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泣いてみろ、乞うてもいい 46話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ 残ったのは二人だけ

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46話 マティアスは、レイラと子供たちをお茶に招待しました。

 

耳をつんざくほど、

ぺちゃくちゃ喋りながら

笑っていた子供たちも、

離れに入ると、驚くほど

おとなしくなり、

好奇心に満ちた目を輝かせながら

周りを見回しました。

 

レイラは怯えたモニカを宥めながら

最後に離れに入りました。

侍従たちの態度は、

貴賓に接する時と同様に丁寧でした。

 

侍従に案内されて応接室に入ると、

公爵は川に面した窓に背を向けて座り

彼らを待っていました。

恐ろしくて、屈辱的で、

当惑した記憶しかない場所に入った

レイラは思わず息を殺しました。

 

グレバー先生は、

アルビスを訪問させてくれただけでも

大きな恩恵を受けたのに、

このように親切にしてくれて

本当にありがとうと

浮かれた声でお礼を言いました。

 

レイラは彼女の積極的な態度に

安心しました。

グレバー先生が、

公爵の話し相手を引き受けてくれれば

レイラは家具のように静かに留まって

帰ることができるはずだからでした。

 

公爵は、

突然の招待に応じてくれたことに

お礼を言うと、

ゆっくりと立ち上がりました。

逆光のせいで顔が見えず、

さらに存在感が

大きく感じられました。

 

彼のシルエットを

じっと見つめていたレイラは、

「先生、痛い」というモニカの囁きに

ハッとしました。

モニカと目が合うと、

彼女は、もう一度

手が痛いと、ブツブツ呟きました。

 

子供の手をしっかり握っていたことに

気づいたレイラは、

目を見開きました。

当惑したレイラは、謝りながら

子供の手を揉んでいる間に

川に面したバルコニーにつながる

ドアが開きました。

日差しがいっぱいのバルコニーに

ティーテーブルが用意されていました。

 

少しレイラを見つめていた公爵は

「行きましょう」と言って

グレバー先生に視線を移し、

彼女に腕を差し出しました。

頬を赤くしたグレバー先生は

公爵の腕の上に手をそっと乗せました。 

 

この種のティータイムが

生まれて初めての子供たちは、

上気した顔で、公爵の後を

ぞろぞろ付いて行きました。

モニカの手をそっと握ったレイラは、

今回も、

最後にバルコニーに向かいました。

目を丸くして

バルコニーを見回したモニカは

本当にお姫様になったようだと

感嘆しました。

レイラは頷きました。

 

バルコニーに設けられた

ティーテーブルは、

急いで準備したとは思えないほど

華やかでした。

 

レイラの目は、

村の学校の子供たちをもてなすには

過剰な感のあるティーカップと食器と

バルコニーの欄干を通り過ぎて

眩しく輝く川の水面で止まりました。

 

レイラの眼鏡のフレームに

ぶつかった一筋の光が

細かく砕けました。

その光に沿って、

マティアスの視線が動きました。

二人の目が合いました。

ここは、とてもきれい。

公爵は、とても素敵。

ケーキが、とても美味しい。

 

モニカは感嘆し続けました。

そして、アイスクリームを口にすると

信じられないという目で

アイスクリームが入った器を眺め

隣に座っている先生に、雲の味がすると

深刻な口調で囁きました。

 

レイラは、数回瞬きした後、

子供が言いたいことを理解しました。

にっこり笑ったレイラは、

モニカの口元についたアイスクリームを

ナプキンで拭いてやりました。

 

今年初めて学校に通うようになった

モニカは、同年代の子供たちに比べて

体が小さい上、臆病で小心者で、

他の子供たちと

うまく付き合えませんでした。

毎日のように、

家に帰りたいと泣き出すので、

最初の数週間は、レイラも一緒に

泣き出したくなるほどでした。

 

それでも今は、

クラスの子供たちの中で、

レイラに一番よく従う

子供になりました。

モニカの母親が、

春に病気で亡くなったことを

知った後は、

レイラも、子供の心を

もう少し深く理解することができました。

 

モニカは、レイラにも

アイスクリームを勧めました。

レイラの心が、一瞬揺れましたが、

彼女は、大人らしく拒絶しました。

大人がアイスクリームを

食べてはいけないという決まりは

ありませんでしたが、

このテーブルに置かれた

アイスクリームは、

子供たちのために用意された

食べ物なので、 それを食べる姿を

公爵に見せたくありませんでした。

 

レイラはお茶を一口飲むと、

テーブルで交わされている会話に

耳を傾けました。

レイラの望み通り、

グレバー先生が積極的な態度で

会話をリードしていました。

 

レイラは安心して

上座に座っている公爵を

チラッと見ました。

彼は礼儀正しい態度で、

グレバー先生の話を聞いていました。 

不思議なことに、

そのように完璧な礼儀を尽くすことで

公爵は、相手より優位にある

自分の存在感を示していました。

非常に気品ある傲慢でした。

 

レイラが、研究する学者のように

じっと公爵を見ている間に、

立ち上がったモニカが

もう一度、アイスクリームを

レイラに勧めながら。

器を持って近づいて来ました。

 

一歩遅れて

人の気配を感じたレイラは、

袖を引っぱる手に驚き、

体をビクッとさせました。

驚いたモニカが放してしまった

アイスクリームの器が、

レイラのスカートの上に

落ちてしまいました。

その騒ぎに、

テーブルに座っている全員の視線が

レイラに集中しました。

木の床に落ちた器と

アイスクリームにまみれた

レイラのスカートを見たモニカは

真っ青な顔でレイラに謝ると、

今にも、泣き出しそうになりました。

 

「先生は大丈夫」と

子供を宥めるように笑ったレイラは

急いでナプキンで

アイスクリームを拭き取りました。

その間に、

素早く近づいてきたメイドたちが

床を片付けました。

 

その姿を見守っていたマティアスは

レイラに一番近い所に立っている

メイドに向かって目配せしました。

彼女は、

ベタベタした手と汚れたスカートを

困惑しながら見つめているレイラを

パウダールームに案内してくれました。

 

先生がいなくなり

泣き出しそうになった子供を、

ビルが慰めてやると、

落ち着きを取り戻しました、

 

その時、随行人が静かに近づいて来て

クライン卿が、

電話が欲しいと言っていると

マティアスに伝えました。

擦れば擦るほど、

アイスクリームの染みは

広がる一方でした。

もうレイラは諦めて手を洗いました。

幸いにも濃い色の生地なので、

それ程、汚れが

醜くは見えませんでした。

 

それから、レイラは

鏡に映った自分の姿を

几帳面に調べました。

染みを消すために、

必死に努力した跡のように

頬が少し赤くなっていました。

 

息を整えてパウダールームを出た

レイラは、しばらくすると、

その場に固まったように

立ち止まりました。

公爵が応接室につながる廊下の壁に

もたれかかっていたからでした。

 

レイラが立ち止まったその瞬間、

ヘルハルト公爵も

レイラを発見しました。

彼女は眉を顰め、

他に何か用事でも

あるのだろうと思いながら

辺りを見回しました。

まさか公爵が、あそこで

自分を待ってはいないだろうと

思いました。

 

しかし、時間が経っても

公爵は依然としてその場に留まり、

平然とレイラを眺めるだけでした。

唇の先には、

彼を完璧な貴族だと

褒め称える人たちが決して知らない

少しも紳士的ではない妙な微笑が

浮かんでいました。

 

公爵が、あのような微笑を浮かべた時

レイラには

良くないことが起こりました。

不吉な予感に襲われたレイラは、

乾いた唾を飲み込み、

両手を合わせて握りました。

公爵が退くまで

黙々と待ちたかったけれど、

ただ時間を引き延ばしていれば

不必要な誤解を

招くかもしれませんでした。

 

レイラは警戒心を緩めることなく

一歩一歩、

慎重に足を踏み出しました。

壁に寄りかかって、のんびりと

レイラを見守っていた公爵は、

彼女との距離が近づくと、

これ見よがしに

廊下の真ん中を塞ぎました。

驚いたレイラが後ずさりすると、

マティアスは、さらに微笑みました。

 

短い電話を終えたマティアスは、

バルコニーに戻る代わりに

反対方向に足を運びました。

これといった目的はなかったけれど

レイラが

まだ戻って来ていなかったので、

彼女を待たなければならないという

衝動に駆られました。

面白いことが起こるかもしれないと

思いました。

 

深刻な表情のレイラは、まるで

戦場へ行軍でもするかのように

悲壮な足取りで近づいて行きました。

彼を避けようとしたけれど、

離れの廊下は、

それほど広くありませんでした。

 

レイラが、すぐそばまで近づくと、

マティアスは、

そっとつま先を差し出しました。

床だけを見て歩いていたレイラは

反射的に退きました。

 

避けられた!

レイラは安堵しましたが、

その気持ちは、

すぐに羞恥心に変わりました。

マティアスは足をかけるふりをして

平然と姿勢を正したからでした。

優雅に立っている公爵の前で

レイラだけが、驚いたウサギのように

ピョンピョン飛び跳ねた格好に

なってしまいました。

 

クスクス笑っていた公爵は

何事もなかったように背を向けました。

彼が応接室に入るまで、

レイラは、ぼんやりと

その場に立ち尽くしました。

 

ヘルハルト公爵の

あのような荒唐無稽な面について

話せば、嘘つき呼ばわりされることは

免れられないだろう。

 

首を横に振ったレイラは、

さらに姿勢を正して

応接室に向かいました。

バルコニーに出ると、

呆れるほど完璧な紳士の姿をした

ヘルハルト公爵が見えました。

彼は穏やかな笑みを浮かべて

グレバー先生と談笑していました。

 

レイラを見たグレバー先生は、

ちょうど良いところに来た。

公爵が子供たちのために

ボートを出してくれるそうだ。

あの美しい川で舟遊びだなんて

本当に嬉しいことではないかと、

大喜びしながら言いました。

 

「でも私は・・・」と

レイラが困った表情をすると、ビルは

申し訳ないけれど、

レイラは水をとても怖がるので、

船に乗るのは難しいだろうと

公爵に伝えました。

彼は、

「ああ、そうなんですね」と言うと

気の毒そうにレイラを見ました。

ここで溺れたレイラを見ていたのに、

まるで、その事実を

初めて知った人のようでした。

彼はレイラに、

ここで休憩するようにと言いました。

 

混乱に陥ったレイラは、

一体、なぜ、あの公爵は

今までになかった思いやりを

見せているのだろうかと、

考えている間に、

子供たちは侍従に案内されて

バルコニーを抜け出しました。

 

グレバー先生は、

自分が行くので、ルウェリン先生は、

ここにいるようにと言いました。

ビルは、クスクス笑いながら、

あの小さな奴らは

自分が面倒を見ると言うと、

レイラの代わりに、

モニカの手を握りました。

ビルを見ると怯えて泣いていた姿は

跡形もなく消え、モニカは

喜んで彼について行きました。

 

レイラは、

グレバー先生とビルおじさんに

お礼を言いました。

面目ないことでしたが、

レイラは二人の配慮を

ありがたく受け入れました。

下心のある公爵と違って、

彼らはいい人だし、

公爵と離れることができるのも、

とても幸いなことでした。

 

ところが、皆が去った後も、

公爵は座ったままなので、

レイラは彼を

訝し気な目で眺めました。

そして、公爵が

村の学校の子供たちと

一緒に船遊びをする方が

もっと変であることに

レイラは気づきました。

 

非常に間違った選択をしたことに

気づいたレイラが慌てて立ち上がると

離れの一階にある、

川につながっているボート格納庫から、

子供たちを分乗させた二隻のボートが

出発しました。

侍従たちがオールを漕ぎ、

ビルおじさんとグレバー先生は

それぞれ違う船に乗って

子供たちを引率していました。

 

手すりに手をついて立つ

レイラを見た子供たちは

笑いながら手を振りました。

「先生、行ってきます!」と

臆病なモニカもはしゃいでいました。

 

今さら子供たちを追いかけられない

レイラが絶望する瞬間、

 「座れ」と冷たい声が

聞こえて来ました。

レイラは驚いて振り向きました。

足を組んで座った公爵が

彼女を見つめていました。

彼はリズミカルに彼女の名を呼ぶと

笑いました。

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いつも、たくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

ぴろろん様

誹謗中傷さえなければ、

どのようなコメントを

お書きいただいても大丈夫です。

このブログのシステム上、

いただいたコメントに

直接、返信することができませんが

ご容赦ください。

 

以前も二回ほど、

ボートの格納庫の話が出て来ましたが

今回のシーンの伏線だったのかと

納得しました。

 

マティアスが

午後の予定を確認し、

遠足を楽しむにはもってこいだと

思った時、

すでに、マティアスは、

子供たちを侍従が漕ぐボートに乗せて

応接室に、レイラだけ残る状況を

計画していたのでしょうね。

マティアスは、憎たらしいほど

賢い人だと思いました。

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