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泣いてみろ、乞うてもいい 65話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ 花婿に相応しい人

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65話 レイラは校長に紹介された男性と会っています。レイラは、

少しぎこちない笑みを浮かべながら

もう大丈夫。

ここからは一人で行くと、

一緒に歩いていた男に伝えました。

依然として、

引き下がる気がなさそうな彼は、

ニコニコ笑いながら

道の向こうを指差し、

もうすぐなので、家まで送ると

言いました。

 

レイラは、

本当に大丈夫。 一人で行く。

おじさんがとても厳しいと言うと

ひょっとしたら、

人が通るのではないかと心配になり

しきりに周りを見回しました。

他の男と一緒にいる姿を

アルビスの人々に見せるのは、

どうしても、

好ましくないことでした。

たとえ無関係だったとしても、

数人の口を経るだけで、

噂は勝手に膨らんで行くものでした。

 

男は、

「ああ、そうなんですね」と

残念そうに、ため息をつくと、

今日はこの辺で失礼するけれど、

代わりに今度の日曜日に

一緒に昼食を取るのはどうかと

提案しました。

レイラは断ろうとしましたが、

男は、

今週が忙しいようなら、

来週でも大丈夫。

向かい合って顔を見るのが

どうしても難しいほど

自分が嫌でないのなら、

もう一度会ってみようと、

照れくさそうに顔を赤らめても、

かなり力を込めて話しました。

 

そして、彼は、

短時間、お茶を飲んで終わらせるには

物足りない。

もう一度会って、

もう少し長く話がしたい。

その時も、

ルウェリン先生の気持ちが

今と同じであれば、

これ以上無理を言って困らせないと

言いました。

 

男は、はっきりした返事を聞くまで

決して離れないというような

頑固な表情でした。

 

度々、学校に品物を配達しに来る

雑貨店の息子とは

ただ顔見知り程度の間柄に

過ぎませんでした。

そのため、今日の午後、

突然呼ばれた校長室で

彼と向き合った時、

一層、当惑感が大きくなりました。

そして校長が彼の遠い親戚なので、

二人の仲をとりもとうとしているのを

知ると、頭の中が真っ白になって

何も考えられませんでした。

 

レイラは当惑して

再び辺りを見回しました。

背後から、

自動車の音が聞こえてきたのは

その時でした。

幻聴だと信じたかったけれど、

その音は、ますます近づき

鮮明になりました。

 

レイラがぼーっとしている間に

ヘッドライトの光が近づいて来ました。

二人が立っている道を通り過ぎ、

しばらく速度を落とした車は

すぐに本来の速度で

角を曲がりました。

ヘルハルト公爵を乗せた車でした。


男が用心深くレイラを呼ぶと

彼女は、

しばらくぼーっとしていたことに

気づきました。

レイラは、まだ自分の心の準備が

できていないようだ。

本当に申し訳ないと

彼に頭を下げて謝りました。

校長に背中を押されて、

いつの間にか一緒に

お茶を飲むようになったけれど、

結婚を前提に誰かに会いたい気持ちなど

レイラには少しもありませんでした。

いつかは結婚するかもしれないけれど

当分は、ただ熱心に仕事をしながら

平凡な日々を送りたいと思いました。

はっきり拒絶の言葉を聞いた男は

失望した表情を

隠すことができませんでしたが、

レイラの意思を理解し

尊重してくれました。

そして、

無理矢理紹介してくれとせがんで

会う場を用意したために

迷惑をかけて申し訳ないと

むしろ、謝ってくれたりもしました。

 

男は仏頂面で立ち去りました。

良い人を傷つけたと思うと、

気が気でありませんでしたが、

それでもレイラができる最善の選択は

これだけでした。

断れないまま、引きずられてしまえば

カイルにそうしたように、

かえって大きな傷を

与えることになるからでした。

 

ふと思い出したその名前に

レイラの眼光が深くなりました。

元気に過ごしているかどうか

気になる瞬間が多かったけれど、

ただ元気でいてくれることを

祈ることが、結局最善だということも

レイラはよく知っていました。

いくら恋しくても、

カイルと一緒にこの道を歩いて、

笑って騒いで、

気兼ねなく付き合えた日は

戻らないからでした。

 

男が去り、暗くなるまで、

レイラは、ぼんやりと

その場にいました。

懐かしい思い出を

ようやく消したところで、

突然、不安感が

押し寄せてきたからでした。

 

あの角を曲がれば、

公爵と出くわすかもしれない。

その不安感は公爵と共に過ごした

奇妙な秋を思い出させました。

 

レイラは深く息を吸い込みながら

新しい場所で、

新しい気持ちで出発する春を

思い描いてみました。

できれば、大きな窓のある部屋を

手に入れたいと思いました。

日当たりが良ければ、一人でいても

そんなに憂鬱にならないからでした。

 

どうせなら、その窓の向こうに

木の一本くらい見えれば良いし、

そうでなければ、

近くに公園や森があれば良い。

アルビスが恋しい時、草と木の匂いを

嗅ぐことができるように。

 

あれこれ考え続けている間に

不安だった気持ちが落ち着いて来たので

レイラは勇気を出して

自転車のハンドルを握り、

慎重に角を曲がりました。

幸い、プラタナスの道は

がらんとしていました。

 

安堵のため息をついたレイラは、

軽やかに自転車に乗ると、

元気よくペダルを踏みました。

 

いつもと変わらない緊張感に

顔を硬くして、

カイルは郵便受けを開けました。

数通の手紙を発見すると、

わずかな期待の光が差しましたが

すぐに苦笑いに消えました。

カイルは毎週手紙を書きましたが、

レイラは、

これまで返事をくれませんでした。

 

静かにため息をついたカイルは、

とぼとぼと力なく、

自分の部屋がある三階まで

寮の階段を上りました。

 

冬休みを目前に控えた寮は、

故郷に帰る荷物をまとめる学生たちで

ごった返していましたが、

カイルの部屋は

いつものように静かでした。

 

暗い寮の部屋に入ったカイルは、

開封の社交クラブの招待状と

故郷からの手紙を

出入り口の前に置かれた台の上に置き

ベッドに身を投げました。 

 

数日前の電話で、エトマン博士は

初めての休みに、

旅行に行ってみたらどうかと、

それとなく勧めました。

見聞を広めるために

大陸全体を見て回る旅行は、

首都の裕福な大学生の間で、

一種の流行のようになっていました。

もちろん、

父がその旅行を提案した理由は

他のところにありましたが。

 

カイルは考えてみるという返事で

ごまかしました。

今のままでは、

レイラのそばに帰ることが

無意味だということは

分かっているけれど、

そのような形で旅に出るのも、

やはり無意味なのは同じでした。

 

いっそのこと、

この寮に閉じこもって、

学期中、ずっとそうしていたように

半狂乱の人のように、勉強にだけ

没頭した方がいいのだろうか。

 

自分たち二人だけが

幸せになれるそんな場所は

この世にない。

 

カイルは目を閉じて

悲しげな笑みを浮かべると、

今聞いているかのように

レイラのその言葉が蘇りました。

何の返事もできなかった、

無気力だった自分の姿も。

そして、いつものように、

記憶の終わりは、

ひどい自己嫌悪でした。

 

カイルは、

親の陰から離れれば何でもない。

彼女一人も、

まともに守ってあげられなかった自分が

あまりにも無気力で憎いと思いました。

 

医者になれば、自分たち二人が

幸せになれる所を

見つけることができるだろうか。

しかし、

その日はあまりにも遠い先。

たった何ヶ月でも、途轍もなく長くて

自分を狂わせたのに。

彼女なしに、その長い時間を

どうやって耐えればいいのか。

カイルは目を覆っていた

片腕を下げると天井を見ました。

 

ふと、カイルは、

もう成年になったので、

祖父が彼の分として譲った遺産は

自分の意志で

処分することができることを

思い出しました。

どうして、そのことを、

早く考えられなかったのか。

 

カイルは、自分でも気づかないうちに

起き上がると、ベッドの端に腰掛けて

乱れた髪を撫で下ろしました。

それから、机の前に近づき、

焦りながらペンと便箋を探しました。

夕食の支度をしているレイラを

見守っていたビルは、

当惑した表情を浮かべながら、

なぜ、急にみんな、お前の旦那さんを

見つけることができなくて

やきもきしているのかと尋ねました。

レイラは、今日、校長が、

無理やり紹介した雑貨店の息子の話を

終えたところでした。

 

レイラが、

「みんなって?」と聞き返すと

ビルは、

突然、公爵家の老婦人も、

お前の花婿になるような男はいないかと

ヘッセンに聞いたらしいと

おしゃべりなモナ夫人が

今日教えてくれたと答えました。

 

レイラは、

どうして老婦人は、

そんなことを言ったのかと尋ねると

ビルはあからさまに誇らしげな顔で

レイラのことが

気に入ったのではないかと答えました。

 

レイラは、

そんなわけがないと答えると、

ストーブから取り出したばかりの

パンをテーブルに置き、笑いながら

ビルの向い側の席に座りました。

 

ビルは、

そうでなければ、あの方が直接

花婿候補を探してくれるはずがない。

レイラは、どう思うかと尋ねると

そっとレイラの顔色を窺いました。

 

レイラは、自分のことが

面倒くさくなったのではないよねと

尋ねました。

ビルは、

とんでもないと答えました。

レイラは、

そうでなければ、おじさんと

いつまでも生きて行くと言いました。

 

ビルは、

老婦人が紹介する花婿候補も

断るつもりなのかと尋ねました。

レイラは、

おじさんより素敵な男なら

喜んで会うけれど、悲しいことに

そんな男はこの世にいないと思うと

答えました。

 

明るく平然と笑っているレイラを見て

ビルは、さらに心を痛めました。

あちこちから差し出される

花婿候補を拒む理由が、

もしかしたら、いや、きっと

カイルのせいだと思いました。

 

カイルは、

まだ手紙を送って来ていました。

レイラに内緒で隠した手紙が

増えるほど、ビルの罪悪感も

大きくなって行きました。

このように切ない仲を

引き裂くこともできないし、

だからといって二人の縁を

再びつなぐ道もないので

気が狂いそうでした。

 

ビルは「もしも、レイラ」と

衝動的に口を開きました。

レイラも、依然として

カイルに未練が残っているなら、

いっそエトマン家と絶縁をしてでも

結婚できるように

手伝ってあげたらどうだろうか。

大騒ぎになるだろうけれど

カイルとレイラは

首都に所帯を持つから、

大丈夫ではないか。

そのようなことが起きれば、

自分は、これ以上、

このアルビスの庭師として

生きていくのは難しいだろうけれど

レイラのためなら、

もう、そのようなことぐらい、

どうでもいいと思いました。

そして、歳月が流れ、

孫でも一人くらい抱けば、

あの酷いエトマン夫人も

心を変えるかもしれませんでした。

 

ビルが黙っているので

レイラが「おじさん?」と呼ぶと

ビルは、明日、鶏を一羽

捕まえたらどうだろうかと

聞こうとしていた。

年を取ったせいか、

言おうと思ったことを、何度も

うっかり忘れると、ごまかしました。

衝動的に決定するより、

もう少し考えを整理してから

話したほうが良さそうだと

思いました。

 

幸いにもレイラは、

怪しい気配を感じなかったのか、

ニッコリ笑って頷きながら、

明日は焼き鳥を作って食べようと

言いました。

明かりは、暖炉の炎だけの寝室で

マティアスは

蓄音機の音を少し上げた後、

ウイングチェアに

深く寄りかかって座ると、

向い側の椅子の

ひじ掛けに座っていた鳥が

飛んで来ました。

 

マティアスが、

蓄音機から流れて来たワルツの旋律を

口笛で口ずさむと、カナリアは、

すぐにそれに応えるように

さえずり始めました。

 

彼の鳥は賢く、

別に教えたわけでもないのに、

ある日から、音楽が流れると

自然に歌うようになりました。

おかげで、鳥と一緒に

音楽を聴く夜が多くなりました。

マティアスが知る限り、

彼のカナリアは、

ワルツを最も美しく歌いました。

 

音楽が終わると、マティアスは、

鳥の歌をほめるように

指先で小さな頭を撫でました。

カナリアは、まるで甘えるように

自分の嘴を彼の手に擦りつけました。

 

ニッコリ笑ったマティアスは、

指の上に座ったカナリアと一緒に

鳥かごの前に近づきました。

彼が手を下ろすと、

鳥は自然に鳥かごの中に飛んで行き、

自分の巣に降り立ちました。

 

鳥かごのドアを閉めたマティアスは

次の曲が再生され始めた

蓄音機を消しました。

ベッドに横になって仰向けになると

疲労感のこもったため息が漏れました。

 

マティアスは

「おやすみ」と鳥に挨拶をすると

それを理解したかのように

カナリアは巣の中で

ぐっすり眠りました。

鳥を見るマティアスの目は

もう笑っていませんでした。

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雑貨屋の息子は、学校に配達に来て、

レイラを見ているうちに、

彼女のことが

好きになってしまったのですね。

呆気なくふられてお気の毒さまでした。

 

久々にカイルの登場。

大学生活を楽しむどころか

毎週、レイラに手紙を書いて、

毎日毎日、レイラからの返事を待ち

レイラと離れている辛さを

少しでも紛らわすために、

勉強に没頭しているカイルが

可哀想過ぎます。

でも、祖父の遺産があることを

思い出したことで、

親に頼ることなく

レイラと二人だけが

幸せになれる場所を

見つけようとするのだと思います。

でも、きっとレイラの気持ちは

変わらないのでしょうけれど。

 

自分が職を失うことになっても

レイラの幸せの方が大事だと

考えるようになったビルおじさん。

彼にとってレイラは

かけがえのない存在で、

本当の娘のようにレイラのことを

愛しているのだと思います。

 

それを分かって、

レイラとビルおじさんが、

いつまでも近くで暮らせるように

レイラに適当な花婿を

探させているカタリナ様は

本当に思いやりのある方だと

思います。

レイラは、変に意地を張らないで

カタリナ様が紹介する男性と

素直に結婚することで

穏やかな生活を送れるような

気がします。

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