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988話 外伝97話 アトラクシー公爵は、自分だって百花の奴を信じているわけではないと言いました。
◇犯人は百花◇
あれはどういう意味なのか。
ラティルは、聞こえて来る声に
さらに集中しました。
今度は誰だか知らない声が、
なぜ彼と取引したのか。
大神官に仕える聖騎士団長でありながら
彼は何年もそんなことをするほど
暗闘に長けている。
あんな者は信頼できないと
言いました。
ラティルは、
何年も、そんなことって、
まさか・・・避妊薬?と言って、
額にしわを寄せました。
狐の仮面は、その姿を見下ろしながら
口角を上げました。
アトラクシー公爵は、
誰かに会話を
盗み聞きされているとは知らず、
ため息を交えながら、
状況が状況だから仕方がない。
皇帝は絶対に
百花を捨てられないのに、
百花が犯人だと言ったところで
皇帝は彼を処罰するだろうか。
自分たちだけが、悔しい思いをして、
我慢して終わるだろう。
それなら、
この事を有用に使うべきだと
言いました。
側近は、
確かに、ロルド宰相は、
今回のこととは関係がないけれど
彼は、いつも自分たちの家門と
ラナムン様を攻撃した。
6人目の子供が生まれたら、
その程度は、
もっとひどくなるだろう。
一度、押さえておかなければならないと
言いました。
ラティルは狐の仮面を見上げました。
すでに彼の顔からは笑顔が消え、
真剣な表情をしていました。
ラティルは再び壁を見ました。
壁の上で、2つの影が揺れながら
通り過ぎて行きました。
アトラクシー公爵は、
百花の奴も、自分が真犯人だから、
黙っているだろう。
当分は同じ手を使うこともできず、
自重するだろうと言いました。
そして、アトラクシー公爵と側近は
別の方向に進み、後には、
影も見えなくなりました。
彼らの足音が遠ざかると、
狐の仮面は、再びラティルを
寝室に連れて行きました。
ラティルがバランスを取ると
狐の仮面はラティルを放しながら
感想を尋ねました。
ラティルは、クラクラしている頭を
しばらく彼の肩にもたせかけながら
あれを聞かせるために、
自分を連れて行ったのかと尋ねました。
狐の仮面は「そうだ」と答えました。
ラティルは、
アトラクシー公爵が、
その話をするタイミングを
狐の仮面がどうやって知り、
自分を連れて行ってくれたのか
少し疑わしく思いました。
しかし、
どうやってタイミングを
見計らったかは重要ではなく、
狐の仮面が、故意に
アトラクシー公爵の最悪の状況を
捉えたとしても、
彼が濡れ衣を晴らすために
したことなので、
責めることはできませんでした。
ラティルは狐の仮面の肩から
頭を上げると、彼に、
百花の仕業であることを
知っていたのかと尋ねました。
狐の仮面は、
最近知ったと答えました。
ラティルは、
偶然聞いたのかと尋ねました。
狐の仮面は、
悪霊を放ちに行って聞いたという返事を
心の中で飲み込み、
肩をすくめました。
深刻になったラティルは
ソファーに腰を下ろしました。
狐の仮面は、ラティルの周りを
グルグル円を描きながら
歩き回りましたが、
ラティルが頭を上げた時、
彼はすでに消えていました。
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◇一人では死なない◇
別宮の寝室に戻ったゲスターは、
仮面を脱いで
テーブルの上に置きました。
彼の唇が、
無意識のうちに上がりました。
ラトラシルは、
彼が陰謀を企てていることに
気づきました。
必死に言い逃れをしたけれど、
彼女は、すでに陰謀を
確信していました。
今は彼が濡れ衣を着せられている
状況なので、そのことで
怒ることができないだけでした。
しかし、
彼がラティルに言ったように、
他の側室の誰かが
急に病気にでもなれば、
ラトラシルは、
すぐに彼を疑うだろうと
思いました。
それで、ゲスターは
彼女を連れて行きました。
彼は、決して、
一人で死ぬつもりはなく、
自分だけが
陰険な側室ではないということを
ラトラシルに、
教えなければなりませんでした。
彼女が好きなラナムンも陰険で、
大神官は善良でも、
彼の側近たちは陰険であることを
知らせなければなりませんでした。
そうすれば、事件が起きても、
ラトラシルは、
むやみに自分を疑って
責めることはできないだろうと
思いました。
ラトラシルが、
考えを読めるのかを調べるのは、
もう少し和解してから。
そう思った瞬間、ランスター伯爵が
見せずにいた記憶の一片が
彼の頭の中に広がるように
流れて来ました。
ゲスターは動作を止めて、
その記憶をじっとのぞきました。
しばらくしてゲスターは、
狐の仮面を手に取って
弄り回しながら微笑みました。
陛下、
どうなさるおつもりですか?
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◇処遇の決定◇
ラティルは、一晩中、先帝時代の
細々とした記録を調べました。
実際に役に立つ記録を
探そうとしたわけではなく、
ただ、あれほどすごい皇帝だった
父親の時も、頭の痛い事件が
後を絶たなかったことを
確認したかっただけでした。
どれだけそうしていたのか。
誰かがラティルの肩に手をかけ、
3時間後には日が昇るから
休むようにと勧めました。
カルレインでした。
ラティルは、彼の顔を見ると
本を閉じました。
そうでなくても、
これが役に立つ行動なのかという考えが
時々、浮び上がっていたからでした。
ラティルは、
そうする。
見ても気持ちの整理ができないと
言いました。
カルレインは、ご主人様が
狐の仮面に会ったと聞いたけれど
その人のせいかと尋ねました。
カルレインの質問に、ラティルは
話しても大丈夫だろうかと
戸惑いました。
しかし、考えてみると、
カルレインは、とても口が重いし、
当事者である側室にまで、
このことを、
隠す必要もありませんでした。
ラティルは、
避妊薬事件の犯人は百花だったと
率直に打ち明けました。
カルレインの眉が上がりました。
彼が良くない人だということは
知っていたけれど、
そんなことをしたとは意外だと
カルレインは言いました。
ラティルは同意すると、カルレインは
百花の命を奪おうかと提案しました。
彼は、半分不死だから命を奪えないと
ラティルがぶつぶつ言うと、
カルレインは、
狐の仮面が、よく彼を生かしておいた。
命を奪わずにいじめる方法を
たくさん知っているはずなのにと
不思議そうに呟きました。
ラティルは、
犯人であることを知ってから
あまり経っていないようだし
百花だけの問題でもない。
アトラクシー公爵は
百花が犯人であることを知りながら
百花と手を組んで、
ゲスターを犯人に仕立て上げたと
説明しました。
カルレインは、
アトラクシー公爵の命を奪おうかと
提案しました。
ラティルは、なぜカルレインは
しきりに誰かの命を奪うと言うのかと
当惑して見ていると、
カルレインは、
同じ質問を繰り返しました。
ラティルは首を横に振ると、
自分は、誰の命も奪わない。
自分は、ただ怒って
悪口を言っているだけ。
命を奪って来いと
指示しているのではないと
落ち着いて説明しました。
カルレインは微かに微笑みました。
もちろん、彼も、
それを分かっていました。
ただ、ラティルのために
一緒に怒っただけでした。
もちろん、ラティルが
残酷なロードになると言って
全員始末して来いと言えば、
そうすることもできました。
カルレインは、
それでは何が問題なのか。
ゲスターが
犯人ではないことが分かったので
百花を追い出せばいいのではないかと
尋ねると、ラティルは、
百花が犯人であることが
明らかになっても、自分は、
彼をどうすることもできないし、
どうせ、ロルド家とは仲が悪いので
それでゲスターを
犯人に仕立て上げたと
アトラクシー公爵が言っていたと
答えました。
ラティルは、
それを聞いた時、激怒しました。
あの公爵は
気が狂ったのかと思いました。
でも、考えてみると、
彼の言葉の一部は一理ありました。
ラティルは、
腹立たしいけれど、
百花に関しては確かにそうでした。
ラティルは、
百花はタリウム人ではないし、
対怪物部隊小隊を引き受けているし
彼の根源である神殿と
戦うことはできないとぼやきました。
カルレインは、
ご主人様の望み通りにするように。
ご主人様が望めば、
自分が神殿を壊すと言いました。
ラティルは、
自分が一般皇帝なら、
神殿と戦っても大丈夫だけれど、
自分はロードだ。
人々が、自分をあまり恐れないのは
百花と大神官が
自分のそばにいるからだ。
もし、自分が百花を追い出せば
人々は自分を怖がるだろうと
話しました。
カルレインは、
人間が、ご主人様のことを
どう思おうが、自分は気にしないと
言いました。
ラティルは、
その言葉にお礼を言いながらも
自分は気になると反論すると、
頭の中に、
早くもトラブルメーカーの予兆が見える
子供たちのことが思い浮かびました。
しかし、彼らを思い浮かべながらも、
口角は自然と上がりました。
ラティルは少し恥ずかしがりながら
自分は、子供たちが
ロードの子供ではなく
皇帝の子供であって欲しいと
言いました。
カルレインは、
ご主人様は百花と
公然と対立することはできないけれど
自分はできる。
自分が百花と戦っても、人々は、
側室たちの勢力争いだと思うだろうから
自分が彼を殴ろうかと提案しました。
ラティルは我慢できずに
大笑いしてしまいました。
ラティルが何を言っても、
カルレインから返ってくる答えは
似ていました。
ラティルは、彼のわき腹を突き、
なぜ、しきりに
拳を使おうとするのかと尋ねました。
カルレインは、
騎士は武力で陛下を守る。
頭を働かせるのは
皇配に任せろと言いました。
ラティルは、カルレインが
しきりに使おうとする大きな拳を、
両手でギュッと握りました。
カルレインの腕の筋肉は、
すぐにギクッとしました。
ラティルは、
それでも、カルレインと話すと
気が楽になる。
気持ちも少し整理できたと言って
お礼を言うと、この件について
百花とラナムンとゲスターを
どうすればいいか決めたと
告げました。
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◇もう呼び戻す◇
翌日、ラティルは、
公開執務室にいた時、秘書の一人に、
別宮に人を送って
ゲスターを連れて来るように。
詳しい方法は、別に教えると
全員に聞けと言わんばかりに
指示しました。
他の秘書たちは、
同時に行動を止めて皇帝を見ました。
皇帝が、
このように指示をするということは
ゲスターを、公然と、
連れ戻すという合図でした。
秘書たちは、
視線を交わし合いました。
陛下はどうしたのだろうか?
怒って、ゲスター様を
別宮に送ってから、
どのくらい経ったのか?
まだ大臣たちが、
この問題で騒いでいるのに
大丈夫だろうか?
陛下が、避妊薬事件の他の証拠でも
発見されたのだろうか?
しかし、あえて皇帝に、
堂々と質問する人は少数でした。
侍従長なら
質問するかもしれないけれど、
彼は今、席を外していました。
ラティルは波紋を投げかけながら、
自分は、
平然と書類に目を落としました。
しばらくして、この知らせは
ラナムンに伝えられました。
彼は、
本当に、皇帝がそう言ったのか。
他に意図はないのかと
当惑しながら尋ねました。
秘書は首を横に振ると、
意図があるかどうかわからない。
ただ平然と話した後、
仕事を始めたと答えました。
ラナムンは、
分かったと返事をしました。
秘書が帰ると、カルドンは、
しばらく、皇帝は、
ゲスターを呼び戻さないと
思っていたけれど
なぜ急に心変わりしたのだろうかと
心配しました。
ラナムンは、頭が痛くなって来て
こめかみを擦りました。
そして、
いきなりではない。 最初から皇帝は、
ゲスターが犯人だと信じていなかったと
返事をしました。
しかし、カルドンは
それでもおかしいのは同じだ。
犯人ではないと思いながらも
別宮に行かせたのに、今回は、
あまり時間が経たないうちに
連れ戻すことになった。
こんなことをするなら、
なぜ、あえてゲスターを
別宮に行かせたのかと尋ねました。
当然、ラナムンも
その理由を知りませんでした。
彼は、イライラしながら
時計を見ました。
皇帝を訪ねて理由を聞くべきだろうか。
しかし、聞いたからといって
皇帝が答えてくれるだろうか?
この前、会った時、
皇帝との間の雰囲気が
冷ややかだったので、今回、
皇帝に会いに行っても、
ただ冷たく待遇されて
帰って来ることに
なるのではないかと思い、
ラナムンは、
簡単に決定できませんでした。
しばらくして、彼は
拳を握りしめて
ソファーに戻りました。
カルドンが、
彼を慰めようとしましたが、
ラナムンは首を横に振りながら、
皇帝が送った使節を見て、ゲスターが
鼻高々としている姿を考えると
何を言われても、気分が晴れないと
言いました。
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◇横断幕◇
ラナムンとは違い、数日間、
ゲスターは、
とても楽しく過ごしました。
彼は、ラトラシルが
どんなロマンチックな言葉で
自分に戻って来いと
伝えて来るだろうかと想像しながら、
散歩もして、
ショッピングもしました。
彼を見守る別宮の宮廷人たちが
ゲスター様はもう諦めたみたい。
ここに追い出されたのに
静かに過ごしている。
元々、静かでおとなしいことで
有名ではないか。
おとなしい人が、他の側室に
避妊薬を飲ませるか?
罰を受けて、ここへ来たのに、
あんなに楽しそうにしているなんて、
少し、見苦しい。 罪悪感もないのか。
と、ひそひそ話しました。
別宮の宮廷人たちは、
ゲスターが失踪したため、
一度大騒ぎしました。
その後、彼が行方不明になったことを
口止めしろという
脅迫的な指示まで受けたので、
ゲスターが
楽しそうにしているのを見るのが嫌で
陰で、ブツブツ文句を言いました。
ゲスターは、
これを知っていましたが、
知らないふりをして
楽しく過ごしました。
そして、ある日、彼は
気に入ったガラス瓶を手に入れて
飾っていた時、
外から騒がしい音が聞こえて来ました。
何事かと思って窓に近づいてみると、
別宮の入口に、
30人ほどの人々が列をなして、
入ってくる姿が見えました。
ところが不思議なことに、
彼らは別宮の中に入ると、
突然立ち止まり、横一列に並ぶと、
何やら、何かを取り出し始めました。
何をしているのか。
それが、おかしくて見ていると、
人々は、
ついに大きな横断幕を取り出して
持ち上げました。
そして、ゆらゆらしていた横断幕が
ピンと張られて字がはっきりした瞬間
ゲスターの顔が、
ひどく、しわくちゃになりました。
「帰って来て。私のウサギ。」
ゲスターは
「ラトラシル!」と怒鳴りました。
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記憶の一片を見せずにいた
ランスター伯爵が、
アウエル・キクレンなら、
その記憶が頭の中に広がったのは
ゲスター。
前者が本物のランスター伯爵だったら
後者はアウエル・キクレンでは
ないかと思いますが、
もう、訳がわからなくなってきたので
あまり深く考えないことにします。
ゲスターは
他にも陰険な側室がいると
考えていますが、
ゲスターほど、陰険さの度合いが、
ずば抜けて高い側室は
いないのではないかと思います。
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