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問題な王子様 29話 ネタバレ 原作 あらすじ マンガ 22、23話 田舎娘への親切心

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29話 エルナはボートレースを観戦しに来ています。

 

レオニード皇太子の率いるチームが

今年も優勝しました。

皆の予想通りにもかかわらず、

熱烈な歓声が沸き起こりました。

疲れ果てた姿で

荒い息を吐きながらも、

皇太子は観衆にお礼をすることを

忘れませんでした。

澄ました表情で

ひそひそ話をしていた

貴賓席の女性たちも、

甲高い悲鳴に近い歓声で

皇太子の勝利を祝いました。

 

エルナは、

その不思議な光景を見物するのに

夢中になりました。

生まれて初めて見た

ボートレースは面白く、

村の池で、田舎の少年たちが

乗って遊んでいた、いかだ程度を

予想していたエルナは

相当な衝撃を受けました。

数え切れないほど多くの人々が

醸し出す活気と

にぎやかな祭りの雰囲気も同様でした。

 

適当な時を見計らって

席を外すという計画を忘れたエルナは

授賞式会場に移る人波に混じって

芝生を横切りました。

 

しかし、

優勝トロフィーを持ち上げた

レオニード皇太子のチームを

見物していたエルナは、選手たちの、

膝丈より短いズボン姿が恥ずかしくて

視線を避けました。

そのようなものが存在することに

エルナは衝撃を受けました。

 

むき出しの四肢を避けるためには、

やむを得ず、体の中心を

見なければならないけれど、

それはそれなりに

とんでもないことなので、

結局、エルナは首を左の方へ

回しました。

よりによって、そこに

ビョルン王子が立っているという

事実に気づいたのは、彼と再び

目が合ってしまった後でした。

 

驚いたエルナが無意識的に

後ずさりすると、

ビョルンは眉を顰めて

短い笑いを漏らしました。

日光を浴びた顔が

清々しく輝きました。

あれほど「毒キノコ王子」と

罵りながらも、

新聞や雑誌に掲載された写真を

切り抜くメイドたちの二面性を

理解できそうな気がしました。

 

ぼんやりしていたエルナは

突然、割り込んで来た

自分を呼ぶ子爵夫人の声に、

ハッとしました。

驚いて目を上げると、

宮殿の庭園を移動する

観衆が見えました。

これから

祝賀パーティーが始まるようでした。

 

本当に鈍い。

一体いつになったら、

きちんとした淑女になれるのかと

小言を言う瞬間にも、

子爵夫人の顔には

優しい笑みが浮かんでいました。

遠くから見れば、

間違いなく、親しそうに

談笑を交わす姿のはずでした。

 

ここの人たちの礼儀作法を

まだ、よく理解していないけれど

エルナは反論しませんでした。

あと一週間で終わると思えば

家族ではない家族と、

悪意ある噂からくる人々の視線、

そして、この不思議な気持ちまで

いくらでも我慢できました。

エルナは、ハルディ一家の後を

追いかけました。

貴賓のパーティーが開かれている

宮殿の庭園は、

華やかな笑いと音楽の音で

にぎわっていました。

 

一口も飲んでいない

シャンパングラスを置いた

グレディスは、悔恨の目で、

夕日に染まった庭園を眺めました。

 

ビョルンと、

短い新婚生活を送ったのは

首都の王宮でしたが、

より身近に感じるのは

シュベリン宮でした。

ここで夏を過ごした幼い頃の思い出が

詰まっているからでした。

 

時間を戻すことができたら

どんなにいいだろうか。

友達と一緒にいるビョルンの姿が

目に入って来ると

グレディスの目頭が、

一層、赤くなりました。

彼らは、

ハルディ家の令嬢のいる方を

チラッと見て笑い、騒ぎ立てるのに

余念がありませんでした。

 

ビョルンは、

その会話に時々笑いを添えたり

その女性をチラッと見る程度に

応じていました。

 

グレディスは

彼の視線を受けている女性を

注意深く見ました。

マイアー伯爵夫人は、

ハルディ家の令嬢を

あちこちの男に見せていました。

確かに噂のように美しい淑女でした。

 

ビョルンが興味を持つに値すると

客観的に判断すると、

胸がズキズキし始めました。

嫉妬のようなことをする立場に

決してなれないということを

よく知っているのに、なかなか

気持ちは止まりませんでした。

 

ラルスの王女が、

レチェンの王太子妃になることは

公然の事実で、その予想通り、

グレディスは

レチェンの王太子と婚約し、

その二年後に

盛大な結婚式を行いました。

 

考えてみれば

最初から愛があったのに、

愚かにも、

愛が存在する余地のない

関係だと思っていました。

 

ビョルン王子より美しく高貴な男は

この世のどこにもいないはずなので

彼の花嫁になることを、

グレディスは、嬉しくて

誇らしく思っていました。

ただ、その時のグレディスは幼く、

絶対的な愛の中で育った

幼い王女にとって、

彼はあまりにも不慣れで

難しい存在でした。

 

ビョルンが常に笑みを浮かべ、

優しい態度を取っていても、

グレディスは彼のそばにいると、

なぜか、いつも自分が、

あまりにもつまらない

存在のように感じられました。

 

ビョルンは、

王太子妃が誰であろうと

差支えない人で

他のどんな女性が婚約者になっても

ビョルンは同じように親切に

微笑んでいたはず。

それに、グレディスが気づいたのは

すでに、二つの王国で

婚約が公表されてしまった後でした。

いつでもどこでも、

最も特別な存在として羨望されてきた

グレディスにとって、

耐え難い屈辱でした。

 

彼は、暴力的に煌びやかな

真夏の太陽のように、自分の光で、

世の中の他の全ての光を消してしまう

男でした。

その光の中でグレディスは

つい道に迷ってしまいました。

 

あの可哀そうなお嬢さんは、

はたしてそれを知っているのか。

グレディスは、哀れみに満ちた目で

エルナを見ました。

 

ちょうどレマン伯爵から

逃れた彼女は、木の下で

息を整えていました。

固まっていた顔に笑みが浮かぶと、

さらに幼くて柔順な印象でした。

 

ルイーゼが、ため息混じりの声で

グレディスを呼ぶと、

彼女は驚いて、顔を向けました。

テーブルを囲んで談笑していた

貴婦人たちの憐憫に満ちた視線が

いつのまにかグレディスに

集中していました。

彼女の頬のあたりが、

微かに赤くなりました。

 

ルイーゼは眉を顰めながら、

あんな女のことは気にするな。

兄も本気ではないはずだと

忠告しました。

愁いに満ちたグレディスとは対照的に

エルナは無邪気な顔で、

興奮した子供のように

辺りを見回していました。

 

ルイーゼは、

あんなスキャンダルを起こしておいて

どうして、あんなに恥知らずなのかと

エルナを非難しました。

ところがグレディスが席を立ったので

目を丸くしました。

グレディスは

挨拶するだけなので大丈夫だと

言いました。

 

ルイーゼは、

なぜ、グレディスがあの女と

挨拶をするのかと抗議しましたが

グレディスは、

その方が自然だし、

ずっとハルディさんに、

そっぽを向いてばかりいるわけには

いかないからと返事をすると

引き止めるルイーゼの手を振り払い

エルナに向かって

ゆっくりと近づき始めました。

そわそわしながら、

互いの顔色を窺っていた

テーブルの貴婦人たちも、

慌てて王女の後を追いました。

 

予期せぬ状況に驚いて

ざわめき始めた見物人たちの視線が

木の下に集中しました。

王女が近づいてくることを

全く知らないエルナは、

依然として

パーティーの雰囲気が漂う庭園を

見物することだけに

夢中になっていました。

 

急速に広がった噂が

ビョルンにまで届いた頃

グレディスは足を止めました。

木の下で

二人の女性の目が合いました。

 

グレディスは、

凍りついてしまったエルナを

じっと見下ろし、微笑みながら

このように

挨拶を交わすのは初めてですね。

会えて嬉しいと、

最初に優しい挨拶をしました。

後を追って来た貴婦人たちと

見物人たちの視線は、

エルナに注がれていました。

 

返事のないエルナを催促するように

グレディスは、

もう一度力を入れて、

エルナの名前を呼びました。

ようやく我に返ったエルナは、

慌てて王女に対して

礼儀をわきまえました。

声がめちゃくちゃ震え、

強張った身振りでしたが、

今のところそれが最善でした。

 

グレディスと目が合った瞬間、

エルナは、王子のせいだと

気づきました。

誰もが知っている、

あの騒々しいスキャンダルを、

元妻の王女が、

知らないはずがありませんでした。

王妃に続いて姫まで。

スキャンダルの波紋は、

一体どこまで広がるのかと考えると、

エルナは、

息が詰まるような気がしました。

できることなら、

早く一週間が過ぎて、

この蜘蛛の巣に似た世界から

抜け出せるように

時間を早送りしたいと願いました。

 

グレディスは、

挨拶を交わした後も去らず、

まるで、懐かしい旧友にでも

会ったかのように、

あれこれ身近な話をして、

自然に会話を繰り広げました。

彼女が、レチェン社交界の婦人たちの

羨望を一身に受けているのかが

分かるような、

とても優雅で上品な態度でした。

 

グレディスは、

排斥されている田舎娘に対して、

まだ所属する会がないらしいけれど

とても寂しいのではないかと

憐憫のこもった言葉をかけながら

こっそりとビョルンの方を見ました。

彼は、ただ遠くから

面白い見物を鑑賞するように

見守るだけで、特に気を使う気配は

ありませんでした。

 

やはり、むやみに騒ぎ立てた

デマに過ぎないと

結論を下したグレディスは

自分の前にいるお嬢さんが

心から可哀想になりました。

自分のせいで、

ビョルンに利用されているかと思うと

いくらかの罪悪感を覚えたので

思いもよらない親切を

施すことにしました。

 

グレディスはエルナに

演劇に興味があるかと尋ねた後、

10日後に、

自分が属している会が準備している

市立保育園の基金を作るための

慈善演劇公演があるけれど、

良ければ参加して欲しいと

思っていると、

心からの微笑を浮かべながら

提案しました。

 

無害な子供のような相手に

刃を向けるのもおかしい。

ビョルンのせいで、

社交界の女性たちから嫌われている

この田舎娘に

友達を作る機会くらいは

プレゼントしたいと思いました。

もちろん、ルイーゼをはじめとして

他の会員たちは

気が進まないだろうけれど、

了解を求めることは

不可能ではないはずでした。

 

信じられない提案に、

慌てたように沈黙していたエルナは

恐縮ですと、

慎重に口を開きました。

グズグズする態度とは違って、

エルナの声は澄んでいて

穏やかでした。

 

全く予想できなかった返事に

グレディスの瞳が揺れました。

エルナと話し始めて以来、

初めて余裕を失いました。

 

エルナは、

自分に気を使ってくれたことには

心から感謝しているけれど、

その演劇公演には

参加できなさそうだ。

本当に申し訳ないと断り、

丁寧に頭を下げました。

まだ言いたいことが

残っているように

唇を震わせましたが、

その言葉を出す代わりに、

もう一度、先程より深く

頭を下げることで

謝罪の意を表しました。

 

冷たい水をかけたような

静寂が過ぎ去ると、

見物人たちは興奮しながら、

ハルディ家の令嬢が

グレディス王女に大恥をかかせたと

ひそひそ、話し始めました。

その噂が、

どれだけ急速に広まっているのか、

遠くから、

彼らをチラッと見るだけで

十分にわかりました。

ビョルンも、その一人でした。

 

グレディスは、動揺する姿を

見せないように努めながら、

ビョルンが立っている方向を

見ました。

慌てて駆けつけたペーターから

知らされたような彼は、

眉を軽く顰めたまま

グレディスを見ました。

そして信じられないことに

ニッコリと微笑みました。 

 

あの微笑の意味は一体何なのか。

途方に暮れるような恥辱の中でも

微かな期待にしがみつく

自分が惨めで

涙が出そうになる頃、

ビョルンが近づいて来ました。

人々の視線は、

彼に集中しました。

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midy様の予告通り

今回もマンガで省かれたシーンが

満載でした。

 

膝上丈のズボンを穿く男性を

直視できないくらい

恥ずかしがるなんて、

なんてエルナは純情なのでしょう。

ズボンにしても、ボートにしても

エルナは、バフォードの田舎で

あまりにも世間とかけ離れ過ぎた

生活を送っていたのだと感じました。

 

グレディスは

蝶よ花よと育てられ、

常に自分が一番輝く存在でいたかった。

けれども、ビョルンにとって

グレディスは、

誰でも良かった婚約者の一人なので

グレディスを崇めてくれない。

だから、自分のために

詩で愛を語ってくれるジェラルドに

魅かれたのだと思いました。

 

エルナに親切にするのも、

自分が崇められるため。

ビョルンと、よりを戻し

彼を王太子に戻らせたいのも

グレディス自身が

王太子妃として崇められたいため。

いかにも自分が

ビョルンを許すような態度を

皆に知らしめているのも、

自分が崇められたいため。

それに、エルナのことを

田舎娘呼ばわりするなんて

完全にエルナのことを

馬鹿にしている。

 

グレディスは、同情する余地もない

とんでもなく、最低な女だと

思いました。

**************************************

いつも、たくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

実は、コロナを発症し、

水、木と発熱しておりました。

それでも、一昨年の夏に

罹患した時よりは、症状が軽く

回復するのも早いように思います。

熱が出ても、主婦に休みなし。

いつも通り、洗濯もし

超手抜きでしたが、

食事の支度もしていましたので

ハーレムの更新も、

何とか、やれました。

 

今は、インフルエンザが

猛威を振るっているそうですし、

コロナの心配もありますので、

どうぞ、皆様、お気を付けください。

それでは、

次回は土曜日に更新いたします。

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