Quantcast
Channel: 自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き
Viewing all articles
Browse latest Browse all 458

泣いてみろ、乞うてもいい 26話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ ビルの決心

$
0
0

 

26話 カイルがレイラにプロポーズしました。

 

帝国の首都ラッツは、

カルスバルより南に位置しているので

アルビス領地のバラは、

まだ蕾を結び始めたところでしたが

ラッツは街中が

バラの香りでいっぱいでした。

マティアスは、

皇太子宮の庭園を歩いていた時、

その事実に気づきました。

 

彼が立ち止まると、

一緒に歩いていた他の将校たちも

足を止めました。

どうしたのかと聞かれた

マティアスは、何でもないと答えると

微かに微笑みました。

 

マティアスが再び歩き出すと、

近衛隊の若い貴族の将校たちは、

浮かれた表情と話し方で

この楽しい春の週末を

どのように過ごすかなどについて

雑談を続けました。

 

彼らの一人が、

大尉は婚約者を遠ざけて

孤独な春を過ごすだろうと

冗談を言うと、

軽い笑いが漏れました。

マティアスも、それに応じました。

 

昨年の夏の終わり頃、

ヘルハルト公爵と

ブラント伯爵家の令嬢の

婚約パーティーは成功裏に終わり、

彼らは正式な婚約関係になりました。

しかし、マティアスは、

これといった変化を

感じられませんでした。

 

婚約式を行った翌週、

彼はベルク軍の近衛隊に配属され、

首都にやって来ました。

クロディーヌも、

カルスバルの近くの都市の領地に

戻りました。

首都ラッツとは、かなり離れているので

婚約が公表されたという事実を除けば、

以前と変わったことは

少しもありませんでした。

 

社交シーズンには、クロディーヌも

ラッツにあるブラント家の邸宅に

何日か滞在しましたが、

それは以前からあったことでした。

その時も、彼らは、今のように

一緒に社交会に参加しました。

変わったのは、

婚約者という明確な名前が

できたことだけでした。

 

並んで歩いていた同僚の将校は、

自分は、もう将校の服務を

終えようと思っているけれど、

マティアスは、どうするのかと

尋ねました。

 

皆の耳と目が集中する中、

意外にも、マティアスは、

1年ほど延長しようと思うと

答えたので、皆驚きました

もう結婚して、家門のことに

集中する予定ではなかったのかと

聞かれたマティアスは、

結婚は、たぶん来年ぐらいと

答えました。

 

結婚を先延ばしにしたのかと

聞かれると、マティアスは、

返事をする代わりに

顎の先を軽く叩きました。

 

マティアスは、

首都で、もう一年過ごしたがり、

ブラント家は、娘が新婚生活を

アルビスで始めることを願ったので

ブラント家の方から、

婚約期間をさらに1年延ばすよう

要請してきました。

ヘルハルト家は受け入れました。

クロディーヌは、まだ若いので、

急ぐ必要はなかったし、

何よりも両家は、この結婚が

最初から完璧であることを

願いました。

 

その後、マティアスは、

代々家門の主人が、

首都での仕事をする際に

滞在していた邸宅に戻りました。

すると、

皇女の結婚式に出席するため、

午前に祖母と母が到着したことを

侍従から告げられました。

 

ヘルハルト公爵夫人の座から

締め出され、

プライドが傷ついた皇女は

急いで結婚相手を探し、

ヘルハルトと比べて大差のない

隣の公国の大公と婚約しました。

 

マティアスを発見した祖母は

久しぶりだと言うと、

満面の笑みを浮かべながら

両腕を広げました。

母親は、

自分たちが訪ねて来るから

顔を見ることができると、

いつものように淡泊な態度でした。

マティアスは微笑みながら

2人に歩み寄りました。

バラが咲いた週末の午後。

風がすごく気持ちがいいと言って

自転車を止めたカイルは

ニッコり笑って近づいて来ました。

庭から帰ってきたビルを手伝って

荷物を片付けていたレイラは、

そちらへ顔を向けました。

シャベルを持ったビルの視線も

そちらへ向けられました。 

 

カイルは、軽く挨拶した後、

もう何度も聞いて驚きもしない

「結婚しよう」という言葉を

当然のように続けました。

 

しばらく止まっていたレイラとビルは

平然と自分の仕事を続け始めました。

レイラは明るく挨拶を返しましたが

結婚はしないという返事は、

優し過ぎるほど優しく、

より断固として聞こえました。

ビルは、

自分の胸が痛むような気がして

嘆きました。

 

しかし、

拒絶にも耐性ができたカイルは、

軽く、クスクス笑いながら、

何気なくレイラを手伝い、

今日の断りは受け付けたので、

明日また聞くと言いました。

レイラは、

聞かないでと訴えましたが、

カイルは、

人の気持ちというのは、

今日も明日も違うから聞くよと

返事をしました。

 

若造の、

あの厚かましくて

ひるまない気性は、

まさにこの帝国最高と言えるだろう。

ビルは必至で笑いを堪えながら

カイルとレイラを

チラッと見ました。

 

昨年の夏が終わる頃から始まった

エトマン家のごく潰しのプロポーズは

すでに季節が何度も変わっても

粘り強く続いていました。

 

初めてカイルが

レイラにプロポーズしたことを

知った時、ビルは、

あの小僧が

あまり飲めない酒に酔っているか

狂っていると思いました。

だから、シャベルで、カイルの頭を

一発殴らなかったけれど、

翌日、カイルは、

あまりにも平気な顔で現れ、

同じ言葉をかけました。

それがもう何回目なのか。

カイルは一日も欠かさず現れて

同じことを言って、

毎回断られました。

 

最初は断固たるレイラを

応援していましたが、

最近は、カイルが

可哀想になってきました。

自分一人だけの感情に酔って

喋っているなら、

とっくにシャベルを

持って行っただろうけれど、

エトマン博士が

許可してくれたというので、

ビルは、こっそり

路線を変えてみようかとも

思いました。

 

昨秋、ビルを訪れたエトマン博士は、

レイラを大学に行かせたらどうかと

提案しました。

行かせたいのは山々だけれど、

経済的な事情が許さないと

躊躇いながら答えると、

彼は、息子と同じ笑みを浮かべながら

2人の子供が好き合っていて

夫婦になることを望んでいるなら、

結婚させて、

一緒に大学へ行かせても

いいのではないかと

感激的な提案をしました。

 

ビルは、その言葉を

なかなか信じられず、

ぼんやりと博士の顔だけを

見ました。

彼にとって、レイラは

この世で最高の子供だけれど

世の中の基準や、エトマン家が

このカルスバルで

どのような位置にいるのか

知らない訳ではありませんでした。

 

その気持ちを察したのか、先に博士は

レイラが

自分の良い面を作ってくれたから

そんなレイラのそばで

良い人として生きていきたいという

カイルの言葉を話しました。

 

小屋に入り浸って

ご飯を食べるちびっ子が、父親に、

そのような話を切り出したという事実に

ビルは少なからず驚きました。

 

エトマン博士は、

子供たちの分別のない気持ちだと

片付けるには、

かなり真摯な気持ちだったと

話しました。

 

ビルは、

しかしレイラは・・・と言って

言葉を詰まらせると、

エトマン博士は、

さらに慈しみ深く微笑みながら、

良い家門と条件を持った花嫁候補が

自分だって欲しくないわけでは

ないけれど、レイラは

そのようなことがなくても

十分に良い子だということを

よく知っていると言いました。

彼の笑顔は、

息子とそっくりでした。

 

エトマン博士は、

もし来年、進路を決める時まで

カイルの気持ちが変わらないなら、

自分は2人の子供を許したいけれど

レマーさんは、どうだろうかと

尋ねました。

 

その日、ビルは、

人の形をした天使に違いない

エトマン先生を背負って

カルスバル、いや、ベルク帝国を

走れるくらい嬉しくて感謝しました。

 

ビルは、あの愚かなレイラを

どうすればいいのか。

どうしても、

対策を講じなければならないと

決心をして、

シャベルを倉庫の中に置きました。

祖母が早く寝たので、

広い夕食の食卓は、

母と息子だけになりました。

 

皇女の結婚について

退屈な雑談をしていた

ヘルハルト夫人は、

エトマン博士の一人息子であるカイルが

結婚するらしいけれど、

その相手が、レイラという名前の

庭師が育てた孤児だと

鋭い声で言いました。

 

マティアスは、

レイラという名前を

唇だけで静かに繰り返すと、

その名前を飲み込み、

エトマン家が許すような条件の

花嫁候補ではないはずだと

指摘しました。

 

母親は、

呆れたことだ。

良い結婚相手を見つけてあげようと

努力したおばあさまの真心が

滑稽になったと、

一段と神経質な声で嘆きました。

 

マティアスは、それ以上

何の返事もしませんでしたが、

母親は、最近、アルビス全体を

熱く盛り上げているという

カイル・エトマンの結婚話を

楽しそうに並べ立てました。

 

なんとか爵位を持った姻戚を

得ようと努力したエトマン夫人は

依然としてレイラのことを

不満に思っているけれど、

夫と息子の意思を曲げられなかった。

異変がなければ、

レイラは医師の息子と結婚して

大学に行くそうだ。

夏が終われば、

このラッツに新居を構え

一緒に勉強するらしい。

エトマン博士の息子を

とても可愛がっていたから

おばあ様も、

ひどく心を痛めていると話しました。

 

「はい、そうでしたね」と

返事をしたマティアスは

ナプキンを握りました。

骨の節が、白く膨れ上がりました。

 

母親は、

エトマン夫人が

本当に可愛そうなことになった。

身分より格段に上品な

奥さんだったけれど、

滑稽な嫁を迎えて、

やっとの思いで手に入れた

社交界の地位を失ってしまった。

卑しい孤児を、

後継者の妻として迎え入れた奥様と

どの貴婦人が

親交を深めようとするだろうかと

嘆きました。

 

マティアスは姿勢を正し、

まだ結婚していないので

状況が変わるかもしれないと

言いました。

母親は、

状況が変われば、エトマン夫人が

胸を痛めることはないだろう。

けれども、エトマン博士の意志が

あまりにも確固としているし、

何よりもカイルが、

その孤児にとても夢中になっていると

言うと、舌打ちすることで、

すぐに絶縁することになる

医師の夫人に対する憐憫を

示しました。

 

際立って、きれいな子ではある。

そんな子と息子を仲良くさせたのが

災いの元だった。

こんな風に、

エトマン夫人の座を占めるなんて、

あの子も本当に不埒だ。

いや、賢いと言うべきかと言って

肩を軽くすくめました。

 

そして、

あの子のせいにするのもおかしい。

最も愚かなのは、

たった一人の女性に目がくらみ、

家門に泥を塗る

エトマン夫人の息子だからと

望んでいた結論に達した

ヘルハルト夫人は、

その辺で話題を変えました。

 

再び社交界と馴染みの深い

退屈な名前の話が続く間、

マティアスの舌先で、

レイラ・ルウェリンの名前が

グルグル回りました。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain

f:id:myuieri:20210206071517p:plain

何度、レイラに断られても

毎日、プロポーズしに来るなんて

カイルは、偉い!凄い!

レイラも、

ここまで愛されているのだから

邪魔が入る前に

カイルのプロポーズを受け入れて

さっさと結婚しなさいと

言いたいです。

でも、ヘルハルト夫人が

余計なことを言ってしまったので

マティアスの邪魔が

入るのでしょうね。悲しいです。

***********************************

いつも、たくさんのコメントを

ありがとうございます。

暦の上では春ですが、

まだまだ寒い日が続きますね。

どうぞ、皆様、暖かくして

お過ごしください。

次回は月曜日に更新します。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 458

Trending Articles