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泣いてみろ、乞うてもいい 22話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ マンガ 32、33話 夏の終わり

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22話 マティアスは夕食前まで、離れで仕事をするつもりでしたが・・・

 

マティアスは邸宅を出て

ふと周りを見回した時、

庭師の小屋へ続く道に

立っていました。

彼は、しばらく立ち止まりましたが

そのまま進みました。

 

全てが順調に秩序正しく

流れなければなりませんでした。

このような異物感は、彼女の涙数滴で

きれいに消えるだろうと思いました。

 

マティアスは大股で歩きながら

いつもより、少し荒れた手つきで

ネクタイを緩め、

シャツのボタンを外しました。

 

マティアスは、

制御不能な感情が大嫌いでした。

彼は、自分が管轄する世界の

全てのものが

本来の場所にあることを望みました。

あえて女性に執着しない理由も

そこにありました。

 

性欲は、単なる本能に過ぎず、

マティアスは、

それにこだわったり

振り回されたりしたことがなく

むしろ邪魔で、

適当に満たしてしまう何かに

過ぎませんでした。

最初から、そのような欲望が

それほど大きくもありませんでした。

そのため、

レイラに敏感に反応する

自分の姿が与える不快感は、

さらに大きくなりました。

 

彼女しか見えず、

全ての感覚が集中し、

抑えきれない熱気が

体の奥深くから積もって行きました。

意志が、低劣な衝動と考えを

断ち切れない瞬間も

しばしば訪れました。

 

マティアスは、そんなものに

囚われている自分に気づく瞬間が

嫌でした。

そんなものは、人生の優先順位に

置くほどのものではなく、

当然、レイラ・ルウェリンも

そうでした。

彼はそれを確認したいと思いました。

カイルを見送って、戻って来たレイラは

裏庭の木の下に落ちている

羽毛が生え始めたばかりの小鳥を

見つけました。

 

レイラは小鳥を慎重に抱きかかえ

木の上を見上げると、

鳥の巣がありました。

かなり高い所でしたが、

幸いにも小鳥に

大きな怪我はなさそうでした。

 

レイラは、

大丈夫、家まで送ってあげると言って

小鳥をエプロンのポケットに入れると

梯子を木に立てかけて

上り始めました。

 

巣は梯子より少し高い枝の間にあり

そこからは、

木に登らなければなりませんでした。

普段なら難なくやり遂げられるけれど

ポケットに小鳥が入っているので

身のこなしが、

はるかに慎重になりました。

 

巣の近くまで上がったレイラは、

片手で枝をつかみ、もう片方の手で

エプロンから小鳥を取り出すと、

その手を思いっきり伸ばして

小鳥を巣に戻しました。

 

しかし、安堵したのも束の間、

レイラは、

枝をつかんでいた手を

離してしまいました。

バランスを崩した体が傾き、

世界がグルグル回りました。

 

幸いにも、辛うじて枝をつかんで

ぶら下がることができましたが

梯子は、地面に

倒れてしまっていました。

しかも、

レイラの体重に耐え切れない

細い枝なので、

ポキッと折れる音が出ました。

 

レイラは驚いて

「ビルおじさん!」と叫びましたが

何度も呼んだ後に、

ようやく彼が不在であることに

気づきました。

 

すでに、カイルは

かなり遠くまで行っていることを

知っていましたが、

レイラは、

今にも泣き出しそうになりながら

彼を呼びました。

 

その時、歌うように

彼女の名前を呼ぶ

優しい声が聞こえて来ました。

頭の中が真っ白になった瞬間にも、

レイラはその声の持ち主に

気づくことができました。

恐怖に怯えた目を下ろすと

ヘルハルト公爵が立っていました。

危機に瀕した彼女を

見物でもするかのように

のんびりした姿でした。

 

倒れた梯子と、

半分折れた枝を見ていた彼は、

危なげにぶら下がっている

レイラを見て、

「助けてあげようか?」と

尋ねました。

信じられないことに、

彼は笑っていました。

 

なぜ、よりによって、

あの狂人なのか。

レイラは、

今にも落ちそうな恐怖の中で

頑強に拒否しました。

無駄だと分かっていながら

木の幹をつかんでみようと

もがきましたが、半分折れた枝が

さらに危うく揺れました。

 

恐怖で真っ青になったレイラは

カイルの名前を叫びました。

マティアスは、

彼が去った道を見回した後、

クスッと笑って、

あの子は来ないと言いました。

 

レイラは、

このように、危機に瀕している人への

心配など少しもないのだろうかと

考えましたが、

あの狂った公爵に、

普通の人間の情なんて

期待してはいけないことに

気づきました。

 

レイラは、

どうして、そこにいるのか。

助けてくれないのなら行ってと

怒りながら叫びました。

マティアスは、

もうすぐ落ちそうだから、

人を呼んであげなければならないと

答えました。

 

「何ですって?」と

レイラが聞き返すと、マティアスは

自分は、そんなに非情ではないと

気だるそうな笑みを浮かべながら

答えました。

 

マティアスは、

レイラが必死に探している

エトマンを呼んであげると

提案しましたが、木の高さを見て、

父親のエトマンが必要だと思うと

言いました。

 

レイラは、公爵に

何でも言えるような気分でしたが

そのような状況では

ありませんでした。

レイラは、

あの男に哀願するくらいなら

落ちようと思いましたが、

その決心を忘れさせるほど

恐怖が大きく、レイラは

助けて欲しいと頼みました。

 

マティアスは、

のんびりとジャケットを脱ぐと

自分を呼んでみてと言って

木に近づきましたが、

再び立ち止まって、

レイラを眺めました。

要求が受け入れられないなら、

レイラの墜落を

見物でもするかのような態度でした。

レイラは、彼が、いくらでも、

そうできる人であることを

よく知っていました。

 

レイラは

「公爵様、お願いします!」と

泣き声混じりで叫びました。

墜落の瞬間が近づくと、

レイラの呼びかけは、

より切実になりました。

 

結局、枝が折れた瞬間にも

彼を呼びました。

平然と見物していた姿が嘘のように

素早く走ったマティアスは

落ちるレイラを抱き締めました。

その反動で

一緒に地面に倒れた瞬間も、

マティアスは、

強く抱き締めたレイラを

離しませんでした。

 

グルグル回っていたレイラの頭は

徐々に現実を認知し始めました。

高い所から落ちたという事実が

信じられないほど、穏やかなのは

彼女を抱いているマティアスの懐が

与えた安穏であることを

レイラは遅れて悟りました。

彼は彼女の下に横たわっていて

レイラは、一つも怪我をせず

公爵の胸に抱かれていました。

 

彼の心臓の鼓動を

レイラは胸で感じ、

彼女の後頭部と腰を包んだ

彼の両腕は、とても硬く、

彼の首筋と

温かくて滑らかな肌からは、

微かにハッカのような香りが

感じられました。

 

頬から始まった熱気が

たちまち全身に広がると、

レイラは体を震わせました。

しかし、逃げようとすればするほど

マティアスの束縛は

激しくなるだけでした。

 

密着した体を通して感じる彼は、

あまりにも大きくて硬く、

その事実が与える当惑と

見知らぬ感覚を否定するかのように

レイラは夢中でもがきました。

 

マティアスは、

じっとしていてと

ため息をつくように命令しましたが

その言葉の意味が分からないレイラは

さらに激しく抵抗しました。

 

レイラは、

ますます強くなる熱感に

身震いしました。

あり得ない、嫌だと

叫びたかったけれど、

声が出ませんでした。

 

その間、レイラを抱いた

マティアスの体は

ますます熱くなって行きました。

後頭部と背中を包んだ手にも、

さらに大きな力が注がれました。

 

レイラは、このすべての感覚が、

あまりにも不慣れで、異常で

耐えられませんでした。

レイラは本能的な恐怖に襲われ、

彼から逃れようとしましたが

どれだけ抵抗しても、彼を

突き放すことができませんでした。

 

恐怖に襲われたレイラは、

公爵の耳をむやみに噛みました。

マティアスは、

低い呻き声を上げて

レイラを押し退けました。

激しく襲い掛かった人らしくなく

ブルブル震える姿に、

マティアスは呆れました。

そのくせ、目つきは不躾なので

マティアスは、

思わず苦笑いしました。

 

「淑女になれ」と言ったマティアスは

噛まれた耳を撫でていた手で

レイラの髪の毛をつかみました。

それに気づいた時、レイラは、

いつの間にか、

地面の上に仰向けになっていました。

 

マティアスは、

助けてやった代価がこれだなんて

淑女らしくないと思わないかと

尋ねました。

レイラは、

彼を押し退けようとしながら

公爵が紳士ではないのに、

なぜ自分が

淑女にならなければならないのかと

反論すると、

真っ赤になった顔を

横に向けました。

しかし、マティアスは、

レイラの顎をつかんで、

自分と向き合わせました。

 

マティアスは、

確かに、レイラが

最高の紳士だと言ったと

反論しました。

レイラは、それを否定し、

自分が見間違えた。紳士ならば

なぜ、こんな、とんでもないことを

と、泣き出しそうな顔で

どもりながら言いました。

 

レイラは、

何とか彼から逃れようと必死になり

まるで汚いものが付いたように、

自分の唇を擦りました。

そのレイラの手を見て

マティアスの眼差しが

深く沈みました。

 

レイラは、

しかめっ面で彼を睨みつけながら

退いて欲しいと訴え、

こんなの、自分は・・・

と言いかけている途中で

鋭い悲鳴を上げました。

 

夢中で自分を殴り、

引っ掻く小さな手を握って

地面に押しつけたマティアスは、

噛み砕くように、

耳に噛みつきました。

 

マティアスは、

耳たぶを舐めてクスクス笑うと

悲鳴が混じったレイラの息づかいが

荒くなりました。

 

もらったものを

同じように返す気になった

マティアスは、執拗な刺激で

レイラを追い詰めました。

 

マティアスは、体重をかけて

レイラの手足を押さえつけ、

真っ赤になった耳のあちこちに

自分の歯型を刻みました。

満足そうな笑みを浮かべて

顔を上げると、

乱れたレイラの顔が見えました。

自分に

何が起こったのかも分からない

無垢な瞳は涙を湛えていました。

 

マティアスは、

レイラの指を握り締めながら

普段より、

はるかに濃い色を帯びている

レイラの唇を飲み込みました。

 

驚愕したレイラは

マティアスの唇を噛みましたが、

彼は簡単に、

その抵抗を制圧しました。

 

この蒸し暑かった夏が

もうすぐ終わることを

よく知っているけれど、

マティアスは止まれませんでした。

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品行方正。親の期待を一身に集め

理想的な当主になるべく

育てられてきたマティアスの

タガが外れてしまった。

前半は、自分のことを

冷静に分析していたけれど、

レイラに密着したことで

理性を失いそうになった。

それでも、何とか自分の欲情を

抑え込もうと思ったけれど

レイラが耳を噛んだことで

自分を

制御できなくなってしまったのだと

思います。

非力なレイラが可哀想で

読んでいて辛くなりました。

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