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泣いてみろ、乞うてもいい 34話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ お金を盗む目的

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34話 エトマン夫人が従弟のダニエルに頼んだこととは?

 

森の道を歩いて来るレイラを

発見したカイルは

温かい笑みを浮かべて

レイラの名前を呼びました。

 

じぶんの足元を見ながら歩いていた

レイラが、さっと頭を上げました。

彼を見たレイラの目が

大きくなりました。

彼を見たレイラの歩みが速くなる時。

優しく近づいて来て

にっこり笑う自分のレイラ。

カイルが愛してやまない瞬間でした。

 

レイラが

いつ来たのかと尋ねると、

カイルは、

先程、小屋に行ったら、

レイラが公爵邸に呼ばれたというので

救出に向かう途中だったと答えました。

 

レイラが「救出?」と聞き返すと、

カイルは、

ブラントの令嬢がレイラを呼んだ理由は

見え見えだからと答えました。

 

レイラは笑顔で歩き始めると、

今日は、ブラントの令嬢ではなく

老婦人に呼ばれたと答えました。

カイルが、その言葉に驚くと、

レイラは、

合格を祝福してもらい、

プレゼントに欲しい物があるかと

聞かれたと説明しました。

 

カイルは、

何て答えたのかと尋ねると、

レイラは、

何もいらない。

ここに住まわせてくれたことだけで

感謝していると伝えたと

答えました。

 

カイルは、

多分にレイラらしい返事だと言うと

クスッと笑いました。

そして、カイルがそっと手をつないでも

レイラは、

以前のように緊張しなかったので

カイルは、

より幸せな気分になりました。

 

手をつないで歩きながら、

二人は、一日の日課

今日の新聞に掲載された推理小説など

いつもと変わらない

身近な話をしているうちに、

夕闇が迫って来ました。

森が急速に暗くなると、

カイルは、その闇を頼りに、

勇気を奮い起こすことにし、

力を入れて握ったレイラの手を

引っ張りました。

 

フラフラしたレイラは

道端に立っている高い木に背を向け

カイルは、そんなレイラと

向かい合って立ちました。

あっという間に起こったことだけれど

カイルは、その時間が

まるで永遠のように感じられました。

 

当惑したレイラは、

微かに震えた声で

カイルの名を呼びました。

目をギュッと閉じたカイルは、

持っているすべての勇気を集めて

頭を下げました。

すぐに温かい肌が

彼の唇に触れましたが、

期待していたのとは違う感触でした。

 

そっと目を開けたカイルは、

つい失笑してしまいました。

唇に触れたのは、レイラの手の甲で

真っ赤な顔のレイラが、

自分の手でしっかりと唇を隠したまま

彼を見つめていました。

 

カイルが、ゆっくりと顔を上げると

レイラは、

こういうのは少し変だ。

自分たちが、こういうことをすると

何か悪いことをしているような

気がすると、もぐもぐ言うと、

これ以上、言葉を続けられず、

もじもじしていたレイラは

目を伏せました。

 

こうする方が、

もっと悪いと思わないのかと

聞き返したい言葉を飲み込みながら

カイルは虚ろな笑いを浮かべました。

彼の頬も、レイラのように

赤くなっていました。

 

彼は、

キスも知らないレイラが

何を知っていると言っていたっけ。

汽車の中では、

それを知っているかのように

大声を出していたのにと尋ねました。

 

レイラは、

それは、どういうことかと

尋ねている途中で、

生殖行為云々、話したことで、

彼が走っている汽車から

飛び降りたくなった日の記憶を

思い出しました。

 

レイラは悩みましたが、

適当な言葉を見つけられなかったようで

それは、よく分からないと、

不利な時に囁く、

口癖のような言葉を呟きました。

 

カイルは気が抜けて

ため息をつきました。

もうすぐ結婚する女と、

まともにキスもできない自分の姿が

情けないけれど、

それほど、嫌でもありませんでした。

カイルが一番欲しいのはレイラの心で

激情に流されて、

その心を傷つけることは

できませんでした。

 

カイルは、

レイラの頬を優しく撫でると

額の上に、

熱い唇を下ろしました。

これ以上、

欲張らないようにという誓いを

カイルは、必死で守りました。

ゆっくり息を吸うと、

甘いバラの香りが

肺に深く染み込んで来ました。

レイラの香りでした。

シャワーを済ませたマティアスは

寝室の西側の窓に

ゆっくりと近づきました。

彼は、何時に寝ても、

大体、早朝に目が覚めるので、

すぐに浴室に向かって

シャワーを浴びた後、一日を始めるのが

習慣になっていました。

 

もしかしたら、

今この瞬間もそうかもと、

マティアスは、

少し自嘲のこもった眼差しで

開いた窓から下を見下ろしました。

バラが満開の彼の庭に、

当然のようにレイラがいました。

出発する日が近づいたためか、

レイラは、

庭師の後に付いていることが多く

片時も離れることなく、

ペラペラと熱心に話しかけていました。

 

自分やクロディーヌの前では

口をつぐんで、なかなか開かないので

一時、レイラ・ルウェルリンは

ひどく口数が少ない子供だと

マティアスは思っていました。

 

決まった時間になると、

ヘッセンがやって来ました。

マティアスは、

彼が持ってきた新聞を読みながら

今日のスケジュールについての

報告を受けました。

昼食前までは、

余裕のあるスケジュールでした。

 

ヘッセンは、

いつものように静かに退く前に、

ご主人様が帰って来たことで、

ようやく、アルビス

完全に満たされたようだと

一言、加えました。

 

マティアスは、

祖母と母が聞いたら

残念がるかもしれないと

返事をすると、ヘッセンは、

そういう意味ではないと

弁解しました。

マティアスは、

口元に笑みを浮かべながら、

どういう意味なのか

よく分かっていると言いました。

短い微笑はすぐに消えましたが、

中年の執事を見るマティアスの目は

穏やかでした。

不愉快な気配のない目つきに

安堵したヘッセン

急いで退きました。

 

寝室のドアが閉まった後も、

マティアスは、

窓枠にもたれかかったまま

新聞を読みました。

 

昼食を共にするクライン伯爵の

社業に関する記事を

几帳面に読んだ後、

マティアスは新聞を下ろしました。

ゆっくりと窓から下を見下ろすと

邸宅に近い花壇まで近づいて来た

レイラが見えました。

川に飛び込んで、

すくい上げた麦わら帽子の下で

一つに編んだ髪の毛が揺れました。

庭師が何か言うと、

レイラは興奮して答えました。

帽子の陰で顔が見えなくても

レイラが、大声で笑っていることが

分かりました。

 

マティアスは、

領地に足を踏み入れた瞬間から、

むしろ帰って来なければ

良かったのではないかと思いました。

 

彼の人生は、

完璧な人生につながった階段のように

緻密な計画で成り立っていました。

しかし、ゆっくり登るだけだった

階段が崩れました。

 

マティアスは、

計画に反する選択をした自分を

まだ理解することができませんでした。

いや、服務延長申請書を破った

その夜以前に、

すでに、そうだったのかも

しれませんでした。

 

あえて、

もう1年服務するという決定を下し、

結婚を見送った日。

つまらない欲望に襲われた日。

転んだ自転車に歩み寄った日。

もしかしたら、記憶にない

ある日かもしれない。

 

マティアスは、依然として

自分がレイラを欲していることを

よく知っていたので、

彼女が消えることを願っていることも

よく知っていました。

 

この混乱は、

熱い感情と切実な願いのギャップが

もたらしたものであり、

明確な答えを出すことは

できないけれど、結局、時間が

解決してくれることでした。

 

マティアスは窓を閉めて

着替えました。

そして、後に続く侍従を

下がらさせたマティアスは、

一人で邸宅を離れ、

川につながる森の道を歩きました。

木々の濃い陰の下で、

マティアスは、しばらく茫然として

立ち止まりました。

 

彼は決して望んだことがなかったので

渇望を知りませんでした。

しかし、それよりもっと

未熟で慣れていない

何かがあるという事実が

脳裏をかすめました。

欲しいものが、持てないことでした。

庭師の小屋に近づくにつれて

ダニエル・レイナーの顔色は

ますます青ざめていき、

まだ日差しが強い時間でもないのに

すでに彼の額は、

汗でびっしょり濡れていました。

 

狂気の沙汰だと

ダニエルは絶望的に呟きました。

遠くに、

小屋の屋根が見え始めました。

 

エトマン夫人は、

庭師が用意した大学の学費を

しばらく預かって欲しいと

もっともらしいことを言いましたが

それは、

ただの盗みに過ぎませんでした。

高貴で優雅なリンダ・エトマンが

あの可哀想な子を

息子から引き離したいという一心で

従弟に盗みを強要しました。

 

いつの間にか、

小屋の前の庭に入ったダニエルは

再び、ポケットに入れた

ハンカチを取り出して

顔を拭いました。

カバンを握った手が

しきりに震えました。

 

カイルが格に合わない女に夢中になって

結婚を決心したことは、

彼も、やはり残念に思いました。

エトマン家なら、

下位貴族の家の娘ぐらい、

嫁にもらえるのではないかと

皆が予想していたからでした。

しかし、カイルが心から望んでいたし

エトマン博士が支持したし、

何よりもレイラという子が

それほど悪くはないと思って

納得しました。

だから、エトマン夫人も

そうだと思いました。

あの優しい微笑の下に、

このような懐剣を隠していることを

誰も知りませんでした。

 

しばらく悲嘆に暮れていたダニエルは

決心を固めたように

「お金が元凶だ」と呟くと、

大股で小屋に向かいました。

 

リンダ・エトマンは、

朝は家に誰もいないだろう。

もし、レイラがいたら、

エトマン家に立ち寄ったついでに、

大学合格を祝いに来たと

誤魔化せばいいだろうと

言いました。

彼とレイラは、

すでに顔見知りなので、

それほど不自然な

言い訳ではないはずでした。

むしろ、彼女がいて、

この計画が水泡に帰することを願って

ドアを叩きましたが、

家の中は静かでした。

 

ダニエルは、

絶望と諦めを同時に味わいながら

玄関のドアを開けました。

従姉の言う通り、

鍵はかかっていませんでした。

 

ダニエルは、

学費を盗まれたと言えば、

代わりに学費を用意してくれる人が

現れるのではないか。

エトマン博士にしても、

いくらでも、その子の学費を

代わりに払ってくれるのではないかと

当惑しながらリンダに反論した時、

彼女は苦々しい笑みを浮かべながら

まさか、自分がダニエルより

自分の夫を知らないわけがないと

言い返しました。

 

ダニエルは、

それなのに、なぜと聞き返すと、

リンダは、

消えた学費は、

あの子の心を砕く口実だと

ため息混じりに答えました。

ダニエルは、

それ以上、聞きませんでした。

どうせ、掴むしかない藁なら、

それ以上のことは

知りたくありませんでした。

知ってしまえば、

幻滅と自責の念は

さらに深まるだろうと思いました。

彼はただ、庭師のお金を

従姉にしばらく預かってもらうのを

手伝うだけでした。

 

そのように、

自分を納得させることを

繰り返しながら、

ダニエルは小屋の中に入りました。

 

それほど時間がかからずに

お金を入れたカバンを持って

小屋を出ると、

むしろ気持ちが楽になりました。

彼の役割はここまで。

早くこの忌まわしいお金を

リンダ・エトマンに渡して、

担保に取られた家を

守ることができる手間賃をもらって

帰るだけでした。

 

ダニエルは、庭師に出くわさないよう

川沿いをぐるっと一周する道を

選びました。

ところが、川辺で、

ある若い男と出くわしたことで、

彼は苦境に陥りました。

 

ダニエルを発見した男は

ゆっくりと歩みを止めました。

あまり警戒したり驚く気配もなく、

ただ彼を

じっと見つめるだけでした。

 

アルビスの使用人だろうか。

彼の気楽な反応に

安堵したのも束の間、

ダニエルの顔から

血の気が引きました。

 

一日を始めるのに忙しいこの時間に、

シャツ一枚だけの楽な身なりで

悠々と川辺を歩く侍従がいるはずが

ありませんでした。

そして、その青年の顔に

確かに見覚えがありました。

新聞に何度も登場し、

遠くから何度も見たその顔は

ヘルハルト公爵でした。

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レイラはカイルのことを

ビルおじさんと同じくらい好きで

大事に思っているけれど、

彼は兄のような存在だから

キスすることができないのだと

改めて思いました。

以前は友達以上恋人未満だと

思っていましたが、

レイラにとってカイルは

家族だったのですね。

彼を失わないために、

レイラは結婚しようとしたけれど

このまま結婚しても

結婚生活を続けるのは

無理なのではないかと思います。

レイラの気持ちをリンダが知っていれば

ここまで無茶ぶりをすることは

なかったのにと思います。

カイルはレイラと結婚できなくても

母親の勧める相手ではなく、

彼の失恋を癒してくれるような

素敵な女性と巡り会って欲しいです。

 

***************************************

いつも、たくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

ぺこちゃん様

老婦人の名前がカタリナであることは

随分前から

明らかになっていたのですが、

名前を出さなくても、

問題なさそうだったので

省略してしまいました。

申し訳ありません。

クロディーヌ母の名前は

出て来ていなかったと思いますが

調べてみます。

 

それでは、次回は、

明日、更新いたします。

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