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泣いてみろ、乞うてもいい 49話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ 水鳥の羽のような声

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49話 マティアスは何を話そうとしているのでしょうか。

 

その髪型は似合わないと、公爵は

とんでもないことを言いました。

レイラは、よく考えた後に

その言葉の意味が分かると、

さらに大きな混乱に陥りました。

この男は、

なんて突拍子もないことを言うのかと

思いました。

 

レイラは、少し雑であることを

自分も知っていると

尖った口調で返事をしました。

しかし、落ち着いた様子で

レイラを見ていた公爵は

「少し?」と、嘲笑うように

問い返しました。

 

レイラは、

すぐに逃げ出したい衝動を抑えるため

ハンドルを握った手に

ギュッと力を入れました。

しかし、

頬が赤くなってしまったのは

どうすることもできず、

癪に障りました。

おかしく見られたくないと

思いました。

 

マティアスは、

いっそのこと、

髪を解けば良かったのにと

言いました。

レイラは、

自分もそうしたいけれど

それは教師らしくないと

校長先生に言われたと返事をしました。

そして、公爵と目を合わせていると

顔がますます

熱くなるような気がしたので

レイラは顔を背けました。

 

しかし、

再び沈黙が訪れると、

さらに、ぎこちなくなりそうなので

レイラは、

あまりにも幼く見えると、

教師としての権威が失われるので

学生のような頭は止めた方がいいと

言われたと、もじもじしながら

話を続けました。

そよ風のような公爵の笑い声が

聞こえて来ましたが

レイラは振り向きませんでした。

今や、耳たぶまで熱くなり、

レイラは、

かなり馬鹿みたいな格好に

なっているだろうと思いました。

 

マティアスは、

その雑に結い上げた髪が

教師の権威なのかと言うと、

笑いの余韻が残った目で

歩いている小さな女を

見下ろしました。

プライドが傷ついているのか

澄ました表情をしているのが

なかなか面白いと思いました。

 

レイラは、

たくさん練習しているので、

すぐに良くなると反論しました。

 

死にかけていても

負けたくなさそうだ。

レイラの反論に、マティアスは、

再びクスクス笑うと、

はたして、そうなるだろうかと

尋ねました。

レイラは、

そうすることができると思う。

もし、上手にならなければ

髪を短く切ると答えました。

 

思いも寄らない返事にマティアスは

「切る?」と聞き返しました。

彼から笑いが消え、

目が細くなりました。

 

レイラは、かなり真剣に頷くと、

そうすれば、

もっと大人っぽくなると思うと

言うと、マティアスは

「切るな」と冷静に命令しました。

 

その奇妙な言葉に当惑したレイラは

再び彼を見ると、

自分が髪を伸ばしたり

切ったりすることも、

公爵の許諾を得なければならないと

考えているのかと、

カッとなって尋ねました。

すると、公爵は、

君の髪はきれいだからと、

あまりにも、あっさりと答えました。

とんでもない返事に、

レイラは自分の耳を疑って

じっと公爵を見つめましたが、

彼は、何てこともないといった目で

レイラを凝視し、

翼のようだと言いました。

 

公爵の声は、

レイラを侮辱して傷つけた時と

少しも変わりませんでした。

そういえば、

ひどい言葉を口にした瞬間にも、

公爵は、一様に

柔らかい声をしていました。

 

改めて、その事実に気づくと

初めてヘルハルト公爵を見た夏の日、

危うく撃たれるところだった

その恐怖の瞬間にも、

このように低くて柔らかな声が

はっきりと聞こえて来て、

無我夢中で木から降りて

ビルおじさんの小屋に向かって

走って行った幼い頃の

自分の姿が、記憶の向こうから

鮮明に浮び上がりました。

 

あの森に人がいた。

背の高い男だった。

髪の毛が黒く瞳は真っ青だったけれど

声が、まるで水鳥の羽のようだったと

苦しい息と共に、

夢中で吐き出した言葉。

 

その瞬間、

煌めく川のほとりで遊びながら

拾い集めた、

あの時代のレイラの宝物だった

柔らかい羽毛のことを

当然のように思い出しました。

 

レイラは、

急いで公爵の視線を避けました。

むしろ残忍な言葉で

傷つけてくれれば良いと思いました。

恐ろしくて、気分が悪くて嫌な人。

それが、レイラの知っている

ヘルハルト公爵だからでした。

 

しかし、いくら待っても

慣れ親しんだ言葉が

聞こえて来ませんでした。

落ち葉が散る道の向こうを眺めながら

公爵は、ひたすら歩きました。

少し前の、あの変な言葉は、

レイラだけの、

錯覚や幻聴だったような気もしました。

 

肩の上に垂れた髪の毛を

そっと撫でてみたレイラは

眉間にしわを寄せながら

首を振りました。

そのせいで、ハンドルを握った手が滑り

バランスを失った自転車が倒れました。

倒れるの防ごうとしたレイラも、

自転車と一緒に

倒れる羽目になりました。

自転車が地面にぶつかる音と

レイラの悲鳴が、

ひっそりとした道に響き渡りました。

 

マティアスは眉を顰めて

呆れた光景を見下ろしました。

一人でもがいて転び、

自転車の下敷きになった

レイラの姿が、あまりにも荒唐無稽で

プッと失笑が漏れました。

 

君は、すぐに転ぶと公爵が笑うと、

レイラは恥辱感で唇を噛みました。

しかし、かえって

気が楽でもありました。

公爵が、さっさと自分を嘲笑って

いじめて去ってくれることを

レイラは待ちわびていました。

 

しかし、公爵は、

静かに自転車を起こし、

遠くまで飛んで行ったカバンを拾い

再びレイラの前に戻ると

膝を曲げて座りました。

そして、マティアスが

散らばった物を拾おうとすると、

レイラは、自分がやると言って

怯えながらカバンを奪いました。

その露骨な反感に

マティアスは眉を顰めました。

 

レイラは目を伏せて

自分の物を拾い始めました。

怖がらせるようなことを

してもいないのに

声はもちろん、手まで

ブルブル震えていました。

マティアスは、

何となくイライラしましたが、

黙って見守ることにしました。

ほんのり赤い頬と首筋を見ると、

もしかしたら、彼女は

恥ずかしがり屋かもしれない。

それなら悪くないと思いました。

 

マティアスは立ち上がって

レイラの前に立ちました。

彼女は長い影の下で、

慌てて落ちた物を拾いました。

道端に転がっている

石ころと落ち葉まで

拾って入れているのを見ると、

完全に魂が抜けているようでしたが

その姿がマティアスの不快感を

きれいに消してくれました。

 

落ちた物を全て拾ったレイラは

急いで立ち上がると

マティアスと向かい合いました。

服と手についた土のことは、

すっかり

忘れてしまっているようでした。

 

どうしていいか分からなかった

レイラは、

道の向こうの邸宅の出入り口と

マティアスの顔を交互に見ると、

自分が公爵を追い越すのが無礼なら

公爵が先に行ってしまうまで待つと

言いました。

これ以上一緒に歩きたくないという

不埒な言葉を口にしながらも、

レイラは、苛立たしげで

不安そうな目つきをしていました。

多分に気に障る態度でしたが、

マティアスは快諾しました。

あの門の向こうまで

レイラと一緒に歩けないということは

彼もよく知っていました。

 

「行け」と命令するマティアスに、

レイラは少し驚いた表情で

自分が先に行くのかと尋ねました。

マティアスは返事の代わりに

軽く顎の先を下げました。

レイラは、

ようやく安心した表情を浮かべて

頭を下げると、

マティアスにお礼を言いました。

精一杯、礼儀をわきまえる態度が

むしろ侮辱のように感じられました。

 

レイラは自転車に乗る前に

チラッと振り返りました。

善良な心を与えたにもかかわらず

不審そうな目つきでした。

小さく首を傾げたり、

眉を顰めたり、また首を傾げると

レイラは自転車に乗って去りました。

 

むしろ泣かせればよかったと

遅ればせながら後悔しましたが、

マティアスは、

それほど不愉快そうでもない顔で

一歩を踏み出しました。

 

その時、煌めく万年筆一本が

マティアスの目に入りました。

すぐに転んで、

すぐに自分の物を失くす女の万年筆を

マティアスは優雅な動作で

拾いました。

 

名前を呼べば、まだ聞こえる場所に

レイラはいたけれど

マティアスは、

そうする気になれませんでした。

マティアスは指の間で

万年筆を回しながら、

一層のんびりとした足取りで

歩きました。

せっせとペダルを踏んでいるレイラは

すぐにアルビスの出入り口の向こうに

姿を消しました。

あの鳥が、またやって来たと、

笑い混じりの声で、

マーク・エバースが言いました。

マティアスは、

あえて窓の外を見なくても、

その言葉の意味を理解しました。

フィービー。自分の主人より、

はるかに優しくて賢いその鳩が

訪問する時間でした。

 

マティアスは、

今日の最後の業務である書類に

サインをし、

随行員がそれを持って立ち去ると、

応接室に一人になりました。

 

マティアスは

万年筆のキャップを回して

ロックしながら窓の外を見ました。

いつものように、フィービーは

手すりに座って、餌を食べることに

夢中になっていました。

 

マティアスは、

手に持った細い万年筆を見ました。

蓋には、レイラ・ルウェリンと

持ち主の名前が刻まれていました。

見たところ新しい万年筆で、

彼女が自分で買ったようではないので

たぶん、

庭師のプレゼントではないかと

思いました。

そして、

ビル・レマーからのプレゼントなら

どんなことをしてでも、

取り戻そうと努力するから

そうであって欲しいと願いました。

 

今頃、失くしたことに

気がついただろうか。

物思いに耽った顔で

万年筆を見ていたマティアスは、

再びキャップを外しました。

最高の紳士と絶賛する女性に

紳士の役割を果たしても悪くないし

あの伝書鳩が、

自分の食事代を払う時が来たと

思いました。

 

マティアスは、

短い一言を書いたメモ用紙を折って

バルコニーに出ました。

伝書鳩は、

彼が足に手紙を結んでいる間、

おとなしく身を任せていました。

夢中で自転車に乗って逃げて行った

この鳥の飼い主のことが思い浮かんで

マティアスは少し笑いました。

 

手紙をしっかりと結んだマティアスは

空に鳥を放すと、伝書鳩

小屋のある方向に向かって

力強く飛び始めました。

夜と共に

フィービーが帰って来ました。

ぼんやりと、

何も置いていない机だけを

見つめながら座っていたレイラは

嘴でガラス窓を突く音に驚いて

顔を向けました。

 

レイラは急いで立ち上がって

窓を開けると、

かなり肌寒い風が吹いて来ました。

レイラはフィービーに、

「お腹が空いたでしょう?

ちょっと待って」と声をかけましたが

フィービーの足に結んである

手紙を発見して、目を見開きました。

見間違えたのかと思い、

両目を擦ってみたりもしましたが

本当に足に手紙が結ばれていました。

カイルが去った後は

一度もなかったことだし、

あり得ないことだと思いました。

 

まさかそんなはずがないと

分かっていながらも、レイラは、

無意識にカイルの名前を

囁きました。

ぼんやりとフィービーだけを

見つめていたレイラは

震える手でその手紙を解きました。

そして、

そこに書かれた短い一行を読んだ

レイラの顔に浮かんだ感情は

疑問から驚愕に急変しました。

 

息を切らしながら

レイラは思わず手紙を手放し、

後ずさりしました。

落ちた手紙は、窓の前の床の上に

落ちました。

瞬きしながら、

その手紙を見ていたレイラは、

一歩、また一歩後ろに下がり

クローゼットに背中をぶつけると、

ようやく現実感が戻って来ました。

 

あり得ないと

震える声で呟いたレイラは、

慌ててカバンを探し始めましたが

いくら探しても万年筆は見つからず

一体、いつ、

カバンに入ってきたのか分からない

石と木の葉に、

レイラはさらに当惑しました。

 

彼女は、再び窓際に近づきました。

手紙を持つレイラの手は

青ざめていました。

 

君のペンはどこにあるんだろう?

 

もう一度フィービーが運んだ来た

手紙を読んだレイラは、頭を抱えて

あり得ないと何度も呟きましたが

何も変わりませんでした。

月明かりの中で、

公爵が太らせたフィービーが

平然と鳴きました。

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レイラがリンダの酷い仕打ちに

ショックを受けて、

泣きながら寝込んでいた時に、

その様子を窓から覗いていた

マティアスは、

フィービーが運んで来た

カイルからの手紙を読みましたが

(その後、マティアスが

手紙をどうしたかは謎)

もしかして、マティアスは

レイラとカイルがフィービーを通して

手紙のやり取りをすることに嫉妬しつつ

自分もレイラとそうしたいという願望が

心のどこかにあって、

フィービーを餌付けしたのではないと

思いました。

 

レイラの万年筆を

仕事に使うマティアス。

好きな女の子の物を隠して、

こっそり使ってニヤニヤしている

男の子のように思えました。

マティアスは、

こんなにひねくれたことをしないで

レイラが万年筆を失くしたと

焦っている時に、

自分が万年筆を拾ったよとでも言って

万年筆を差し出せば、

普通にレイラは喜ぶと思うのですが

恋愛初心者で、

公爵としてでしか人と付き合えない

マティアスには、

そういうことができないのかなと

思いました。

************************************

いつも、たくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

DUNE様

バスティアンの情報

ありがとうございます。

ピンポイントで何話か読んでみたところ

ヘルハルト公爵夫人とか

カルスバル

バスティアンではカールスバル)とか

ラッツ大学など、

お馴染みの固有名詞が出て来たので

興奮してしまいました。

早く原作を読まなければと

焦っております。

 

ぺこちゃん様

食いしん坊フィービーが

ツボにはまりました(笑)

きっと、マティアスは

レイラやカイルがあげている餌よりも

高級な、軍隊仕込みの良い餌を

フィービーにあげているのだと

思います。

 

話は変わりまして、DUNE様同様、

カナリアがマティアスという考察に

納得しました。

マティアスは、生まれた時から

自分の意思に関係なく

決められた人生を歩むしかなかった。

しかし、レイラは、

生きることさえ大変な境遇の中でも

自分の人生を、

少しでも良いものにしようと

自分なりに頑張って来た。

そんなレイラにマティアスは憧れ

マティアス同様、

決められた人生を

歩むしかなかったクロディーヌは

レイラのことを生意気だと

思ったのかもしれません。

 

ぴろろん様

マティアスは、

さらに大胆になっていきます。

また、ハラハラしてしまうかも

しれません。

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