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784話 白魔術師は、ゲスターと一緒にいた女は誰なのかと尋ねました。
◇手を握る◇
レアンは、
生まれて初めて見る緑色の髪を
ぼんやりと見ながら、
あなたが誰なのか知りたいと
尋ねました。
白魔術師は「白魔術師」と
短く答えました。
レアンはその時になって、彼が、
大賢者を通じて連絡を取り合っていた
人物だということに気づきました。
レアンは納得しながらも
意外だと思いました。
レアンは、白魔術師が
宮殿と関係のある人とは会わないと
言っていたように思ったけれど、
なぜ、突然、予告もなしに
やって来たのかと尋ねました。
レアンの質問に、白魔術師は
自分があまりにも性急に
現れたことを認めました。
しかし、白魔術師は、
これは、完全に
自分のせいだけではないと思いました。
彼の予定の中にも
「縛られて宮殿に運ばれる」
というようなことは
なかったからでした。
白魔術師は、
気になることが急にできたと
答えましたが、
変な女とゲスターの2人に
負けたという話は
言いたくなかったので、
ゲスターという黒魔術師ではなく
彼と一緒にいる女は誰かと
話題を変えました。
レアンは、
思ったより無礼な白魔術師の質問に
少し眉を顰めながら、
女と言われただけでは
分からないと答えました。
白魔術師は、
黒髪で、背が高い方で、
髪を一つにまとめていて、
目つきが鋭かったと答えました
白魔術師の説明を聞いた瞬間、
すぐにレアンは、
それがラティルであることに
気づきました。
しかし、彼は知らんぷりをして
「さあ」と、とぼけました。
白魔術師はレアンに、
知らないのかと尋ねました。
レアンは、自分も分からないと
答えました。
白魔術師は訝し気な視線を
送りましたが、レアンは
動揺を隠した表情で
白魔術師に向き合うだけで、
彼が話す女が、
自分の妹であり皇帝だという話は
しませんでした。
政治に関わりたくないという
白魔術師は、このことに
皇帝が深く関わっていることを
知ったら、手を引くに
違いありませんでした。
自分が皇子だという理由だけで、
最初、白魔術師は、
徹底的に自分を無視していました。
大賢者でなければ、
レアンはゲスタに関する話を
白魔術師に、伝えることも
できなかったと思いました。
白魔術師は、依然として
レアンの言葉を疑いましたが、
後でゆっくり調べれば良いと
思ったので、これ以上、
レアンを問い詰めることなく、
彼が自分に求めているのは、
そのゲスターという黒魔術師を
処理することでよかったかと
尋ねました。
レアンは、できそうかと尋ねました。
彼は危険度1等級を与えられた
この白魔術師が、
他のことには全く関心がなく、
ひたすら黒魔術師を
始末することだけに関心があると
聞いてました。
そして、彼自身の能力も
黒魔術師を相手にするのに
最適だと言われていました。
ラティルが連れている黒魔術師は
普通のレベルではないようなので
レアンは、
この危険な白魔術師の興味を
確実に引きつけることができると
思いました。
もし、この白魔術師が
ラティルの黒魔術師の
足かせになってくれなければ、
彼は最後の一戦のために
組んでおいた計画を
全て覆さなければなりませんでした。
幸い、白魔術師は、
「もちろんです」と
こんなのは、
簡単なことだと言うように答えました。
そして、自分は、元々好奇心から、
束の間、この仕事を受け入れたけれど
ゲスターという黒魔術師が
「彼」のスタイルで戦うのを見ると
興味が湧いて来たと話しました。
レアンは「彼?」と聞き返すと、
白魔術師は、
自分の魔法をすり抜けた
変な女もいたと答えると、
自分の専門は、クモの巣を張った後に
餌を捕まえる方式なので。
そのゲスターのように
戦闘的な黒魔術師を相手にすると
効果が弱くなると説明しました。
白魔術師がゲスターではなく、
むしろラティルの方に
興味を示しているようなので、
焦ったレアンは、
クモの巣の位置を教えてくれれば
どんな手を使ってでも、
自分がそこへゲスターを送ると
提案しました。
白魔術師は
「いいよ」と答えると、
それ以上何も言わずに
笑いながら立ち上がりました。
レアンは安堵し、
共通の目標ができて嬉しいと言って
手を差し出しました。
白魔術師はレアンの手を見ましたが、
無視して
イタチに変わってしまいました。
レアンは何もつかめない
自分の手を見下ろしながら、
にっこりと笑い、
再び手を下ろしました。
気分が悪い人だけれど、
ゲスターを相手にする時だけ
手を握るので、
関係ありませんでした。
とにかく、
これで最も面倒だった
ラティルの2人の側室のうちの
1人を縛る方法を見つけました。
仕事は完璧に進んでいました。
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◇ムカつくイタチ◇
ランスター伯爵は、
自分に向かって絶えず吠える犬が、
ひょっとして、
その白魔術師ではないかと
疑っているようでした。
彼は犬の尻をポンと叩くと、
犬は憤慨して、
ランスター伯爵を噛もうとしました。
彼は、手をかわしながら、
ただの犬だと、
照れくさそうに呟きました。
ラティルは、
その光景をしばらく見守った後、
一人でレアンが留まる住居に
素早く歩いて行きました。
レアンは、すでにゲスターが
黒魔術師であることも
知っているようで、
彼を攻撃するために、
どこかから珍しい白魔術師まで
連れて来ました。
今までは、罠のために
無理やりレアンを我慢していたし、
これからも、もう少し
我慢しなければならないけれど
今日は、このことを口実にして、
少しでもレアンに一度、
怒りをぶつけなければ
気が済みませんでした。
ところが、
大股で歩いて庭に入って行くと、
なんと白いイタチ一匹が
優雅に歩いていました。
これは何なのかと、
当惑したラティルは、
すぐにイタチをつかみ、
顔の高さにまで持ち上げました。
逃げようとしたイタチは
高く持ち上げられると、もがき、
ラティルと目が合うと、
突然、目が二倍大きくなりました。
その反応を見た瞬間、ふとラティルは
レッサーパンダたちのことと、
ランスター伯爵が
犬を疑っていたことを
思い浮かべました。
「もしかして」と
疑わしく思ったラティルは
イタチを片手で抱えたまま、
かっと見開いた目で
じっと見つめました。
イタチが自分の「顔」を見るや否や
驚いた表情をするのが
とても怪しいと思いました。
もしかしたら、このイタチも
レッサーパンダのような
珍しい存在かもしれないと
考えたラティルは、
「変われ、変われ」と言いましたが、
イタチは、ぼーっとラティルに
捕まえられたまま、
目をぱちぱちさせるだけで、
いくら待っても
人に変わりませんでした。
珍しい存在ではないのか。
ラティルは、そのおとなしい姿に
首を横に振りました。
レッサーパンダなら、
これだけでも、すでに怒り出して
元の姿に戻ったり、凶暴な歯を
むき出しにしていたはずでした。
しかしイタチは、
ただ、じっとしているだけでした。
しかし、やはり目が合った時の反応が
怪しいと思ったラティルは
イタチを脇に抱えて
レアンの住居の中に入ると、
彼を呼びました。
住居の修理が
すべて終わっていないので、
レアンがどの部屋にいるかは
玄関の扉を開ければ分かりました。
ラティルは無傷の部屋の扉を
バタンと開けると、
大声でレアンを呼びました。
彼はソファーに座って
お茶を飲んでいましたが、
ラティルが脇腹に
白魔術師を抱えて入って来ると、
また、コーヒーを半分、
吹き出しました。
これは一体どういう状況なのか。
レアンは、
しばらくぼんやりとした表情で
妹と白魔術師を見つめていましたが
遅ればせながら、
ハンカチを取り出して口元を拭うと
なぜ、イタチを抱えているのかと
知らんぷりして尋ねました。
ラティルは、
怪しいから連れて来たと答えました。
レアンは「え?」と聞き返すと
イタチの目を見つめました。
白魔術師は、
正体を明かす気がないのか、
知らんぷりをしていました。
とりあえず、ラティルが
何かに気づいてきたわけでは
ないように見えると、
レアンは安心し、
まさかイタチのために、
自分の所へ来たわけではないだろうと
尋ねると、ラティルは、
なぜゲスターに
暗殺者を送ったのか、
それを聞きに来たと
無愛想に聞き返しました。
遅ればせながら
落ち着きを取り戻したレアンは、
自分は暗殺者なんて送っていないと
優しく笑いながら
知らないふりをしました。
しかし、ラティルはすでに
白魔術師から、
レアンが背後にいるという話を
あからさまに聞いた後だったので、
レアンは
どこかで摘んだばかりの
雑草のようなものを
送って来たのに否定するのか。
枯れた雑草のようなものが
レアンに遣わされたと、
はっきり言ったと
容赦なく抗議しました。
レアンとイタチは
同時に目を見開きました。
イタチを脇の間に挟んでいるラティルは
レアンの表情しか
見ることができませんでしたが、
レアンは
イタチと顔を合わせていたので、
白魔術師の怒った表情を
そのまま見ることができました。
レアンは唇を噛み締めました。
その雰囲気に気づかなかったラティルは
これからは、
そんなことをしないように。
今回は、レアンがしたことだという
証拠がないので、
このまま見過ごすけれど、
今度、こんなことをしたら、
ただではおかない。
ゲスターが、
どれほど心が弱いか
知らないのかと抗議しました。
レアンは、黒魔術師の中に
心の弱い人がいるのかと反論すると、
ゲスターは、
古代語を勉強しているうちに
黒魔術を覚えただけなので、
心が弱いと、
ラティルは言い返しました。
しかし、イタチが
自分を睨んでいるように見えたので
イタチを片手で掴んで
持ち上げました。
そして、このイタチも
変ではないかと言って、
イタチをあちこち見回すと、
レアンはバレると思い、
急いでラティルに近づきました。
それから、腕を差し出し、
実は自分が飼っているイタチなので
返して欲しいと頼みました。
もしかしたら、
信じてもらえないのではないかと
心配しましたが、
幸いにもラティルは
素直にイタチをレアンに渡すと、
どうりで、
今まで見たことのあるイタチの中で
一番ムカついた。
このイタチは
のらりくらりしていたと文句を言うと
レアンはイタチが怒って、
髭を立てているのに気づきました。
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◇ムカつく女◇
なんてムカつく女なんだと
白魔術師は息を切らしながら走って
宮殿の外に出ると
すぐに元の姿に戻りました。
黒魔術師の村に入ることができなくて
息詰まる思いだったところへ
相手にする価値のある
黒魔術師を見つけたのは面白かった。
しかし、
あの黒魔術師かもしれない女は
口が悪く、行動に品もないので
本当に腹が立ちました。
その上、レアン皇子を
完全に信頼するのも
難しいことでした。
あの女性と親しい間柄では
なさそうだけれど、
彼女のことを
よく知っているようでした。
それなのに、なぜレアンは
自分が彼女について聞いた時、
知らないふりをしたのか。
白魔術師は考えれば考えるほど
頭が痛くなりそうなので
無理矢理、気にするのをやめました。
彼は、皇族であれ政治家であれ、
頭の痛い人々と
深く関わりたくありませんでした。
そして数日後。
彼は無事に大賢者を通じて
レアン皇子が定めた「狩りの日」を
受け入れました。
大賢者が去ると、
白魔術師は、頭の中で
罠を作る時間、設置する時間、
待つ時間を計算してみました。
急ぐ必要はなさそうだけれど、
余裕もありませんでした。
その時、考え込んでいる彼のそばを
幼い子供が
両親と一緒に通り過ぎながら
あの人の頭は草みたい。
きれいと褒めてくれました。
悪い言葉ではなかったけれども
白魔術師は、それを聞くや否や
顔をしかめました。
彼の頭に向かって雑草と言った
イライラする女のことを、再び
思い浮かべてしまったせいでした。
白魔術師は、
頭の中のカレンダーに線を引いて
日程を修正すると、
まずアドマルへ行くと呟きました。
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◇すすり泣く男◇
見つけられなかった!
呼んでも返事がない!
彼女は確かにそう言っていたと
アドマルに到着した白魔術師は
目を細めて
境界石の向こうを見ました。
レアン皇子に
言われたわけではなく、
雑草頭とか、
のらりくらりとしているイタチと
言われたのが気持ち悪くて、
ここに来たわけでも
ありませんでした。
ゲスターを捕まえようと
罠を仕掛けても、
その変な力を持った女性が
一緒に来て、
彼を妨害するかもしれないと
考えたからでした。
だから、白魔術師は、
もしゲスターが
一人で罠を仕掛けた所へ来ず、
その女性と来る場合に
備えておかなければならないと
思って、ここまで来たのでした。
白魔術師は大きく息を吸い、
杖を目の前に持って来ると
アドマルに向け、
全ての力を同時に放ちました。
ゲスターとラティルに向かった時とは
比べ物にならない巨大な光が、
まるで横に飛んで行く雨のように
境界石を通り過ぎました。
白魔術師はそれだけに止どまらず、
同じだけの巨大な力を
注ぎ続けました。
10回やったところで、
白魔術師は杖を下ろしました。
それでも彼の顔色には
苦しい様子さえ
浮かんでいませんでした。
その状態で、白魔術師は
腕を組んでじっと待ちました。
約30分後、
白魔術師は腕を下ろして笑いました。
地下の大神殿で
一人の男がすすり泣いているのを
感じました。
白魔術師は、
ゲスターと彼女が探していたのは
彼なのかと思いました。
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どんな手を使ってでも
ゲスターを罠のある所へ
行かせるって、
ゲスターの恐ろしさを知らないから
言える言葉だと思います。
たとえ、
ゲスターが罠にかかったとしても
レアンの仕業でそうなったと知れば、
恐ろしい復讐をしそうな気がします。
アクシアンは
地下の大神殿から出られたのに
クラインは、なぜ出られないのか。
前回のお話で、大神殿の柱が、
文字を見て欲しがっているという
シーンがあったので、
もしかしたら、意味は分からなくても
柱の文字を見ないと
出られないのかも・・・
白魔術師は、とても強そうなのですが
どこか抜けているところが
あるように思えます。
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