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泣いてみろ、乞うてもいい 47話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ 見慣れない顔

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47話 子供たちがボートで出かけたのをレイラが眺めていると・・・

 

白い山鳩が

川の向こうから飛んで来ました。

「フィービー?」

レイラは信じられない思いで

呟きました。

鳥がバルコニーの手すりに止まると

レイラは、確信に満ちて、

「フィービー!」と呼びました。

山鳩の片足には、

赤い糸が結ばれていたので、

間違いなく、レイラの伝書鳩でした。

 

レイラは驚愕し、

ここへ何しに来たのかと尋ねると

フィービーが座っている

手すりの前に近づきました。

 

カイルが去り、手紙を配達した

フィービーの役割も終わったので、

今は、ただレイラが愛する鳩として

一緒に生きていくだけでした。

公爵が鳥を狩る日は、鳥かごの中に

閉じ込めなければなりませんでしたが

その他の日は、自由に

アルビスの森を飛び回っていました。

 

レイラは、

ここへ来てはいけない。 ここは・・・

と言うと、警戒心に満ちた目で

公爵の方をチラッと見ました。

川の水を眺めていた公爵の視線も

レイラに向けられました。

 

「フィービー」と彼が口ずさむと

レイラは息を呑みました。

彼は、

その鳥の名前はフィービーだったのかと

尋ねました。

レイラは返事の代わりに、

フィービーを知っているのかと

公爵に尋ねました。

マティアスは「さあ」と呟き

少し頭を傾げると、

一度、鳩に聞いてみるように。

君は鳥の心を知っているはずだと

答えました。

 

レイラは言葉が続けられなくて

眉を顰めました。

適当な言葉を見つけられないのか、

唇だけを噛む姿に

マティアスはかなり満足しました。

 

レイラは、彼に話を聞かれるのを

心配するかのように、完全に背を向け

まるで本当に鳥と言葉が通じるように

鳥に囁きました。

あまり良い言葉でないということは

聞かなくても明らかに分かりました。

 

フィービーは、

すぐに川の向こうに飛んで行きました。

レイラは、鳥が見えなくなってから

ようやく元の場所に戻りました。

依然として、マティアスを見る目からは

警戒心がにじみ出ていました。 

 

じっと彼を見つめていたレイラは

フィービーが、

ここにむやみに出入りすることについて

自分が代わりに謝ると、

突然、突拍子もないことを、

切り出しました。

 

マティアスは、

鳥の代わりにが君が謝るのかと

嘲笑うように聞き返しましたが

レイラは、

なぜフィービーがここに来るのか

分からないけれど、

このようなことがないように

自分がしっかり訓練してみるので

フィービーを撃たないで欲しいと

真剣に答えました。

 

その声は震え、

疑問と混乱が消えた目には、

ただ恐怖だけが色濃く残っていました。

じっと、その目を覗き込んでいる間に

マティアスの片方の口の端に

留まっていたひねくれた笑みが

消えました。

 

沈黙が長くなると、

レイラは、さらに切迫した口調で、

アルビスの主人は公爵様だけれど

それでもフィービーは・・・と

プライドが傷ついても哀願しました。

しかし、その途中で、

会社の弁護士が電話で話したいという

伝言を侍従が伝えに来たので、公爵は

しばらくバルコニーを離れました。

 

レイラは窓越しに見える公爵の姿から

なかなか

目を離すことができませんでした。

彼が撃った無数の鳥たちの恐ろしい姿が

しきりに浮び上がりました。

フィービーを撃たないという

確答を聞くまでは、

とても安心できませんでした。

 

しばらくして、

マティアスは戻って来ました。

できれば、彼と目を合わせないように

努めていたレイラは、

今日はしつこく彼を見つめ、

再び、彼に哀願しようとしましたが

マティアスは、

君の鳥は面白くないと、

落ち着いた言葉で、

面倒くさくて煩わしい哀願を

遮りました。

 

レイラは息を呑んで、

それはどういうことかと尋ねました。

マティアスは、

逃げない獲物はつまらないと

答えました。

レイラは、

それでは撃たないのかと、

希望を込めて慎重に尋ねると、

レイラの瞳が一層明るく輝きました。

 

どれだけ、

じろじろ見ていることか。

レイラが、このアルビス

滞在するようになってから、

このように長く、あの子と

目を合わせた日は

なかったようでした。

 

マティアスは、視線をそらすことなく

どう思うかと聞き返しました。

あの伝書鳩

狩る気などありませんでしたが

このまま確答したくありませんでした。

自発的に、彼に何かを願って頼みながら

縋って来るレイラを見るのは

初めてだからでした。

 

レイラは、

撃たないと思うと答えました。

マティアスが、その理由を尋ねると

レイラは、

公爵様は紳士だからと答えました。

 

泣き言をぺちゃくちゃ喋る時だけ

紳士が出てくる。

非常に不埒で途方もない返事に、

マティアスは呆れて失笑しました。

それに不安を感じたのか、レイラは、

公爵は、

つまらない狩りをする人ではないと

思うと、急いで付け加えました。

マティアスが、

「そう?」と聞き返すと、レイラは

カルスバル最高の名射手であり

紳士である公爵様は

確かにそうだと信じていると

答えました。 

 

じっとそんなレイラを見ていた

マティアスが笑い出しました。

後ろに下がっていた侍従たちは

目を丸くして

互いに見つめ合いました。

一番近くで公爵を補佐している

随行人マーク・エバースは

誰よりも驚きました。

 

ヘルハルト公爵が見せる

笑いのほとんどは、

礼儀をわきまえた微笑や軽い失笑で

マークの記憶が間違っていなければ、

公爵は、幼い少年だった時代にも

このように愉快に笑うことは

めったにありませんでした。

 

下流に向かっていた船が

離れの方に船首を向けました。

子供たちが楽しそうに笑って騒ぐ声が

孔雀の優しい笑い声と混ざって

聞こえて来ました。

 

レイラは、確答を求めるかのように

切実な眼差しを送りましたが、

マティアスは、

なかなか答えませんでした。

焦ったレイラが、

しきりに唇を動かすのを

ゆっくりと見守るだけでした。

 

結局、レイラが

「あの・・・公爵様?」と

先に口を開きました。

目つきと声は震えていましたが、

いつもの、怖さに怯えている姿とは

違いました。

慎ましやかな期待感で上気した頬と

彼の些細な表情と身振り一つも

逃さないように集中している目つきと

優しい態度が、

かなりいいと思いました。

 

マティアスは返事をするのを止めて

呼び鈴を鳴らしました。

短い命令を受けた侍従は、

急いで応接室へ行き、

タバコと灰皿を持って来ました。

 

残念なことは

言われたくないけれど、

レイラは公爵の返事を切望しました。

 

フィービーは、

産毛がふわふわしていた時代から

育ててきた鳥でした。

何よりもフィービーは

レイラとカイルが一緒に過ごした

美しい時代の

象徴のような存在でした。

その時代には、

もう永遠に戻れないとしても、

フィービーだけは

失いたくありませんでした。

 

マティアスがタバコを吸うと

その煙の間からレイラが見えました。

ひたすら彼を見つめ

せがんで懇願するその視線が

それほど嫌ではありませんでした。

永遠に、

この瞬間が続いても良いという

やや荒唐無稽で情けないことを

考えたりもしました。

でも今は、

この辺にしておくべきだろうと

思った彼は、軽く頷くと、

レイラの瞳から喜びが満ち溢れました。

 

レイラは騙されて生きて来たのか

本当にフィービーを

撃たないのですよねと、

かなり執拗に念を押しました。

 

マティアスはレイラから目を逸らすと

タバコの灰を払い落としました。

その行動を

注意深く見守っていたレイラは、

これ以上、せがむことなく退きました。

二人きりの時の約束なら、

すぐに公爵を

信じることはできませんでしたが

他の使用人たちも一緒にいるところで

約束したことだから、

むやみに破らないだろうと

思いました。

レイラは、

マティアスのことをよく知らず、

知りたい気持ちもなかったけれど、

その程度の確信は

持つことができました。

 

ようやく安心できたレイラは、

安堵のため息をつき、微笑みながら

手すりの向こうの川の水を

見つめました。 

フィービーを、大切な記憶を守った。

安堵感が増すと、レイラの笑顔は

さらに明るくなりました。

 

その見慣れない顔を発見した

マティアスは目を細めました。

鳩一羽の安危を保障することが

どうして、あんなにもいいことなのか

全く理解できませんでしたが、

マティアスは、その顔から

目を離すことができませんでした。

 

正体不明の苛立ちと不安が

沸き起こりました。

飢えのようでもあり、

満腹感のようでもありました。

その不快で奇妙な気分は、

鮮やかな色彩で染まった

この季節のように明瞭なようで、

目を開けた瞬間に忘れてしまった

昨夜の夢のように曖昧でした。

 

マティアスは、

タバコを灰皿に投げ入れました。

楽しめないタバコを吸ったせいか

喉が渇きましたが、グラスの代わりに

新しいタバコを手に取りました。

火を点けないまま、

指の間に軽く挟んだタバコの先が

風に揺れました。

 

マティアスの視線を感じたのか

レイラが振り向きました。

依然として笑顔が残っていました。

怒りと恐怖より、恥辱と涙より

はるかに鮮やかに輝く何か。

 

マティアスが、その名を

じっくり考えている間に、

レイラは慌てて笑みを消しました。

ぎこちなく目を逸らし、

頭も深く下げてしまいました。

マティアスは、

かなり屈辱的な気分を味わいました。

侮蔑感。今は確かに知っている、

あの女が教えてくれた

その感情でした。 

 

マティアスは

思わず苦笑いしました。

もう目的を達成したから、

これ以上、自分の歓心を買う必要は

ないのだろうか。

レイラ・ルウェルリンが

こんなに腹黒いことをするなんて

荒唐だけれど、一方では、

かなり可愛くもありました。

もちろん、あっという間に

元の姿に戻ってしまった

あの女を見るのは不愉快だけれど。

 

マティアスは、

しっかりと握っていた

火の点いていないタバコを、

そのまま灰皿に捨てました。

日光のような笑いが消えた場所には

濃い影が残りました。

マティアスは、

あまり嬉しくありませんでした。

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子供たちを学校へ連れて行き、

無事に、おのおのの家に帰らせると

秋の遠足は終わりました。

 

一日中、緊張したまま

力を尽くしていたことを、

ようやく悟ったレイラは、

突然訪れた疲労感に

全身がだるくなりましたが、

それでも、

初めての遠足がうまく行ったので

心は満足していました。

 

最も心配していた変化要因である

ヘルハルト公爵が、

秋の遠足の最大の成功要因に

なってくれたという事実は

少し皮肉でしたが。

 

一緒に歩いていたグレバー先生は、

当分は、ブラント家の令嬢を

この世で一番羨ましく思うだろう。

あの美しい男と領地の両方を

手に入れるなんて、

世の中は、本当に不公平だと思うと

ため息をつきながら話しました。

そして、あの二人は

いつ結婚するのかと尋ねました。

レイラは、

来年の夏頃だと聞いた気がすると

答えました。

 

グレバー先生は、

帝国中が騒ぐ結婚になる。

本当に羨ましいと感嘆すると

レイラは、適当に笑って答えました。

 

二人は、

繁華街の分かれ道で別れました。

レイラは食料品を買って

アルビスへ向かいました。

たくさん助けてくれた

ビルおじさんのために、

美味しい夕食を

プレゼントするつもりでした。

 

ビルおじさんが好きな食べ物を

たくさん作ってあげよう。

気が急いたレイラの足取りが

速くなりました。

アルビスに続く道に入ってからは

走るように歩きました。

しかし、その道の途中で、レイラは、

反対側から

エトマン夫人が歩いて来るのを見て

立ち止まりました。

彼女も、ほぼ同時に足を止めました。

食料品の袋を抱えたレイラの指が

白くなりました。

 

何が最善なのか、いくら考えても

目の前が真っ暗でした。

知らないふりをして通り過ぎるのも

平然と挨拶を交わすのも滑稽だったので

レイラは悩んだ末、何も言わずに

頭を下げました。

エトマン夫人も、

沈黙しながら頷きました。

 

しかし、その後、彼女は、

結局、こうなったけれど、

自分は本当に後悔していないと

レイラを直視しながら、

ため息をつくように言いました。

敵意も罪悪感もこめられていない目が

乾いた落ち葉のように

パサパサして見えました。

 

エトマン夫人は、

自分の評判が地に落ちて

カイルと気まずくなったとしても

二人の結婚を阻止したから

自分はそれでいいと、

疲労感のこもった声で、

淡々と言葉を吐き出しました。

 

むしろエトマン夫人が

悪態をついてくれた方が

良かったのではないか。

彼女の一言一言が、

鋭い破片のように

レイラの心に刺さりました。

 

話を終えたエトマン夫人は

レイラの横を通り過ぎました。

遠く離れた所に、

困った顔で立っていた家政婦も、

小走りしながら

彼女の後を追いました。

 

レイラは、

慰めと憐憫が込められた目で

自分を見る彼女に短く黙礼すると

広い歩幅で、たくましく、

堂々と歩きました。

しかし、ある瞬間、レイラは

ゼンマイが切れた人形のように

止まってしまいました。

 

レイラは、

両足を見て、広げた手を動かし、

ゆっくりと息を吐きました。

自分が人間であるのは

間違いないのかと思いました。

 

無意識のうちに思い浮かぶ

自己恥辱感を消す一種の儀式のように

そっと閉じていた目を開けた

レイラは、

ビルおじさんが待っている家に向かって

小走りし始めました。

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いつも、たくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

ぺこちゃん様、メロンパン様

私も、レイラとマティアスが

二人だけになって、

彼が何かやらかすのではないと

思っていたのですが、

他の侍従とマーク・エバースがいて、

レイラがマティアスに

笑顔を見せて、

マティアスまで笑う展開になるとは

思ってもいませんでした。

 

何となくマーク・エバースは

若い人だと思い込んでいましたが

マティアスの子供の頃を

知っているということは、

40歳は過ぎているのかな?と

思いました。

 

子供の頃から、

愉快に笑ったことがないなんて、

苦労したことがないマティアスは

楽しいということが何なのか

よく分かっていないのではないかと

思いました。

 

泣きながらマティアスに乞うより、

喜んで笑っているレイラを見る方が

良いことだと分かったのに、

マティアスは

レイラを笑顔にする方法を

知らないのですよね。

マティアスの苦難は続く。

そして、彼に苦しめられる

レイラの苦難も・・・

 

自分の評判が地に落ちて

カイルと気まずくなったとしても

二人の結婚を阻止したから

自分はそれでいいと

エトマン夫人は言っていますが

本当にそれで良ければ、

レイラを無視すればいいだけのこと。

けれども、レイラに

自分は後悔していないと言うことで

暗に、今の自分の境遇を

慰めているのかもしれないですし

レイラを逆恨みし、

彼女を痛めつけることで、

憂さを晴らしているように

思えました。

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