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862話 プレラが賢いと言われたことが心配なラティルは・・・
◇命令の撤回◇
翌日、ラティルは、
2番目の乳母を新たに探すのは
止めるようにと、
侍従長に下した命令を撤回しました。
侍従長は、
そのままにしておくつもりなのかと
尋ねましたが、ラティルは
わざと書類を見るふりをして
視線を落とし、
曇りそうになる表情を隠しながら、
今後、何回か、こういうことが
起こるかもしれない。
その度に、乳母たちを
入れ換えることはできない。
仲が悪くても、子供たちの前でだけ
それを見せなければいいからと
ラティルは、
自らも納得できない言葉を
吐き出しました。
侍従長は不思議に思うことなく
「そうします」と返事をしました。
侍従長が他の仕事をするために
そばを離れると、
ラティルはペンを置いて
両手で顔を覆いました。
そんなことがないことを望むけれど
念のため、
プレラを敏感に警戒しながら、
クレリスの世話をする人が必要だ。
アリシャは乳母と仲が悪いから、
そのような役割を
果たしてくれるだろうと思いました。
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◇一緒に育てる木◇
カルレインの誕生日。
ラティルは彼を連れて
首都近くの森へ遊びに行きました。
カルレインは、ラティルが
ロードであることを知っているのに、
彼女が大きな岩と岩の間を
飛び越える度に
不安そうな目で見ました。
ラティルは、カルレインが
自分のことを心配する姿を見ると
彼が自分のことを
気にしてくれていると思い
気分が良くなりましたが、
彼の心配が
無駄に思えたりもしました。
ラティルはカルレインを
さっと持ち上げながら、
彼に心配する必要がないことを
教えました。
カルレインは、
そんなことをしないで。
下ろして欲しいと懇願しましたが
ラティルはカルレインを抱いて
ワルツを踊りました。
そうでなくても青白い
カルレインの顔色が、
ますます青くなりました。
ラティルは彼の哀願する声が
かなりカッコいいと思いましたが、
自分が変態になりそうな気がして
彼を急いで放り投げました。
カルレインは地面から立ち上がると
ラティルを呆然と見つめながら
何をしているのかと尋ねました。
ラティルは、謝罪の意味で
彼をおぶってあげると言うと、
カルレインは、すぐに身を翻して
拒否しました。
その後、ラティルは、
木の間から太陽が降り注ぐ小道を
彼と歩きながら、
枯れ木を指差して、
名前の当てっこをしました。
カルレインはとても賢かったので
ラティルが指し示す木の名前を
すべて教えてくれました。
ラティルは感嘆し続けましたが、
それでも、自分は
皇帝であることを思い出し、
そっと戦略を立てました。
カルレインに木の名前を聞いた後、
彼が「カエデの木です」と答えたら
それは自分も知っている。
カルレインが知っているかどうか
聞いてみたと話しました。
カルレインは、
ラティルが本当に英明だと褒めると
彼女は、
自分も500年ほど生きれば、
カルレインと同じくらい
木がよく分かるようになるだろうと
言いました。
カルレインは、ラティルが
本当に進取的だと褒めました。
ラティルは「そうだね」と
返事をしました。
彼女は聡明な皇帝だったので
すべての木について
知っているふりをしませんでした。
ラティルは5本の木のうち
2本しか知らないふりをしました。
5:2の割合で
知っているふりをするなんて、
実に適切で賢明な行動ではないかと
思いました。
ラティルは、
自分がかなり賢そうに
振る舞っていると確信しました。
挿し木して
育てようと思って持って来た
「イチョウ」の枝を見た侍女長が
マロニエを植木鉢で
育てることができるだろうかと
尋ねるまでは確かにそうでした。
ラティルはマロニエの枝を投げ捨て
すぐにカルレインの部屋に
駆けつけました。
部屋に着く前に、ラティルは窓越しに
カルレインを見ることができました。
彼はラティルと一緒に育てるために
持ってきた「イチョウ」の枝を
水に差し、窓のそばに立って
眺めていました。
彼は透明な水差しに入った枝を
見ながら何かを呟くと、
枝にキスをして微笑みました。
口の形を見ると
「私たちが一緒に育てる」という言葉を
呟いているようだった。
カルレインは幸せそうでした。
その光景を見たラティルは
彼を訪ねて抗議する気持ちが
すっかり消えました。
その代わりにラティルは
近くのベンチに座り、
カルレインが微笑みながら
花瓶を見る姿を、しばらく眺めました。
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◇冷酷なカルレイン◇
夕刻。 側室たちも、
カルレインの誕生日を祝うために
皆で集まることになりました。
ラティルも参加する予定でしたが、
対怪物小部隊の隊員5名が
同時に失踪したために
参加できなくなりました。
ラティルに会えると思い
期待してやって来た側室たちは
最初、がっかりしましたが、
それでも食事をしているうちに
次第に雰囲気が良くなりました。
最近の、とげとげしい雰囲気と比べると
真冬の寒波が花冷え程度になるほど
温もりが漂い始めました。
しかし、カルレインが
クレリスを抱いていた時、
問題が発生してしまいました。
この子は可愛い。
本当に利口そうに見えると、
カルレインは
クレリスの眠っている顔を見て
感心しました。
サーナットが、突然、
側室に入ってきたのは嫌でしたが、
彼に対しては、
それなりの情がありました。
ずっと幼い後輩という感じで、
ずっと前から、直接彼に、
あれこれ、たくさん
教えてきたからでした。
サーナットに
似ている子だからといって
見たくないはずがありませんでした。
眠っている子を見て、
なぜ、賢いかどうかが分かるのか。
息をする回数でも
数えているのかと、クラインは
その姿を皮肉っぽく見つめながら
シャンパンをすすりました。
ザイシンは、
カルレインの凛々しい体型を見ながら
吸血鬼も筋肉を
膨らませることができるだろうかと
悩みました。
それでも、それなりに平和なその時
あちこちで転びながらも、
椅子と側室たちの間を
ちょこちょこ歩き回っていたプレラが
カルレインの前に近づいて来ました。
プレラは、
カルレインをじっと見上げると
ニコニコしながら
抱いて欲しいかのように
短い腕を伸ばしました。
プレラはカルレインに
「抱っこ!」と訴えましたが、
彼はチラッとプレラを見たものの
まだ、クレリスを抱いていました。
「私も!」と、
プレラは再び叫びましたが、
カルレインは
クレリスだけを見ていました。
これを見たプレラは、
悲しくなって涙を流しながら、
カルレインのコートの裾を引っ張り、
「私も!」と叫びました。
しかし、カルレインは
プレラを抱いてやるどころか、
むしろ嫌悪感を抱いているかのように
子供を退けろと
ラナムンに言いました。
側室たちは、同時に静かになり、
カルレインとラナムン、プレラを
交互に見ました。
プレラが、誰の生まれ変わりなのか
皆、知っているので、カルレインが、
あのような態度を取る理由を
理解はしているけれど、プレラが
小さな子供であることを考えると
「ひどいな」と
思わざるを得ませんでした。
ラナムンは不愉快になり
「プレラ、こっちへおいで」と
言いながら、子供に近づきました。
プレラは、
ラナムンをギュッとつかみながら
「お父様。私、カルレイン」と
駄々をこねました。
ラナムンは、
カルレインの性格を知っていたので
プレラを抱いて「行こう」と言うと、
自分の席に戻りました。
しかし、彼の心の中は
煮えくり返っていました。
夕食が終わり、側室たちが帰る頃。
ラナムンは、眠っていたプレラを
ザイシンに任せた後、自分は帰らずに
カルレインの部屋に残りました。
ラナムンが、
プレラを連れて行かせてまで
部屋に残ったので、
カルレインは眉を顰めながら、
どうしたのかと尋ねました。
デーモンは、側室間の軋轢に
関心がなかったため、
二人の雰囲気を見たものの、
知らないふりをして出て行きました。
二人きりになると、
ラナムンは我慢ができなくなって、
500歳にもなって、
まだ2歳にもなっていない子供に
あのような態度を取るのかと
カルレインに抗議しました。
彼は無愛想な表情で、
その2歳の子供が2歳になる前、
500歳の時に何をしたのか、
ラナムンも自分も知っているはずだと
反論しました。
ラナムンは、
そのように計算すれば、
この世の中のすべての赤ちゃんは
皆老人よりも年上だ。
生まれ変わって前世の記憶がない以上、
あの子は、その人ではない。
自分の娘で
皇帝の娘だと言い返しました。
ラナムンの「自分の娘」発言には
無関心だったカルレインも
「皇帝の娘」という言葉には
眉を顰めました。
しかし、彼は依然として冷酷でした。
カルレインは、皇帝も、
自分がプレラ皇女を嫌っていることを
知っているので、
理解しろと言いました。
ラナムンは、
あえて好きになれとは言わないけれど
子供の前で、それを
露わにする必要はないはずだと
抗議しました。
カルレインは、
子供が傷つくのではないかと
心配しているのかと尋ねると、
ラナムンの前へ大股で近づき、
彼の目の前に顔を突きつけると、
ラナムンが、自分のそばに
子供を来させないようにすればいいと
警告し、険悪な目で
ラナムンの瞳を、じっと見つめました。
それから、腰を伸ばして
ラナムンに背を向けると、
もう帰れ。
ラナムンが、あの子について
何と言おうが、自分にとって、
あの子は、その女の生まれ変わりに
過ぎないと言うと、ラナムンは
自分の2番目の子を、
カルレインが育てると言ったという
長い間、互いに口にしていなかった
2人の約束について言及しました。
カルレインは椅子を
テーブルの下に入れながら
ラナムンを見ました。
先程とは異なり、
険悪な目ではなかったけれど、
「あいつは
何を言おうとしているんだ?」と
訝し気な様子でした。
カルレインは、
どうして、今、その話が
出て来るのかと尋ねました。
ラナムンは、
その子供とプレラは
完璧に血が繋がった関係だ。
その子供とプレラの仲を
台無しにしたくないなら、
少なくともプレラの前で
表情管理をしろ。
カルレインの、その態度が
プレラと彼女の弟妹の仲を
最悪に台無しにするだろうと
話しました。
ラナムンは、本気で
こんな話をしているのでは
ありませんでした。
彼は自分と皇帝の間に
2人目の子供が生まれる可能性は
ほとんどないと考えていました。
しかし、何を言っても、
プレラに対するカルレインの態度を
和らげる必要がありました。
まもなく、プレラも
誰が自分を好きで嫌いなのか
区別できるようになるけれど
カルレインの冷遇は、
大人たちも手に負えないほどの
レベルでした。
しかし、カルレインは
納得するどころか、
片方の口の端だけを斜めに上げ、
プレラの弟妹だなんて、
その子はプレラの弟妹ではなく、
自分と皇帝の子供になると
主張しました。
ラナムンは、
そんなことを言ったところで、
その子が自分の血筋である事実は
変わらないと反論しました。
しかし、カルレインは、
その子は皇帝の血筋だと
言い返しました。
ラナムンは、自分が
心変わりをしたくなるようなことを
言うと非難しました。
しかし、カルレインは、
すでにラナムンは約束したので、
心変わりはできないと主張しました。
カルレインとラナムンが
互いに相手を見る目には、
一点の温もりもありませんでした。
2人は黙ったまま睨み合い、
デーモンが扉を叩くと
背を向けました。
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◇誕生日プレゼント◇
ラナムンが、
自分とラティルの間に
もう1人子供が生まれないと考える
理由は多かったけれど、
その中で最も大きな理由は、
夜、皇帝が側室たちを訪れることが
珍しいという点でした。
ところが、どういうことか、
カルレインとラナムンが
大喧嘩をした後から、
皇帝はラナムンを
よく訪れるようになりました。
ずっとクレリスほど
プレラを可愛がらなかった皇帝でしたが
ラナムンを
よく訪れるようになってからは
本を持って来て
プレラに読んであげたり、
子供によく話しかけるなど
関心が高そうに見えました。
ラティルは、
プレラは、今よく喋っているのか。
プレラは、普段何をしているのかと
自分がいない時の
プレラの行動や言葉に
関心を寄せていました。
皇帝がラナムンと
一番上の皇女をよく訪れるので、
プレラが冷遇されているという噂は
数ヶ月で急速に消えました。
皇帝はプレラ皇女を、
後継者として考えているようだ。
確かに、一番上の子供だからと、
カルドンは、ラティルが
クレリスよりプレラと
多くの時間を過ごすようになると
期待に胸を膨らませながら
言いました。
まだタッシールがいるから
分からないと、ラナムンは
カルドンが
ウキウキした声を出す時は
落ち着いて一線を引きましたが
彼から見ても、皇帝は
プレラの賢さに
関心が大きいように見えました。
皇帝が、自分の子供の賢い頭に
関心を持つ理由は、
当然、後継者問題ではないだろうか。
このような、
すべてのことが合わさったおかげで
ラナムンは、子供が生まれて以来、
最も平穏な時間を過ごしました。
ラナムンと皇帝の誕生日。皇帝が
パーティーを早く終えて、
2人で時間を過ごそうと言った時は
数年ぶりに、最も大きな笑みを
浮かべたりもしました。
ラナムンが
こんなに笑ってくれるなんて嬉しいと
ラティルは、
ラナムンがまともに笑う姿を見ると、
何度も感嘆しながら
彼の顔を触りました。
ラナムンは
ラティルに彼女の顔を触らせたまま
彼女の下唇に
羽のように軽いキスをしました。
ラナムンは、皇帝が
自分とだけ時間を過ごしてくれて
嬉しいと言いました。
ラナムンはラティルの唇から顔を離し
彼女の目を見ました。
パーティー会場では
まだまだパーティーが続いていて、
ここまで、音楽の音が
微かに聞こえて聞ました。
宮殿の照明の光も、
遠く離れたハーレムまで
届いていました。
ラナムンは、照明と音楽から
半歩離れた暗いベンチに
ラティルと座っていると、
世の中に自分と彼女の2人だけが
いるように感じました。
ラティルもラナムンと一緒にいるのが
好きだと言うと、
ラナムンの顔を手で包み込み
鼻を擦り合わせながら笑いました。
それから、ラティルは
ラナムンに伝えたい
嬉しい知らせが1つある。
一番最初にラナムンに、
教えたかったと告げました。
ラナムンは、
誕生日プレゼントかと尋ねました。
ラティルは、自分たち2人の
誕生日プレゼントだと答えると
彼の顔を離し、 その代わりに
ラナムンの手を取って、
自分のお腹の上に持って行き
自分たちの子供ができたと
告げました。
頭上で爆竹が鳴り響き、
四方に色とりどりの花火が
飛び散りました。
ラティルは。
楽しそうな顔で笑っていましたが
ラナムンが
微妙な表情をしていることに
気づきました。
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ラティルが怒っている理由が
分からなかったのですが、
カルレインが「イチョウ」だと
言った枝が、マロニエだったので、
嘘をつかれたと思って
怒ったのでしょうか?
けれども、
葉が落ちた枝を見ただけでは
木に詳しい人でなければ
何の木か、分かりづらいし、
カルレインはラティルの前で
良い恰好をしたくて、
全部の木の名前が分かるふりを
したのかもしれません。
ラティルと一緒に木を育てることを
こんなに嬉しがるなんて、
本当にカルレインはラティルのことを
愛しているのだと思います。
誰がアリシャにメモを渡したか
まだ、明らかになっていませんが
それがラティルをプレラの所へ行かせ
結果的に
ラナムンに近づけることになるなんて
皮肉なものです。
でも、今度の子供は
カルレインに渡さなければ
ならないのですよね。
彼のプレラへの酷い態度を見ると
同じ両親を持つ兄弟でありながら
憎み合うことにならなければ
いいのにと思います。
それにしても、
クレリスが生まれてからの
時間の流れが早いです。
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