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泣いてみろ、乞うてもいい 51話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ 差出人不明の小包

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51話 レイラを捕まえたマティアスは、彼女に、どこへ行くのかと尋ねました。

 

ヘルハルト公爵は狂っている。

レイラは、しばらく忘れていた

その明確な事実を思い出しました。

 

マティアスは、

ハアハア息をするだけの

レイラの髪の毛を引っ張り

「答えろ」と要求すると

再び微笑みました。

 

猛烈な勢いで

追いかけて来た時とは違って

それほど、

乱暴な手つきではないものの

レイラには、

それに気づくほどの余裕が

ありませんでした。

彼女には、

髪の毛をつかまれたという

恥辱感と恐怖しかありませんでした。

 

レイラの名前を呼ぶマティアスの声が

さらに低くなりました。

レイラは

後ろに下がろうとしましたが、

木に遮られて無理でした。

あれほど速く走って来たのに、

公爵の呼吸は、

すでに安定していましたが、

レイラの胸は、依然として

激しく上下しました。

その度に、より鮮明に感じられる

大きくて硬い体の感触が、

レイラを、さらに困らせました。

レイラは、

公爵の肩を押し退けようと

必死になりながら、

どうして自分にこんなことをするのかと

唇を震わせながら尋ねました。

両腕の力だけでは、

どうにもならないので、

レイラは力いっぱい

体を捻ってみました。

しかし、呆れたように

レイラを見下ろしていたマティアスは

体重をかけて

レイラを押さえつけました。

 

密着した体が与える恐怖に

レイラが凍りつくと、

マティアスは、

一層満足そうな表情をし、

「質問ではなく、答え」と

要求しました。

そしてレイラが睨みつけても、

マティアスは喜んで彼女と向き合い

返事をしろと要求すると、

レイラの髪の毛を

ゆっくり撫でました。

その柔らかい感触のおかげで、

先週一週間続いた不快感が

やや和らぎました。

そのおかげか、

反抗するように口を固く閉ざしている

レイラのことも、それほど

気にならなくなりました。

 

マティアスは、

淑女が返事をしなかったり

口を開かなかったりすると思うのかと

尋ねました。

それでもレイラが返事しないと、

髪を握っているマティアスの手に

徐々に力が入りました。

 

不吉な予感がしたレイラは

ムッとしながら、

公爵の言っていることが

よく分からないと言いました。

 

マティアスは、

手紙が届いていないのかと尋ねました。

レイラは、

自分の知らないことだと答えました。

 

不安に揺れているレイラの瞳を

見つめるマティアスは、

さらに微笑むと、

よく考えてから言った方がいい。

手紙一つ、まともに運べない

役に立たない伝書鳩

自分がどうすると思うかと尋ねました。

 

その言葉にギョッとしたレイラは

絶対にフィービーを撃たないと

約束したではないかと叫びました。

マティアスは、そうだったっけ?と

聞き返しました。

そして、目つき一つ隠せない女の

生半可な嘘に、マティアスは、

自分も、君が何を言っているのか

よく分からないと、

もう少し意地悪を言いました。

カッとなって睨んだのも束の間、

レイラは震える睫毛を下げて

謝りました。

マティアスは

何に謝っているのかと尋ねました。

レイラは、

もう知っているはずだと答えました。

マティアスは、

手紙を無視して、逃げて、

嘘をついたことかと尋ねました。

一つ一つ指摘する度に

レイラの肩が震えました。

おとなしくなると、きれいだけれど

目を見られないのは

嬉しくありませんでした。

 

マティアスは、

謝るのは、そこまでにしてと言うと

人差し指で、レイラの顎を上げました。

割れ物を扱うように、

慎重な手つきにもかかわらず、

レイラは驚いて身震いしました。

 

もちろん、マティアスは

気にしませんでした。

目を合わせたという満足感は、

ちょっとした

すっきりしない気持ちを圧倒するほど

大きかったからでした。

 

マティアスは、

失くしても平気なところを見ると、

あの万年筆は、

大切なものではないようだと

指摘しました。

 

レイラは、

もちろん大切だけれど、でも・・・と

言葉を濁し、顔を背けようとしました。

マティアスは、手で小さな顎を包み、

視線を引き寄せました。

会話が途切れることも、

目を避けることも

マティアスは望みませんでした。

 

髪の毛と顔を

しっかり掴まれたレイラは、

諦めたように、ため息をつくと

永遠の夏のように美しい

エメラルド色の目で

マティアスを見つめながら、

自分は本当に

公爵を理解することができない。

どうして、しきりに

自分の物を盗んで行くのかと

泥棒を叱るような口調で尋ねました。

 

マティアスの眉が

そっと上がりました。

ヘルハルト公爵を泥棒扱いする人は、

この帝国中を探しても

レイラ・ルウェリンだけだろうと

思いました。

あまりにも呆れて笑いが出ました。

 

マティアスの黒髪と青い目を

じっと見つめていたレイラは

全く、本当にカラスではないかと

鋭く言い放ちました。

 

マティアスは、

カラスという思いがけない言葉に

眉を顰めました。

レイラは、

もうなるようになれと思ったのか、

自分の物を盗んだのも、

悪いことをしたのも公爵なのに、

どうして、毎回、自分が訪ねて行って

返して欲しいと

懇願しなければならないのか

分からない。

それは不公平なことではないかと

主張しました。

怒るレイラの声は、普段より高いせいか

その響きが、さらに澄んでいて

聞きやすいので、マティアスは

喜んで耳を傾けてやりました。

 

威勢のいいレイラを見ていた

マティアスは、

口の端をそっと上げて、

それでそうしたのかと尋ねました。

レイラは、一瞬、

馬鹿にされたような気分になり

思わず言葉に詰まりました。

持てる限りの勇気を振り絞って

抗弁しましたが、

公爵は、終始、嘲笑しました。

 

一体、これはどういうことなのか。

レイラが口を開こうとした瞬間、

マティアスが

レイラの名前を呼びました。

無謀な闘志が消えた変わりに

言いようのない変な気分になりました。

 

返事をする言葉が見つからず、

もたもたしていたレイラは

慌てて目を下ろしました。

 

公爵は、

今回はもう少しゆっくり、

歌を口ずさむように

レイラの名前を囁きました。

 

レイラが首をひねると、

片方の耳が公爵の胸に触れ、

心臓の鼓動が微かに聞こえました。

もしかしたら、自分の心臓の鼓動も

そのまま、彼に

伝わっているかもしれないと思うと

レイラは、この瞬間が

あまりにも耐え難くなりました。

 

レイラは血の気が失せて固まった手で

前に立ちはだかっている公爵の肩を

再び押しました。

無意味な努力でも

しなければなりませんでした。

 

マティアスは勝てないふりをして

一歩下がると、レイラは

堪えていた息を吐き出しました。

臆病なのに大胆不敵で

柔順だけれど負けん気がある。

あれこれ理解しにくい女だけれど

とにかく面白いので

見守る楽しさがありました。

 

そして、息を吹き返したレイラが

突然、万年筆を返してと言うと

マティアスは、

声を出して笑ってしまいました。

やはり、

期待を裏切らないと思いました。

 

マティアスは呑気に

万年筆はない。捨てたと答えました。

レイラが「何ですって?」と

聞き返すと、マティアスは、

必要ないから、

取りに来ないのだと思ったと

答えました。

 

レイラは、

それなのに、どうして自分を

こんな風に・・・と尋ねると、

マティアスは、

それでも教えてやらなければ

いけないのではないか。

自分は紳士ではないかと、

それが当然だろう?と聞き返すように

肩をすくめると、

まだ手にしている髪を

ゆっくりと撫でました。

 

そして、自分は、

ルウェリン先生が認めた

このカルスバル最高の紳士だと言って

手から力を抜くと、レイラの髪の毛が

するすると流れ落ちました。

 

レイラは公爵を睨みつけながら

後ずさりしましたが、間もなく

悲鳴を上げて、よろけてしまいました。

最後の一握りの髪の毛が

抜け出そうとした瞬間、

突然、マティアスが、

手に力を入れたからでした。

 

マティアスは、

そうだろう?と確認しました。

涙が出そうなくらい

ヒリヒリした痛みに襲われた

レイラを見ながらも、

彼は楽しそうな表情でした。

 

レイラは心の中で

再び、狂っていると繰り返すと、

公爵に捕まっている髪の毛を

引き抜こうと努めました。

しかし、マティアスは

握り締めた髪の毛を振りながら

クスクス笑いました。

 

この人が

ヘルハルト家の主人だなんて!

そろそろアルビスの未来が

心配になる瞬間、突然、公爵が、

髪の毛を離してしまったため

レイラの体が後ろに傾きました。

 

公爵の笑い声が聞こえて来るかと

思ったら、

急速に傾いていた風景が

ピタリと止まりました。

腰を抱き抱えた腕を感じた後、

レイラは、

自分が公爵の胸に抱かれた形で

彼を見上げていることに

気づきました。

 

噛みつくしかないのか。

追い詰められたネズミになった気分の

レイラが眉を顰めた瞬間、

公爵は、何気なく

彼女を放してやりました。

その無情で、とぼけた顔が

再びレイラを、ぞっとさせました。

 

彼から逃れたレイラは

小川の方へ素早く逃げましたが

マティアスはじっと立って

腕時計を確認しただけでした。

 

レイラは、

あの言葉は取り消す。

公爵は、絶対に紳士ではないと

怒って叫びました。

 

マティアスは、

急に評判が悪くなったと言って

再び声を出して笑うと、

レイラの頬はさらに赤くなりました。

 

レイラは、公爵が紳士なら、

自分は女王だと叫ぶと

卑屈に公爵を持ち上げた自分のことさえ

憎くなりました。

 

公爵は、

たかがそれだけのことかと

言うかのように、

乱れたコートの襟を整えました。

そしてレイラに向かって、

まるで女王に謁見する臣下のように

挨拶しました。

この上なく優雅で丁寧な

その身振りが与えた侮辱感が

レイラの頭の中を真っ白にしました。

 

彼女は、

猛獣のように追いかけて来ては

ひどく苦しめ、

このように美しい方法で侮辱した後に

去っていく男を、

ぼんやりとした目で見守りました。 

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離れの前に到着した時、

すでに車が待機していたので、

マティアスは、

そのまま車に乗り込みました。

離れを出た瞬間の、苛立ちと不快感は

もはや、

跡形も残っていませんでした。

 

公爵を乗せた車は、

川沿いの道を走り始めました。

しばらく川を眺めていたマティアスは

すぐに、

随行人が座席の横に置いておいた

書類と手紙に視線を移しました。

微かに笑みが残っていた瞳は、

すぐに本来の光を取り戻しました。

しかし、

ジャケットのポケットに差した

万年筆を取り出した瞬間、

再び、マティアスの口の端が

そっと曲がりました。

 

レイラ・ルウェリン。

刻印された金色の名前が、

午後の日差しの中で輝きました。

指先でゆっくりと

万年筆を撫でていたマティアスは、

軽く笑うとキャップを外しました。

ペン先のガリガリいう音が

車内を埋め尽くした日光の中に

染み込みました。

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レイラは、学校に来た郵便配達員から

小さな小包を手渡されました。

レイラは、不思議そうに

それを受け取りました。

家ではなく学校に届いたのも

おかしいし、差出人の名前と住所も

見覚えがありませんでした。

 

郵便配達員は、

間違って配達されたのかと尋ねましたが

レイラは否定し、

微笑みながら首を横に振りました。

誰なのか分からない人が

見知らぬ所から送って来ましたが、

受取人は、

間違いなくレイラでした。

 

レイラは郵便配達員にお礼を言うと

急いで校舎の中に戻りました。

郵便物を受け取って配るのは

最年少教師のレイラの役割で、

校長室から隣の教室まで、

郵便物を配ると、休憩時間が

ほとんど終わってしまいました。

 

教室に戻ったレイラは

机の前に座って小包の包装を開くと

細長い箱一つが姿を現しました。

短いメモ一枚もありませんでした。

 

レイラはもう一度、

差出人の住所と名前を確認しましたが

やはり、

聞いたことのない場所と名前でした。

 

首を傾げながら箱を開けたレイラは

「あっ」と驚嘆の言葉を漏らしました。

箱の中には金の装飾が入った

黒い万年筆が一本置かれていました。

それを見た瞬間、レイラは、

誰が、一体、どういう理由で

これを送ったのか、

全てを理解しました。

週末の騒乱が鮮明に思い浮かぶと

レイラは思わずため息をつきました。

彼女の物とは比べ物にならないほど

高そうな物でした。

 

レイラは

慎重にその万年筆を取りました。

蓋には、公爵が捨てた万年筆のように

レイラの名前が刻まれていました。

 

授業開始を知らせる鐘が鳴ると、

廊下と校庭で遊んでいた子供たちが

教室に駆け込んで来ました。

レイラは万年筆を再び箱に入れると、

机の引き出しの奥深くにしまいました。

ただの希望に過ぎないけれど、

できれば、あの日の記憶も

そこに、しまいたいと思いました。

 

レイラは満面の笑みを浮かべて

教壇の前に立ち

授業の開始を告げました。

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いつもたくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

今回のお話のおかげで、

カラスが、幼鳥の頃、

目の色が薄い青色であることを

知ることができました。

 

マティアスは、

レイラの万年筆を盗んだのではなく

彼女が拾い忘れた物を拾って

持ち帰っただけだけなのですが

それを自分の物のように使う

マティアスのことを、

気持ち悪いと思ってしまいました。

マティアス推しの方、

申し訳ありません。

 

眼鏡はレイラの視力に合わせて

作ってあるので、返してあげないと

レイラが困るだろうけれど、

万年筆ながら、代わりの物を

あげられる。

だから、マティアスは、

万年筆を捨てたと嘘をついて、

レイラの万年筆を、

自分の物にしてしまったのでしょう。

 

マティアスは、

今まで、恋をしたこともないし

欲しい物を

手に入れられなかったことなど

一度もないから、

このようなことしかできないのだと

今は、思うことにして、

いつかマティアスが変わる日が来るのを

待ちたいと思います。

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