを満たす濃い赤色の酒を

見つめていたビョルンは、

ふと最初の新婚旅行のことを

思い出しました。

グレディスは概して泣いたり

ぼーっとしていて、

自分は仕事だけに没頭していました。

一緒に食卓に向かい合った時も、

大きな違いはなく、短い結婚期間に、

このような楽しい会話と笑いが

交わされた瞬間は

一度も存在しませんでした。

 

ビョルンのグラスを満たした侍従は

エルナのそばに近づき、彼女のグラスに

酒瓶を傾けようとしましたが、

ビョルンは、その瞬間、

妃のグラスには注ぐなと

衝動的に命令しました。

 

思いがけない言葉に

エルナは目を見開きました。

二人の顔色を窺っていた侍従は、

大公妃のグラスを空にしたまま

去りました。

 

エルナは、

自分も一杯くらいなら飲めると言うと

ビョルンは、

分かっていると返事をしました。

 

エルナは、

それなのに、どうしてと尋ねると

ビョルンは、

妃は勉強をしなければならないと

淡々とした口調で答えました。

エルナは、しばらく考えてから

その言葉の意味を

理解することができました。

 

何てこと・・・と

驚いて呟くエルナを見て、

ビョルンは、

ゆっくりとグラスを空にしました。

たとえ、あの女が、

また、あの夜のように

苛立たしく振舞ったとしても

これ以上、あの顔の上に

グレディスを重ねることはないような

気がしました。

半月の間、

妻の寝室を訪ねるのが嫌だった理由が

そこにあったという事実も、

今やビョルンは

認めることができました。

 

ビョルンは、

自分で再びグラスを満たすと、

どうして、そんな顔をしているのか。

あなたが教えてくださいと、

ペチャクチャ喋ったくせにと

尋ねました。

 

それはそうだけれど・・・と

答えたエルナは、ふいに焦り

目の前の皿を見ました。

残っているのは、

エンドウ豆が二粒とジャガイモ一切れで

こうなると分かっていたら、

もっと、ゆっくり食べればよかったと

痛切に後悔をしている間、

ビョルンはグラスに

三杯目を満たしました。

彼は、

その頼みを受け入れてくれたけれど

寝室を訪ねて来なかったので

ある瞬間から、エルナも

それを忘れてしまっていました。

食べ終わったかと尋ねたビョルンは

ワイングラスを握ったまま、

椅子の背に、もたれかかれました。

答えることができず、

もじもじしながら、

エンドウ豆を転がすエルナの頬は

すでに桃色に火照っていました。

その色が想起させた夜の記憶を

思い起こしたビョルンの視線は、

夜のように深くなっていました。

 

ビョルンは、

それでは、そのくらいにしてと

言うと、エルナは

お風呂に入らなければと、

それが、一生一代の

目標でもあるかのように

悲壮に叫びました。

終わってから風呂に入れ。

どうせ、

そうしなければならないからと

何気なく、その主張を黙殺した

ビョルンはグラスを空にしました。

そして、立ち上がろうとしたビョルンに

エルナは、今、お風呂に入ると

差し迫った様子で哀願しました。

 

よくもまあ挑発しておきながら

逃げ出すことばかり考えている妻を

見ていたビョルンの眉間に

しわが寄りました。

 

エルナは、

時間が必要だと主張しました。

ビョルンは、その理由を尋ねました。

エルナは、

食事をしたばかりなのに、

今すぐ、そうしているうちに

吐いてしまったらどうするのかと

答えました。

エルナの深刻な懸念に、ビョルンは、

少しぼーっとなりました。

 

あの女には、あれが、

吐きそうなことだったのか。

かなりプライドが傷つく言葉でしたが

一見、理解できそうなので

ビョルンは、

つい笑ってしまいました。

 

彼は「確かに」と返事をすると

もう一杯、ワインを注ぎ、

それは少し困ると返事をして頷くと

エルナは、

急いで席から立ち上がりました。

 

吐かないために

時間稼ぎに行く淑女の後ろ姿を

眺めていたビョルンは

笑い声を爆発させました。

多彩に楽しめる

子鹿のディナーが用意された夜。

これくらいなら、

悪くない新婚旅行の始まりでした。

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いつも、たくさんのコメントを

ありがとうございます。

温かい声援を送りながら

エルナとビョルンのお見送りを

済ませた皆様が

優雅にお茶会をされている姿を

想像しながら、

パソコンを打っています(^^)

 

初夜以降、

新婚旅行に出発するまで

エルナの寝室に行かなかった

本当の理由は、

エルナの上にグレディスを

重ねたくなかったからなのですね。

そんな大事なことを、マンガで

省略されたのが残念でした。

 

ビョルンは、初夜に

グレディスが泣いて彼を拒否したのは

初めてだから仕方がないと思った。

けれども、

彼女が他の男の子を妊娠したまま

何食わぬ顔で嫁いで来たことを

知った時、

彼女がビョルンを拒否したことと

新婚旅行の間も、

泣いたり、ボーッとしていたのは

他の男のことを考えていたせいだと

知ったことで、ビョルンは

酷い人間不信に陥ったのだと思います。

 

エルナとの初夜の時も、

彼女がグレディスのように泣いたので、

古傷がえぐられたけれど、

パーベルと寝ていなかったことが

分かったし、

グレディスとの新婚旅行の

再現みたいな新婚旅行でも

エルナの言動が

グレディスとは全く違うので

ビョルンも、少しトラウマから

抜け出せたのではないかと

思いました。

グレディスのことは

何とも思っていなかったけれど、

エルナのことは愛している。

そのエルナが、

グレディスと同じだったらという

恐怖心も抱いていたのではないかと

思いました。

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