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問題な王子様 34話 ネタバレ 原作 あらすじ マンガ27話 嵐の日

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34話 エルナがパーベルと夜逃げをする日がやって来ました。

 

リサは、エルナの髪を梳かしながら

今日は花を一輪も作らないのかと

それとなく尋ねました。

ここ数週間、睡眠時間まで削って

造花を作ってきたエルナは、

昨日の午後、

デパートに納品して来た後、

仕事を中断しました。

世間に非難されて騒々しい中でも、

黙々と仕事だけに没頭していた

お嬢さんの突然の変化に、

そろそろ、リサも

心配になって来ていました。

エルナの顔も、普段より

青白く見えるような気もしました。

 

返事もなく

笑ってばかりいるエルナに

リサは、

もしかして体調が悪いのかと

尋ねると、エルナは否定し

ただ、少し休みたいだけと

答えました。

リサは、

全く信じられませんでしたが、

それならよかったと

とりあえず、納得しました。

 

いくら世事に超然とした

気性だとしても、

ひどく悪意的に噛みついてくることが

大したことでないはずがない。

当事者でもないリサの心が

痛むほどでした。

 

リサは、

誰が何と言おうと、

自分はお嬢さんが好きだと言うと

いきなりエルナの手を握りました。

そして、

お嬢さんがどんな人なのか、

きちんと知らない人が騒ぐ言葉を

絶対に気にしないように。

そうすれば、すぐに収まる。

ここの人たちが熱狂する

スキャンダルというものは

いつもそうだからと話すと、

信じてくれますよねと尋ねました。

エルナは、信じると答え、

微笑みながら頷きました。

自分を慰めたいという

リサの気持ちが

分かるような気がしました。

 

エルナはリサにお礼を言い、

忘れないと言いました。

リサは、

なぜ二度と会わないような

言い方をするのか。

自分は、お嬢さんがお嫁に行っても

ついて行く。

自分を置いて行こうなんて

考えないでと言うと、

笑い出しました。

幸い、無意識のうちに

エルナが犯したミスに

気づかなかったようでした。

エルナは静かに微笑むことで

代わりに答えました。

 

パーベルとの約束の日は

1日後に迫っていました。

明日の今頃は、

バフォード行きの列車に

乗っているだろうから

髪を梳かしてくれるリサと

談笑しながら、一日を終える夜は

今日が最後となるわけでした。

 

リサはいつものように

優しく挨拶をした後、退きました。

エルナは足音が聞こえなくなるまで

閉まっている扉を

じっと見つめました。

ここにいる間のほとんどが

騙され、利用され、

嫌われた記憶しかないけれど

リサだけは、

良い思い出として

大切に残すことができそうでした。

また、

この世界での評判がどうであれ、

少なくともエルナにとっては

恩人である、あの王子も

そうでした。

 

長引く雑念を断ち切るように

立ち上がったエルナは、

ベッドの下に隠しておいた

トランクを取り出し、

持っていく荷物を確認しました。

ここで父親に与えられた物は

何一つ持って行かないので

ここへ来た時のように、

身軽に去れば良いだけでした。

そして、無意味な考えと傷も

不必要な物たちのそばに

残しておくことにしました。

 

エルナは覚悟を決めたように

息を深く吸い込むと、

トランクを再び隠しました。

その間に、微かに聞こえていた

荒々しい足音が近づいて来ました。

悲鳴に近いリサの声も一緒でした。

 

体が記憶している恐怖に捕らわれて

固まっていたエルナは、

震える両足をかろうじて支え、

よろよろと

寝室の扉の前に近づきました。

急に扉が開いたのは、

エルナの手がちょうど鍵に

触れた瞬間でした。

バランスを失って倒れたエルナの上に

酒の匂いをプンプン漂わせる

ハルディ子爵の影が落ちました。

彼を引き止めるリサを押し退けた

ハルディ子爵は、

扉を閉めて鍵をかけると

エルナの髪を乱暴につかみました。

鈍い打撃音と悲鳴、

荒々しく降り注がれる悪口が

入り混じりました。

窓を揺らすほどの激しい風雨。

夜が明けると、

風は一段と激しくなりました。

パーベルは心配そうな顔で

ガタガタと音を立てる窓越しに

外を眺めました。

 

よりによって、こんな重要な日に

こんな悪天候だなんて。

電報を送って、

出発を一日ぐらい延ばそうかと

悩んでみましたが、

もしも電報がエルナ以外の

ハルディ一家の手に渡れば、

あまりにも危険が大き過ぎました。

気を引き締めたパーベルは

カーテンを閉めて向き直りました。

 

シュべリンから、

汽車で半日ほど離れた

この小都市を訪れたのは

肖像画を依頼されたためでした。

アカデミーの院長に

紹介してもらった仕事でしたが

エルナとバーデン家の家族が

当分、生活費の心配する必要が

なさそうな金額である上に、

それほど、長い時間が

かかりそうもなかったので

快く引き受けました。

 

ところが、

モデルである老婦人の健康状態が

良くなく、彼女が

長時間座っていることを苦しがるため

本来の計画通りなら、

遅くとも2日前にはシュベリンに

戻れたはずなのが、

予定が遅れてしまっていました。

幸い、スケッチ以外の作業は

シュベリンに戻って進めればいいので

今日の午前中には仕上がりそうでした。

 

奥様の準備ができたと

邸宅の執事が、

嬉しい便りを伝えに来ると、

すでに準備を終えていたパーベルは

いつもより焦った足取りで

寝室を出ました。

 

7時に中央駅広場の時計台前。

パーベルは、

エルナとの約束を繰り返しながら

イーゼルの前に立ちました。

 

窓の向こうで稲妻が光りました。

今回の雨は、どうやら簡単に

止みそうにありませんでしたが

通りは、がらんとしているものの

社交クラブの中は

いつものように賑わっていました。

 

再燃したスキャンダルが

砲火のように沸き立っても、

ビョルンの日常は平穏でした。

随分前から、そんなことは

気にしなくなっていたし、

今回のスキャンダルの刃先が

向かったのは彼ではなく

あの女、エルナでした。

 

見慣れた顔たちと

上の空で挨拶を交わしたビョルンは、

すぐにカードルームに向かいました。

タバコの煙とくだらない雑談、

妙な興奮と緊張が漂う空間の中に入ると

一日中気分を汚していた天気の考えが

一掃されました。

 

レナードは、

あれだけ多くの賭け金を

持って行ったのに、

また自分たちの金を盗みに来たのかと

言うと、ビョルンのそばに座りました。

そして、

あの日以降、ハルディさんと

会っていないよねと、

凄い秘密でも伝えるかのように、

彼は声をぐっと低くして尋ねました。

ビョルンは返事もせずに

葉巻を吸い始めました。

その行動が、概して

肯定的なものだということを

知っているレナードは困惑しました。

 

レナードは、

ただ楽しもうと思って

子供っぽい賭けを主導しましたが、

いつの間にか、

一人の女性の将来を台無しにしてしまい

妙な罪悪感を振り払うことが

できませんでした。

ビョルンの参加がもたらす波紋を

見落としたのが禍根でした。

 

レナードは、

賭けも終わったのに、

あえて、また会うことはないよねと

言おうとしたこととは違う言葉を

呟きました。

この王子が、興味を失った女性に

どれほど無情だったか。

エルナの話を持ち出しても、

眉一つ動かさないことから、

それは明らかでした。

 

天下のグレディス姫も

取るに足らないものにしてしまった

この王子に、

潰れ行く貴族の家の娘一人を

構うはずがなく、

今となっては、彼らが

エルナ・ハルディを助ける道は

事実上、存在しませんでした。

 

彼女を攻撃している主な理由は

大公と王女がよりを戻すことを

妨害しているということでしたが

その問題は、二人が

本当によりを戻さない以上、

解決は困難でした。

 

王太子夫妻に対する人々の愛情は

格別でした。

この世に二つとない美しい王子と姫の

童話のような愛。

両国間で、

婚約の話が交わされる頃から、

彼らは、

すでにその話の主人公で、

どんな歌手や俳優も、

ビョルンとグレディスより

人気を集めることは

できませんでした。

人々は彼らの一挙手一投足に注目し

そこから派生する話を愛しました。

 

彼らの結婚式を祝うために集まった

雲の群れのような人波と

販売開始と共に

品切れになった記念硬貨

各家に、

一枚ずつは持っていたと言っても

過言ではない

印刷した王太子夫妻の肖像画

まだ伝説のように語られていました。

 

ビョルンとグレディスは

両国の王室を象徴る存在であり、

彼らの人気は

王室に対する愛と支持につながりました。

だからこを、彼らの離婚が

レチェンの王太子を交代するほど

大きな波紋を呼んだのでした。

 

ビョルンの命を奪いそうな勢いで

悪口を言いながらも、

ペーターの母親と妹は、

依然として引き出しの中に

王太子夫妻の肖像画

保管していました。

他の人たちもそうでした。

彼らの怒りが激しいのは、

美しく完璧だった主人公たちを

依然として愛しているためでした。

二人が、よりを戻しさえすれば、

ビョルンが、再び王太子の座に

戻ることができるのではないかと

内心期待する人も

少なくありませんでした。

 

だから、危機を乗り越え、

ようやく今になって、

本当にハッピーエンドを

迎えようとする主人公たちを

引き裂いている悪役

エルナ・ハルディに

刃のような非難が注がれていました。

 

狂ったように降っていると

窓の外へ顔を向けたペーターが

落ち着かない顔で呟きました。

ビョルンは、

そちらへ顔を向けました。

 

ひどい天気だけれど、

劇的な逃走劇を繰り広げるには

かなり、良い背景に

なってくれるような気もしました。

 

はたして彼女は、自分の志を

叶えることができるだろうか。

この雨が止む頃には、どんな形であれ

その結果が分かるはず。

成功と失敗。

どちらかにお金を賭けるなら、

どちらの方が、

少しでも勝算が高いだろうか。

 

かなり真剣に考えていたビョルンは

そんな自分をあざ笑うように

短いため息をつきました。

 

ビョルンは、自分の名前を呼ばれると

窓からカードの上に視線を戻しました。

ちらりと見た時計は

5時を過ぎていました。

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髪をつかんで殴るなんて、

実の父親のすることとは

思えません。

エルナの母親にも

そうしていたかと思うと、

バーデン男爵夫妻の

ウォルターへの恨みは

相当なものだったのだと思います。

ウォルターにとって、エルナは、

存在すら忘れていた娘なので

役に立たなければ、

どうなってもいいのだと思います。

 

パーベルの計画通りなら、

余裕をもってシュベリンに

帰れるはずだったのに。

肖像画の依頼者が老婦人だったことと

嵐が、ビョルンに

幸運をもたらしたのですね。

 

ここまで国民に愛されていたら

グレディスが、その栄光を

再び享受したいと思うのも

当然かもしれません。

子供の頃から見て来たなら、

ある程度、ビョルンの性格を

知っていたはず。

それなのに、

彼から、愛と関心をもらえなくて

ジェラルドに走ったグレディスは

本当に愚かだと思います。

 

興味を失った女性に無情なビョルンが

エルナの夜逃げが成功するかどうか

カードをしながら気にするということは

エルナに興味津々ということだと

思います。

 

余談ですが、嵐の中、

社交クラブまで、

貴族のおぼっちゃまたちを

馬車で連れて来た、御者と馬を

労ってあげたいです。

***********************************

いつもたくさんのコメントを

ありがとうございます。

皆様の考察の鋭さに

いつも感嘆しております。

この場を盛り上げてくださる皆様に

心から感謝申し上げます。

 

次回は、明日、更新いたします。

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