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泣いてみろ、乞うてもいい 33話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ 居心地の悪い温室

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33話 レイラは大学に合格しました。

 

レイラが、

ラッツ大学に合格したという噂は

たちまちアルビス中に広まりました。

エトマン博士の一人息子も、

やはり優秀な成績で

医学部に合格したという知らせも

共に伝えられましたが、

それは皆の予想通りだったので

それほど、

大きな話題になりませんでした。

ここ数日は、

人が2人以上集まったら、

誰もがレイラの話をしました。

 

公爵家の温室でも、

他人同然の孤児で、しかも女の子を

大学まで行かせるなんて、

ビル・レマーはすごい決心をしたと

老婦人カタリナも、

今日は、かなり興味深そうに

レイラの話をしました。

 

エリーゼも、

あの子は恩人に会った上、

エトマン博士の息子と

結婚まですることになったのだから

生まれつき運があると

言葉を添えました。

 

2人の間に座って

おとなしくお茶を飲んでいた

クロディーヌは、

いつものように礼儀正しく

明るい笑みを浮かべながら

頷きました。

そして、

あの可哀想な子供に、

このような幸運が巡って来て

本当に良かったと、

これまで以上に誠実に

称賛することができました。

 

その時、老婦人の命令を受けて、

レイラを迎えに行ったメイドが

温室に戻って来ました。

きれいに着飾ったレイラも

一緒でした。

 

老婦人は、レイラに

こちらへ来て座るようにと命じると

レイラはもちろん、

ヘルハルト夫人とクロディーヌは

驚いて目を見開きました。

老婦人は、

けなげで感心な子に、

お茶を1杯くらいご馳走しても

悪くないではないかと言って

笑いました。

 

ヘルハルト一家の皆が

そうであるように、カタリナは、

血管を流れている血が、

間違いないく濃い青色を帯びていると

言われるほど、孤高の貴族でした。

その彼女が

庭師が育てた孤児の少女と

同じティーテーブルに座ることに

皆が驚愕するのも

無理はありませんでした。

 

レイラは緊張した顔で、

メイドが案内してくれた席に

座りました。

レイラの分のお茶が置かれると、

老婦人は、

有名な名家の息子たちでさえ、

入学が難しい大学に、

レイラが合格したという話を

聞いたと言いました。

レイラは目を伏せながら、

それはビルおじさんのおかげだと

答えました。

老婦人は、

ビル・レマーの恩を

忘れてはならないと言いました。

 

それから老婦人は、レイラが

ロビタの出身だと聞いたと

話しました。

レイラは、

母親はロビタ人だけれど、

父親はベルク人だと返事をしました。

すると、老婦人は、

その点は自分と同じだと

普通に話したので、

エリーゼとクロディーヌの目が

同時に大きくなりました。

ヘルハルト家の老婦人は、

ベルク皇帝の外戚である

名望高い侯爵家出身。

母親はロビタ王家の血筋なので

あえて卑しい出自の孤児と

肩を並べるような血統では

ありませんでした。

 

そして、ティーカップを置いた

老婦人は、

欲しいものを1つ言ってみろと

突然、命令すると、

レイラは驚いて顔を上げました。

 

老婦人は、

ビル・レマーは自分の大切な使用人で

あなたは、そのビル・レマーが

娘のように育てた子だから、

お祝いの1つくらい、

プレゼントしたいと、

淡々と付け加えました。

 

慌てたレイラが

視線を避けることも忘れて、

老婦人を見つめている間に、

もう1人、温室に入って来ました。

クロディーヌは、

最初に、その人を発見すると

嬉しそうに「ヘルハルト公爵!」と

呼びました。

 

皆の視線が動くと、

レイラも思わず顔を向けました。

いつの間にか、

テーブルのそばに近づいて来た

マティアスが

そこに立っていました。

互いの目が合うと、

2人は、それぞれ違う理由で

眉を顰めました。

レイラが先に目を避けることで

その小さな動揺は収まりました。

 

エリーゼは、

この子がラッツ大学に

合格したというので

祝ってあげなければならないと思い

一緒にお茶を1杯

飲んでいたところだったと

笑い混じりの声で

意外な状況を説明しました。

 

短く頷いたマティアスは

クロディーヌの隣に座りました。

偶然にも、

レイラと向き合う席でした。

 

今日は、帰りが早いと

クロディーヌは、にこやかに笑って

婚約者を迎えました。

 

本格的に、家門の事業を

引き受けることになった彼は、

朝早く邸宅を出て、

夜遅くに帰ってくる日が

ほとんどでした。

アルビスを訪問してから

もう一週間が経とうとしているけれど

クロディーヌが、

日が暮れる前に帰宅した

マティアスに向き合ったのは

今日が初めてでした。

マティアスは、

会議が予想より早く終わったと

答えました。

 

クロディーヌは、

最近、マティアスが

無理をし過ぎているようで、

とても心配していたと言うと、

エリーゼも、

余裕を持って行っても

いいことなので、

あまり急がないように。

健康を害したら大変だと

言いました。

 

それを皮切りに、

話題は、マティアスの近況と

家門の事業の話に移ったので、

レイラは、

しばらく一息つきながら、

冷たいお茶を一口飲みました。

この不愉快な席から

早く抜け出したかったけれど

公爵家の2人の奥様の前で

そのような素振りを

見せられませんでした。

 

レイラは音を立てないように

茶碗をソーサーの上に置きました。

そして思わず視線を上げた瞬間、

思わずギョッとしました。

おしゃべりをしている

婚約者と母親の間で、マティアスが

自分を見つめていました。

その無情な瞳は、

レイラの心を踏みにじって去った日と

少しも変わりませんでした。

 

レイラは、再びティーカップ

握ろうとしましたが、

急いで両手をテーブルの下に

下ろしました。

そして、マティアスは、

クロディーヌと向かい合って

話を交わしたのもつかの間。

彼女の視線が母親に向けられると

マティアスは当然のように

再びレイラを凝視しました。

 

レイラは急いで頭を下げましたが

それでも、

不快な視線を感じました。

そして、それは、間違いなく

去年の夏の記憶を

呼び起こしました。

 

クロディーヌを前にして思い出す

あの日の記憶はさらに屈辱的で、

レイラは小さく身震いしました。

悪いことをしたのは公爵だけれど

罪悪感を持つのは

いつもレイラでした。

 

老婦人はレイラに、

欲しいものを考えてみたかと

尋ねました。

反射的に顔を上げたレイラは

まだ、マティアスの青い瞳が

自分に向かっていたせいで

思わず、唇を噛みました。

 

当惑した様子を隠すために

レイラは、

急いで老婦人の方に目を向けると

自分はすでに、

大きなプレゼントをもらっている。

このアルビス

ビルおじさんの小屋に

住まわせてくれただけで、

一生返せない恩を受けた。

一生感謝し、

一番大きくて貴重なプレゼントだと

答えました。

 

老婦人は、

ビル・レマーの頼みを

許しただけだと言いましたが、

レイラは、その許しが

自分の人生を変えたプレゼントだと

言うと、微かに微笑み、

エリーゼにも、心からのお礼を

礼儀正しく伝えました。

そして、この不愉快な世界から

早く抜け出したしたいと言う代わりに

レイラは、あまり喜ばしくない

ヘルハルト公爵とクロディーヌにも

喜んで感謝を示しました。

 

レイラは、

自分に施してくれた恩恵は

このアルビスを離れる日が来ても

絶対に忘れないと言って

頭を深く下げました。

 

じっくりと

レイラに目を通した老婦人は、

その辺で頷いてくれました。

あえてヘルハルト家の好意を断るのは

不埒でしたが、その態度は

卑しく育った子供らしくなく

上品でした。

 

クロディーヌは、

もう別れの挨拶をするなんて

寂しいと残念そうに言いました。

そして、

レイラの気持ちは分かるけれど、

プレゼントの一つくらいはあげたい。

自分がレイラの学費を

払うのはどうかと提案しました。

 

レイラは、

その気持ちだけ、

ありがたくもらうと答えると

笑顔でクロディーヌを見ました。

そして、自分の始めての学費は

ビルおじさんが

必ず出したいと言って

用意してくれたと説明しました。

 

クロディーヌは、

それなら他のプレゼントを

考えてみなければならない。

大学に合格した上に、

まもなく結婚もする長年の友人を

手ぶらで送り出すことはできないと

言うと、明るい笑みを浮かべました。

そして甘い声で、催促するように

マティアスにも同意を求めました。

 

しばらく、

レイラを見つめたマティアスは

軽く頷きました。

 

もう少し儀礼的な会話と

挨拶をした後、

レイラは不愉快なティーテーブルを

離れることができました。

 

ヘルハルト一家に背を向けて立つと

ようやく

温室の風景が目に入りました。

アルビスの天国だと賛辞を受けている

この華麗な温室に入ると、

レイラは、居心地の悪さを感じ

窮屈になりました。

羽が切られた美しい鳥たちと

色と香りが強烈な草花に向き合うと

なんとなく息が詰まりました。

大理石の噴水台の水の音も、

ガラスを通して差し込む日差しも

同じでした。

 

レイラは一度も振り返らずに

温室を抜け出しました。

自然の日差しと風に体が包まれると、

ようやく安堵のため息が漏れました。

ダニエル・レイナーは呆気にとられ

信じられないといった様子で、

今、自分が何を言ったのか

分かっているのかと、問い返しました。

彼の向かい側に静かに座っている

従姉のリンダ・エトマンは

驚くほど落ち着いた顔で、

声を低くするようにと注意すると

閉じたドアをチラッと見ました。

ダニエルは、

呆れて、ものが言えないほど

ため息をつきました。

 

海外鉱山への投資に失敗し、

急激に家運が傾いたダニエルは、

最も裕福な親戚である従姉に

何度も助けを求めましたが、

その度に、

優雅で冷たく拒絶されました。

ところが、どういうわけか、

エトマン夫人が先に

彼を訪ねて来てくれました。

当然、タダではないだろうと

予想はしていましたが、

エトマン夫人の口から出た言葉は

藁にもすがる心情のダニエルを

迷わせるほど、

当惑したものでした。

 

それは窃盗だと訴えるダニエルに

エトマン夫人は、

しばらく隠しておいて、

返すだけだと主張しました。

それでも、ダニエルが躊躇っていると

エトマン夫人は、

カイルのことが、

とても大事ではないのかと

尋ねました。

ダニエルは、

それはそうだと同意すると、

エトマン夫人は、

自分の助けも必要としているしと

言うと、

ズキズキするこめかみに

手を触れました。

予想通り、ダニエルは

顔を赤らめただけで、

反論できませんでした。

 

エトマン夫人は、

しばらく、そのお金を持って来て

時が来たら、また返すだけ。

その簡単なことさえしてくれれば、

ダニエルは家族を、

自分は息子を守ることができると

言うと、

催促するようにダニエルを見つめ、

これくらいなら、

悪い取引ではないと思うけれど

ダニエルの意見はどうなのかと

尋ねました。

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リンダがダニエルに

盗んで来いと言っているのは、

ビルがレイラのために用意した

学費だと思います。

それがなくなれば、

レイラが大学へ行くことができず

カイルとの結婚も阻止できると

思っているのでしょうけれど

あまりにも、やることが

えげつない。

エトマン博士やカイルが、

このことを知ったら

とてもショックを受けると思います。

リンダが、

どんなに上に行きたくても

やることがお粗末。

名家の子息でも

成し遂げられないことを

孤児がやり遂げたと聞いて

お祝いをしようとしてくれる

老婦人とマティアスの母とは

格が違い過ぎると思います。

レイラを侮辱するために

意地悪なことを言ったり、

させたりするクロディーヌも

犯罪までは犯さないと思います。

*********************************

いつもたくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

今日の画像はAIで作成しましたが

出来上がってから、

噴水を入れ忘れたことに

気づきました(^^;)

皆様のイメージと違っていましたら

ご容赦ください。

 

それでは、次回は明日、

更新いたします。

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