48話 ビョルンはエルナに酒を勧めました。
しばらく躊躇っていましたが
エルナは、
グラスを唇に持って行きました。
どうせ避けられないなら、
酒に酔っていた方が良いし、
意識がはっきりしている状態では
到底、このようなことに耐える
自信がないからでした。
エルナは、一口、一口、
グラスをゆっくり傾けました。
思ったより強いお酒でしたが、
甘い風味のおかげで
飲みづらくありませんでした。
幸せになってくれという
祖母の切実な願いを思い出すと、
指先の震えが止まりました。
プロポーズの理由が
愛ではないということを
エルナは、
誰よりもよく知っていました。
もしかしたら、
窮地に追い込まれた女性への
同情心、あるいは責任感ではないかと
考えたりもしましたが、
それも、あまり妥当とは
思えませんでした。
理由は分からないけれど、
ビョルンはプロポーズし、
エルナは、それを受け入れた。
それが最善の道だったし、
その事実は、
今も、さほど変わっていない。
だからエルナは、
たとえ、それが愛でないにせよ
彼の最善になれるように、
いつまでも一緒に
幸せでいられるように
努力したいと思いました。
頬に熱感が広がり始めると、
エルナは、
そっと視線を上げました。
ビョルンは、まだその場で
エルナを見守っていました。
自分が愛すべき運命と
半分くらい残った酒を
交互に見ていたエルナは、
決意を固めた顔で
息を吸い込みました。
そして、また一口、酒を飲みました。
するとビョルンは、
突然、グラスに手を触れ、
困惑しているエルナから
取り上げたグラスを
自分の唇に持って行きました。
そして、
一気にグラスを空にすると
テーブルの上に置きました。
エルナは
「ありがとうございます」と
お礼を言いました。
少し滑稽な言葉だけれど、
他に何を言えばいいのか、
思い浮かばなかったし、
何より、それは
エルナの本心でもありました。
ビョルンはフッと笑うと
あまり急ぐ様子もなく
ベッドの上に上がりました。
エルナは、
ギョッとして身をすくめましたが
もう怖がって
逃げようとしませんでした。
じっとその姿を見ていた
ビョルンは微笑みながら、
今度は、少し優しく
ゆっくりとキスをしました。
酔いが回って来たせいか
エルナは、
一層おとなしくなりました。
ベッドに横たわり、
握り締めたガウンを奪い、
首筋と肩、そして、胸を
唇で辿っていく間、
エルナは、おとなしく
よく耐えながら、
彼の手を受け入れました。
ビョルンは笑い混じりの声で
妻の名前を呼びました。
死んだように横になって
苦しい息を吐いていたエルナは、
ようやく目を開けました。
ビョルンはエルナに
目を開けているようにと
言いました。
エルナは、
そうすべきなのかと尋ねました。
ビョルンは「うん」と答えました。
彼は、
胸をつかんでいた手を上げ、
妻の頬を包み込みました。
すすり泣かれることで、
神経を掻きむしられなければいいと
思っていましたが、
実際、死体のように振る舞う姿に
向き合うと、
全く面白くありませんでした。
自分を見つめるエルナに
向き合ったまま、ビョルンは
ガウンの紐を緩めました。
しばらく息を止めていたエルナは、
まるで見苦しい物でも
見たかのように真顔になって
顔を背けました。
ビョルンは、
自分を見なければならないと
言うと、手に力を入れて、
再びエルナの視線を、
自分の方へ向けました。
そして、エルナが、
そのようにしていると、
他の男のことを考えている女を
抱いているようで
気分が悪いと言いました。
そんなことはないと、
エルナはカッとして叫びました。
そして、何気なく
視線を向けたところ、
彼の裸の胸に向き合ったため、
途方に暮れましたが、
再び目を閉じませんでした。
ビョルンは、
本当に、堪忍袋の緒が切れるほど
侮辱的なことを言うと思いました。
エルナは目を見開いて
ビョルンの顔に向き合いました。
潔白を主張するかのような
目つきでした。
再び何か言おうとする唇を
飲み込んだ彼は、
しきりにすぼめるエルナの足を
しっかりと開き、
肌を濡らしていきました。
少しずつ、さらに深く、
執拗に動いていくほど、
エルナのもがきが
激しくなりましたが、
ビョルンは、これ以上、
遅らせるつもりはありませんでした。
以前から硬くなっていた下からは、
今や、ずっしり重い痛みに近い
熱気が感じられました。
これで十分だという
判断が出た頃には、
ビョルンの息づかいも、これ以上、
平穏ではありませんでした。
ビョルンは、
エルナの両足の間に座りました。
彼女は、弱い熱感と酔いのせいで
焦点がぼやけた目で
夫を見つめました。
荒い息を吐く瞬間にも穏やかな顔が
なんとなく恥ずかしくなって
視線を下げると、
整った鎖骨と肩が目に入りました。
そして、硬い骨格と繊細な筋肉が
とても素敵に見えました。
エルナは不思議な物を発見した
子供のような好奇心の目で、
ゆっくりと夫の体を
よく見て行きました。
目が腰の下まで下がると、
瞬きしたエルナは、
思わずため息をつきました。
確かに見たのに、
一体、何を見たのか信じられず、
闇の向こうの壁と天井を観ながら
じっくり考えて、また考えました。
まさか。
自分の記憶を否定する結論を
下したエルナは、眉を顰めて
再び夫を見ました。
しかし、変わったことは
何もありませんでした。
エルナは
自分たちはダメだと思うと言うと
泣き顔でビョルンの顔を見ました。
深刻な心配事なのに、
ビョルンは笑い出し、
自分の腕より細い足を
腰に巻きつけながら、
「ありがとう」と、
妻の真似をして優雅な挨拶をしました。
かなり感激的な褒め言葉だと言うと
ビョルンは、
もがき始めたエルナを一気に制圧し
下腹部を密着させました。
自分でも知らなかった
自分の体に触れる不慣れな感覚に、
エルナの目が丸くなりました。
かなり可愛い表情でしたが、
それを楽しむ余裕が
残っていなかったビョルンは
これ以上、遅れることなく
力を入れて押し込みました。
怖がってもがくエルナに、
彼は、荒々しいうめき声が
混じった声で、
「じっとして」と命令しました。
ビョルンの眉間にも
しわが寄りました。
十分に濡れているけれど
狭すぎました。
その上、恐怖に震え、
硬直までしていたため、
なおさら容易ではありませんでした。
無我夢中で首を振っていたエルナは
ダメだと思うと、涙声で言いました。
じっとしていろと言って
深いため息をついたビョルンは、
震える唇を自分の唇で塞ぎました。
余裕があれば思いやれるけれど
彼もすでに気が狂いそうでした。
ビョルンは、少し身を引き、
もっと力を入れて押し込みました。
しかし、まだ半分も
入っていませんでした。
その事実を知るはずがないエルナは、
しきりに体を反らしました。
隙間なく、
自分を含んだ女性の内部が
収縮する度に、
ビョルンの息づかいは
ますます荒くなって行きました。
ビョルンは、
すすり泣くエルナの頬と唇に
優しくキスをしながら、
大丈夫だと言って
次第に結合を深めました。
「もう大丈夫」と
涙が溢れた青い目を見つめながら
甘美に囁きました。
もちろん嘘でした。
しかし、その嘘がかなり効いたのか、
エルナの内部が、次第に
緊張を解いていくのが感じられました。
その瞬間を逃さず、
ビョルンは一気に一番奥まで
潜り込みました。
エルナの悲鳴と
彼の荒いうめき声が
同時に沸き起こりました。
ブルブル震える手で
彼の肩をつかんだエルナは
もうやめて欲しいと
泣きながら懇願しました。
もはや笑みのない顔で
妻を見ていたビョルンは、
力いっぱい腰を
押し上げることで、
返事の代わりをしました。
エルナは苦痛に身悶えして
うめき声を上げましたが、
それほど強くない彼の忍耐は
すでに尽きた後でした。
エルナは、すすり泣きながら
「痛い。お願い」と哀願しましたが
ビョルンは気にせず
速度を上げて動き始めました。
全身で彼を吸い込むような
女でした。
ビョルンは、
もはや理性を失っていました。
次第に柔らかくなる彼女の内部に
水気が広がると、
最初の息苦しかった締め付けは、
今や気が狂いそうな
快感になりました。
初めて寝室のドアを開けた時、
結婚したのだから、
当然、義務を果たすつもりでした。
一日中、自分をチラチラ見て
恥ずかしがっていた花嫁に
気前よくするという気持ちも
なくはありませんでした。
ところが、とんでもない。
狂って暴れているのは
むしろ彼の方でした。
ビョルンは、
彼の動くままに揺れている
エルナを見ました。
目を閉じないように努めながら
うめき声をあげている顔が
きれいでした。
ビョルンは、
汗に濡れたエルナの頭を撫でながら
大丈夫だと、
再び優しい嘘をつきました。
騙されていることを知りながらも
エルナは頷きました。
その答えが気に入ったのか、
ビョルンは笑いました。
悪魔は最も美しい顔で
誘惑してくるものだという
幼い頃に聞いた祖母の話が
ふと思い浮かびました。
エルナの首筋に顔を埋めた彼は、
再び激しく動き始めました。
獣のような息づかいが
耳元で聞こえ、
意識を失いそうになるほど
激しく体が揺れました。
途方に暮れていたエルナは
これ以上、我慢ができなくて
泣き出しました。
気遣ってくれることなく、
彼が出入りする下がひどく痛くて
息がよくできませんでした。
痺れるようで熱い、
言いにくい感覚を伴う痛みでした。
濡れた肌がぶつかる恥ずかしい音が
エルナの意識を
さらに朦朧とさせました。
エルナが泣き始めても
ビョルンは意に介さず、
腰を立てて座りました。
汗と涙でびしょ濡れの
小さな顔は可憐で、
さらに美しいと思いました。
ビョルンは
自分のものになった花嫁を
まっすぐ見下ろして
腰を上げ始めました。
満足そうな笑みを浮かべた唇の間から
呻めき声が流れ出ました。
気が狂いそうなほど滑らかなのは
肌だけではありませんでした。
彼を締め付けて包んで
押しやる女性の内部は、
快感の泥のようでした。
苦しそうに泣く妻を抱きしめて
ビョルンは、一番深いところまで
自分を押し入れました。
熱い噴出に驚いたように
震えた小さな体は
すぐに、ぐったりしました。
呼吸が落ち着き、
体の熱気が冷めていく間も、
ビョルンは妻の中に留まりました。
充血した目で彼を見たエルナは
もう全部終わったんですよねと
慎重に尋ねました。
妻と額を合わせたビョルンは、
いい子を褒めるように、
可愛い鼻先にキスをし、
赤い頬をそっと噛みながら、
だるそうに笑って
「うん」と答えました。
甘い嘘でした。
「太公妃、フィツ夫人です」と、
丁寧なノックと共に、フィツ夫人は
エルナに声をかけました。
彼女は、夢を見ているのかと
思いましたが、
意識に鋭く突き刺さる
その名前に驚いて目を開けました。
見慣れない部屋のベッドに
裸で横になっている
自分の姿に気づくと、
突然、恐怖が押し寄せて来ました。
エルナは「はい」と返事をすると
慌てて起き上がりましたが、
急襲するように訪れた体の痛みが
昨夜の記憶を思い出させ、
エルナは、
さらに大きな混沌の中に
押し込まれました。
エルナは、
起きていることを伝えると
シーツを引き上げて
体を包みましたが、
そこに残っている血痕を発見し
目を丸くしました。
その瞬間、フィツ夫人が
再びノックをし始め、
「では失礼します」と告げました。
エルナは「いいえ!」と叫ぶと
ベッドから降りました。
力の入らない足がふらついて
床に倒れてしまいましたが、
痛みは感じられませんでした。
大丈夫ですか、
何かありましたか?と
尋ねるフィツ夫人に、
エルナは、
何でもない、ただ少し・・・と答えると
よろめきながら立ち上がって
急いで血まみれのシーツを
取り除きました。
時間はすでに
正午に近づいていました。
今まで眠っていたなんて、
フィツ夫人の心配も
頷けると思いました。
エルナが途方に暮れている間、
フィツ夫人は何度もノックし
心配する言葉をかけました。
何かが起こったのだと
思っているようでした。
フィツ夫人は、
決心を固めたように
入りますと、きっぱり通知しました。
青ざめたエルナは
シーツを抱えて
浴室に駆け込みました。
浴室のドアが閉じた瞬間に、
寝室のドアがバタンと開きました。
エルナとビョルンの
濃厚な初めての夜のシーン。
表現方法を間違えると、
とても低俗な小説に
成り下がりそうなのを
作者様が、とても美しく
表現してくださっているので、
赤面しそうになりながらも、
不快になることなく
読むことができました。
自分の妻だから
義務を果たさなければならないと
考えている程度なら、
エルナが寝ているのを見て、
今日は、止めておこうという
選択肢もあったかもしれません。
けれども、
寝ているエルナを起こし、
慣れていない女性を
宥めてあやす趣味もないのに
自分の妻だから、
自分のものになるべきだと
理由をつけ、終には
狂って暴れてしまったのは
ビョルンがエルナのことを
愛しているからなのだと思います。
感情のコントロールができない
ビョルンの犠牲になってしまった
エルナが可哀想だと思いました。
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いつも、たくさんのコメントを
ありがとうございます。
midy様
私の拙い文章をお褒めいただき
恐縮しています。
言葉の選び方って、
本当に難しいと思います。
私も、別のマンガで、
言葉が間違っていたりとか、
物が入れ替わっていたりしているのを
見たことがあります。
あくまで、私の考えですが・・・
マンガの翻訳を担当している会社は
ある程度、機械翻訳をしてから
変な言い回しがないか見直すけれど
言葉の微妙なニュアンスまでは
あまり気にしないのかな?とか、
もしも、ネイティブの方が
翻訳されていたら、
日本語の微妙なニュアンスは
分かりにくいのかな?とか、
同じ人が、ずっと同じマンガを
翻訳されているわけではないのかな?
とか、勝手に想像しています。
それでは、
次回は明日、更新いたします。