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問題な王子様 65話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 51、52話 ノートの修正

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65話 エルナが湖畔から戻って来ました。

 

躊躇っていたカレンが、

「お帰りなさいませ」と

先に口を開きました。

「はい」と返事をした

血の気のない大公妃の顔の上に

微かな笑みが浮かびました。

焦りながら、様子を探っていた

カレンの眼差しが大きく揺れました。

 

エルナは、

カレンのおかげで、この宮殿を出て

風に当たれて良かったと

丁寧にお礼を言うと、

カレンの横を通り過ぎて

一人で中に入りました。

 

カレンは、

もしかして、グレディス王女が

現れなかったのかと

希望を抱きましたが

すぐに、それは消えました。

自分を見つめる

リサの目つきだけ見ても、

湖のほとりで起こったことが

分かるようだったからでした。

 

それならなぜ?

カレンは、

執拗に大公妃を観察してみましたが

そうすればするほど、

疑問だけが深まるばかりでした。

分別のない純真な子供のように

見下していたけれど、

知れば知るほど

本音が分からない相手でした。

 

まずは自分の役割に忠実であろうと

決心したカレンは、

慌てて大公妃の後を追って、

彼女を呼び止めました。

エルナは、少し疲れた顔で

振り向きました。

カレンは声を整えて、

王子が帰って来ていると告げました。

 

その言葉に、エルナは目を見開き、

目つきが明るくなると、

一瞬にして表情が変わりました。

 

エルナは、

きっと遅くなると言っていたのに

もう帰って来ているのかと尋ねました。

カレンは、

スケジュールが変更になり、

早く戻って来た。

大公妃と夕食を共にすると

言っていたけれど、

準備をしましょうかと尋ねました。

 

エルナは快く答えられず、

躊躇いました。

久しぶりにビョルンが

早く帰って来てくれたことは

嬉しいけれど、まだ胃が痛くて不快で

到底、

食べられそうにありませんでした。

 

しかし、エルナは、

代わりに返事をしようとする

リサの言葉を切りながら、

「はい」と衝動的に叫び

準備を頼みました。

面食らっているリサの視線が

感じられましたが、

エルナは考えを変えませんでした。

一緒にいるから、大丈夫そうでした。

エルナの寝室は空っぽでした。

少しだけ先に部屋に上がると言って

急いで食堂を出ましたが、

どこにも、その姿を

見ることができませんでした。

 

ゆっくりと

部屋の中を見回したビョルンは、

机の前に置かれている椅子に

斜めに寄りかかって座りました。

きちんと置かれている

先ほどの、そのノートを見ると、

しばらく忘れていた

奇妙な不快感が蘇りました。

 

未練がましい。

ビョルンは冷たく笑いながら、

そのノートを再び広げました。

グレディス・ハードフォートが

存在する限り、この世のどこにも

あなたの居場所はないという宣言が

込められているような

資料を作るために、エルナは、

かなりの誠意を注いだようでした。

毎日、メイド長と勉強したと自慢し

頑張っていると、

愚かに明るく無邪気に

笑っていました。

 

暖炉の中に

投げ入れてしまおうかと

真剣に考えていた瞬間、

浴室のドアが開く音が

聞こえて来ました。

 

ノートを閉じたビョルンは

エルナに

具合が悪いのかと尋ねました。

夕食の食卓の燭台の明かりの下では

生き生きとしていた顔が、

今は病人のように青ざめていました。

 

エルナは

断固として首を横に振って

否定すると、軽やかな足取りで

近づいて来ました。

食卓の前で作って見せたような

笑顔も蘇りました。

しかし、

ビョルンが握っているノートを

発見すると、その愛らしい表情が

一瞬怒った猫のように

凶暴になりました。

 

エルナは、

なぜ、それを見ているのか。

自分のだと言うと、

そのノートを奪おうと

必死になり始めました。

その無意味な努力を

ぼんやりと眺めていたビョルンは

椅子から立ち上がり、

ノートを握った手を、

頭の上に高く持ち上げました。

何度か飛び跳ねたエルナは、

恨みに満ちた目で

彼を睨みつけました。

そして、他人の物に

むやみに手を出すのは

紳士らしくないと非難しました。

 

ビョルンは、

別に大した秘密でもないと

言いましたが、エルナは、

それでも自分のものなので、

許可なく開いて見るのは無礼だと

言い返しました。

 

すごい侮辱でも受けたように

振る舞う妻を見下ろすビョルンの唇が

斜めに曲がりました。

 

ビョルンは、

そんなに道理に明るいのに、

このように滅茶苦茶な結果を

出したのかと尋ねました。

エルナは、

それはどういう意味かと

聞き返しました。

 

ビョルンは、

これで一体誰と付き合うのか。

メイドか、それともリスかと

尋ねました。

 

そんなつもりはなかったのに、

思いもよらず、ひどい言葉を

吐き出してしまったことに

ビョルンが気づいた時、

エルナはすでに固まっていました。

 

エルナは、

王子様には、どう見えるか

分からないけれど自分は本当に

一生懸命、努力したと、

拳を握りしめながら

一歩後ろに下がりました。

やがてビョルンは、

ノートを机の上に置きましたが、

それを取り戻す気力は、

もう残っていませんでした。

 

無理やり食べ物を飲み込む時も

大丈夫だったし、

それをまた吐き出してしまった時も

我慢できましたが、

滅茶苦茶という、

皮肉を込めて投げかけたその言葉が

割れたガラスの破片のように

心を引っ掻きました。

また、胸が

ズキズキ痛むような感じでした。

 

ビョルンがエルナを呼ぶ声は

一段と和らいでいましたが、

エルナはビョルンを見ませんでした。

靴の先を見下ろしながら、

罪のないドレスの裾だけを

握り締めて、ねじっていじめました。

泣かないでと自らを慰めながら

息を押さえつけました。

 

プライドを守れ。

泣かないでエルナという

呪文のご利益のおかげか、

涙は流れませんでしたが、

目頭はすでに熱くなっていました。

 

いっそのこと、このまま

背を向けようと思った瞬間、

ビョルンの手が腰を抱きました。

抵抗してみましたが、彼は難なく

エルナを、

めちゃくちゃと評したノートが

開いている、

机の前の椅子に座らせました。

 

席を蹴って

立ち上がるつもりだったエルナは、

別の椅子を持って来て、

隣に座ったビョルンの姿に驚いて、

つい、ボーッとしてしまいました。

驚いたエルナが瞬きしている間、

ビョルンはジャケットを脱いで

カフスボタンを外しました。

 

エルナは、

今、何をしているのかと尋ねました。

ビョルンは、

ペンの用意をするようにと告げると

ジャケットのポケットから取り出した

万年筆を指の間に挟んで

エルナを見つめました。

わけの分からない人でしたが

エルナは思わずペンを握りました。


ビョルンは、

蓋を開けていない万年筆の先で

ノートを叩くと、この三人を

隣の枠へ移せと命じました。

ビョルンが指したのは、

グレディス王女と

親交が深いと分類されている

三人の貴婦人の名前でした。

 

エルナは、

でも、この人たちは、

グレディス王女と親しい仲だと

聞いていると反論しました。

ビョルンは、

その通りだと答えました。

 

エルナは、

すぐにインクを付けることができず

ペンをいじりながら、

どうしてなのか。

人柄が優れているのかと、

自分なりに理由を推論して

慎重に尋ねました。

ビョルンは、

自分のお金を使った人たちだと

淡々と答えました。

ビョルンの返事には

いつものように

虚を突くところがありました。

 

しばらく躊躇いましたが、

エルナはインク瓶の中に

ペン先を浸しました。

力を入れて握ったペンの先が、

今この瞬間の心のように

ブルブル震えました。

お金を使った人々の名前を

移すことから始まった

図表の修正は、深夜まで続きました。

 

ビョルンがペン先で名前を指し、

エルナが、その名前を

命じられた欄に移す度に、

ビョルンは、

簡単で理解しやすい言葉で

その家門についての説明を

加えてくれました。

 

ビョルンが万年筆を置くと、

エルナもインクの瓶の蓋を

閉めました。

一方的に偏っていた

みすぼらしい図表は、

今ではかなり

バランスの取れた形になりました。

注意すべき名前は

依然として多かったけれど、

エルナの交友範囲に入った名前も

それに劣らず多くなりました。

 

エルナと目が合ったビョルンは、

詳しいことは、カレンに

きちんと教えてもらえと、

ため息をつくように言いました。

確信が持てませんでしたが、

エルナは、とりあえず

深く頷きました。

いつの間にか傷は薄れ、

馬鹿みたいなときめきだけが

残りました。

 

あなたはプライドもないと

自分を叱って見ましたが、

心は簡単には止まりませんでした。

 

エルナは、

簡単に顔を上げることができず

自分の手だけを見下ろしながら

お礼を言いました。

腹が立って、顔も見たくなかった

少し前の感情とは全く違う種類の

感情でした。

 

エルナは、

本当に頑張ると言いました。

ビョルンは

手でエルナの頬を包み込み、

彼女は、その手に導かれるまま

ゆっくりと顔を上げました。

 

ビョルンは、

そのような言葉は、

あなたの好きな言葉通り、

淑女らしく、顔を見て言えと

言いました。

体温に似た声には、

微かに笑いの気配が漂っていました。

 

やがて唇が少し曲がりました。

気軽に近寄り難い男の顔に

魅惑的な笑みが宿るこの瞬間が

エルナは好きでした。

もちろん、ビョルンは、

いつも意識的に笑みを浮かべていますが

それは、この瞬間の笑みと

決して同じではありませんでした。

 

エルナは、

自分の頬を包んでいる

ビョルンの手の上に、

そっと自分の手を置くと、

ラルスでは、静かに、

何もしないでいることが、

あなたとレチェンにとって

良いことでしょう?と尋ねました。

ビョルンは頷きました。

 

エルナは、

ラルスを離れた時から、

教わった通りに、一生懸命、

頑張ってみてもいいかと尋ねました。

今回もビョルンは頷きました。

 

エルナは、次の国ではビョルンが、

今ほど忙しくないですよね。

そうだといいと話しました。

 

ビョルンは、その理由を尋ねました。

エルナは、

一緒に旅行ができるように。

自分は生まれて初めて

旅行をしていると答えると、

目を閉じながら

恥ずかしそうに笑いました。

ビョルンは、だるそうに開いた目で、

そんな妻を見つめながら、

何がしたいのかと尋ねました。

エルナは、

話せば、一緒にやってくれるのかと

聞き返しました。

ビョルンは内容を聞いてからと

答えました。

確答でもないのに、エルナの顔は

喜びの光で明るくなりました。

 

彼女は、

外国の街を二人で一緒に歩きたいと

答えました。

ビョルンは、

それが一体何だって、

こんなに浮かれているのかと

少し拍子抜けましたが、

頷いて、納得してくれました。

 

エルナは、きれいな所で、

一緒に美味しい物を食べて

お茶も飲もうと言いました。

ビョルンは、

やりたいことはそれで全部かと

尋ねました。

 

考え込んでいたエルナの瞳が

再び弱い光で輝くと、

話をたくさんして仲良くしようと

答えました。

 

彼女なりに苦心して並べた願いが

あまりにも虚しいものなので、

ビョルンは、

つい笑ってしまいました。

 

ビョルンは、

柔らかいため息をつきながら

エルナの頬を撫でて、

「そうしよう」と返事をしました。

エルナは、花が咲くように

無垢で美しく笑いました。

雪が降る中、

エルナの手紙が届きました。

 

メイドが持って来た手紙を

受け取ったバーデン男爵夫人は、

急いで眼鏡を探し、

暖炉の前の肘掛け椅子に座りました。

手紙の知らせを聞いたグレベ夫人も、

関節炎で痛む足を引きずって

応接室にやって来ました。

 

エルナが

こんなに元気に過ごしていて

どんなに良かったか分からないと言って

バーデン男爵夫人は

満足そうな笑みを浮かべながら

読み終えた手紙を

グレベ夫人に渡しました。

 

ラルスからの手紙から感じられた

妙な違和感が消えると、

ようやく手紙が

エルナらしくなりました。

国境を一つ越えるごとに、

さらにそうなりました。

年が変われば、

また移動すると言っていたので、

今頃は、

次の国に行っているはずでした。

 

繰り返し読んだエルナの手紙を

男爵夫人に返しながら、グレベ夫人は、

お嬢さんは、本当に大公妃殿下だと

しきりに感嘆しました。

 

エルナが手紙に書いて来た

見知らぬ不思議な世の中の話を

交わしている間に、

メイドがお茶を出して来ました。 

 

バーデン男爵夫人は命がけで

断りましたが、

王室の意地を曲げることは

不可能でした。

結婚が決まった頃に

すでに始まった邸宅の修理は

早くに終わり、

使用人の数もぐんと増えました。

長年、名ばかりの御者として

生きてきたロイスにも、

自分の実力を発揮する

馬車ができました。

エルナのおかげで、

みすぼらしく荒れ果てていた

田舎の家は、立派な貴族の邸宅に

変貌しました。

 

グレベ夫人は、

あと数日で、

お嬢さんの誕生日だけれど、

他の場所でも

祝ってもらえるだろうかと

心配そうに尋ねました。

 

バーデン男爵夫人は

穏やかに微笑みながら、

エルナのそばには

世界で一番心強い家族がいるので

そうなるだろうと答えました。

グレベ夫人は、

確かに、二十歳の誕生日は

お姫様のように過ごすだろうと

言いました。

 

二人の老婦人は、

満足感と懐かしさのこもった目で、

静かに雪が降る窓の外を見つめました。

この頃になると、

エルナが祖母と祖父のために

大きな雪だるまを作って立てておいた

まさにその窓でした。

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マンガでは、

エルナが湖畔から戻ってすぐに

ビョルンがエルナの顔色が

悪いことに気づいたので、

グレディスと対峙したことで

エルナの顔色が悪かったのだと

思いました。

しかし、原作では、

湖畔から戻って来てすぐに

ノートのシーンになるのではなく

その前に無理して

ビョルンと一緒に夕食を取り、

それを吐いてしまったことが

書かれていました。

この時のエルナは、

娘狸との対峙で受けた心のダメージに

無理して食事をとって

吐いてしまったことで

体のダメージが加わり、

なおさら顔色が悪かったのですね。

でも、エルナは

なかなかビョルンと一緒に

食事ができないので、

無理をしてでも、一緒に

食べたかったのだと思います。

いじらしくて、健気だと思います。

 

ビョルンのお金を

使っているというのは、

ビョルンからお金を

借りているとうことですよね。

お金の借主は、

貸主を無下にできないでしょうから

エルナのことも

手ひどく扱わないはず。

さすがビョルンだと思いました。

 

エルナが

ビョルンにお願いしたことは

些細なことかもしれませんが、

ビョルンとは、

デートさえしたことがなかったので

普通の恋人同士がすることを

やってみたかったのだと思います。

 

バーデンのおばあ様は、

エルナの異変に

気付いていたのですね。

マンガだと、いきなりフェリアに

飛んでしまいましたが、

そこへ行くまでに、

エルナが少しずつ元気を取り戻せて

良かったと思います。

 

それと、

前話のmidy様のコメントの中で
ビョルンが跪いて公然と

エルナにプロポーズしたことが

グレとは大きく違うということに

同感です。

国王が結婚を認めたのだから、

きちんと求婚書を送ることが

できたはずなのに、

病院へ行ってプロポーズするなんて、

王族の常識から外れている。

それなのに、なぜ、ビョルンは

そのような行動を取ったのか。

もしかしたらビョルンは、

パーベルが、

バーデン男爵夫人の入院費を

払っていると聞いて、

このままでは

エルナを先に取られると思い、

すぐに

行動に移したのではないかと

思いました。

花瓶の赤いバラを

持って行ったのは、愛する女性に

手ぶらでプロポーズしてはいけないと

本能で感じたのかもしれないと

思いました。

***********************************

いつもたくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

kumari様の63話へのコメントの中の

付録『問題な王子様の女性陣』

見事に女性たちを漢字で表現している

kumari様の感性の豊かさに

感動しました。

グレディスの墓碑銘に

強欲恥不知無責任桃鈴蘭魔女と

書きたくなりました。

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