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995話 外伝104話 タッシールは百花の居場所を把握しているでしょうか?
◇やはり知っていた◇
カルレインは
ラティルの指示に従いました。
やがて彼は、
タッシールと肩を組んで現れましたが
ラティルは、彼の足が、
地面から少し浮いていることに
気づきました。
どうやらカルレインはタッシールを
半分持ち上げるようにして、
連れて来たようでした。
カルレインが手を放すと、
タッシールは肩を擦りながら
習慣的に笑いましたが、
病気の人を発見すると
急いで真顔になりました。
タッシールは、
来る途中で、全て話は聞いている。
皇帝の言う通り、
自分は百花の位置を知っている。
一日単位で報告を受けているので、
正確な位置ではないけれど、
それくらい分かれば、
グリフィンが捜し出すことが
できるのではないかと言うと、
地図を探しました。
クラインが、
素早く地図を持ってきて広げると
タッシールは一つの地点を指し、
この辺にいるはずだ。
移動速度を計算してみると、
この神殿に泊まっていると思う。
神殿に到着すると、
一日か二日、滞在してから
出発すると説明しました。
グリフィンは、
すぐ窓の外に飛んで行きました。
羽根が風を切る音がすると、
ゲスターが放った幽霊が
陰鬱な声で泣き叫びました。
ラティルは椅子に腰をかけると
苛立たしげに
両手を擦り合わせました。
ゲスターを送った方が
良かっただろうか。
しかし、ゲスターの狐の穴も、
一度行った所でなければ、
正確な地点に移動することは
できないと、ゲスターが言っていた。
広範囲に人を探すためには、
高いところから探せる
グリフィンの方がいいと、
不安な気持ちを抑えるために、
肯定的なことを色々考えました。
それでも、
手のひらと足の裏がかゆくて
たまらないほどでした。
ついにグリフィンが戻ってくると
ラティルは
急いで立ち上がりました。
じっとしたまま、
ずっと座っていたので
足がつりましたが、
ラティルは痛みを無視しました。
グリフィンの背中から降りた
ザイシンは、ラティルに
話は聞いたと言うと、
窓を乗り越えて、
すぐにアイギネス伯爵夫人に
近づきました。
彼が伯爵夫人の首に手を当てると、
青白い彼女の顔に
血の気が徐々に戻り始めました。
ザイシンは治療を終えると手を離し
安堵のため息をつきました。
ラティルは乳母に駆け寄り、
ベッドの前に跪きました。
サーナット卿が止めましたが、
ラティルは、
乳母が目覚めるかどうかを確認したくて
立ち上がりませんでした。
ザイシンは、その姿を
丸くなった目で見下ろしました。
しばらくして伯爵夫人が
うめき声を上げながら寝返りを打ち
目を覚ましました。
ラティルは、
すぐに彼女を抱きしめました。
自然と涙がこぼれました。
乳母は、ぼーっとしていて、
これは、どういうことなのかと
尋ねましたが、
ラティルを抱き締めて、
背中を軽く叩きながら、
皇帝が、また皇女に戻ったのかと
からかいました。
ラティルは、若い皇女の頃のように
乳母を放すことなく泣き続けました。
サーナットは、ラティルの背中を
悲しそうな目で見つめました。
側室が、
いくら喧嘩を売ってきても、
それに巻き込まれて
一緒に戦うのではなく、
しっかりと立って、
ラティルに寄り添うべきだったという
後悔が押し寄せて来ました。
プレラが泣いたからといって
悪口を言ってはいけないと
クラインが冗談を言うと、
ラティルは、
ようやく鼻をすすりながら
乳母を放しました。
カルレインは、
すぐにハンカチを取り出しました。
グリフィンも、
小さな体で自分なりに力を出して
ラティルの足を抱きしめ、
軽く叩きながら、
「ロード、泣くな」と慰めました。
アイギネス伯爵夫人は
グリフィンの言葉を
聞くことはできないけれど、
ラティルが飼っている鳥が
ラティルを慰めようと努力する姿が
可愛くて、笑いを爆発させました。
ラティルは乳母が笑うと
完全に安堵しました。
ラティルは、
よく笑っているから大丈夫だねと
言うと、アイギネス伯爵夫人は、
大丈夫だと返事をした後、
なぜ、自分がここに横になっていて、
身分の高い人々が、
皆こんなに集まっているのかと
尋ねました。
ラティルは、
乳母が大怪我をしたので、
ザイシンが急いで戻って来て
乳母を治療してくれたと答えました。
アイギネス伯爵夫人は、感謝の意味で
ザイシンと握手していましたが、
ザイシンがいなかったら、自分は乳母を
吸血鬼にしたかもしれないと
ラティルが付け加えると、
咽て咳込みました。
ラティルは乳母が驚くのを恐れて
すぐに、冗談だと訂正しました。
乳母は、
ラティルの手の甲を軽く叩いて
静かに笑いました。
しかし、頭の中で
忙しく状況を整理していました。
ギルゴールは、その光景を見て
面白くなくなったのか、
ある瞬間、消えました。
ザイシンは、
置いてきた百花を心配して
眉を顰めました。
やがて乳母は、
自分が最後に見た光景を
思い出しました。
恐怖に怯えた
一番目の皇女のことを思い出すと、
彼女の表情が一気に曇りました。
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◇真実を話して◇
その時、プレラは、
自分の部屋のベッドに腰掛けて
すすり泣いていました。
ギルゴールの言葉のせいで
泣き止むことができませんでした。
ラナムンは、
プレラが心配していることを心配して、
アイギネス伯爵夫人が
目を覚ましたというニュースを
聞くや否や、プレラに教えました。
しかし、プレラは、依然として
泣いてばかりいました。
30分近く経ってから、プレラは、
本当に自分が乳母を傷つけたのかと
かすれた声で尋ねました。
ラナムンが答えるのを躊躇うと
プレラは、
前にハラビーを怪我させたのも自分で
乳母を怪我させたのも自分なのか
正直に言って欲しいと哀願しました。
ラナムンは困惑しました。
このことは、皇帝とよく相談して
慎重に
話さなければならないことでした。
プレラは、涙をポロポロ流しながら、
乳母が自分を憎むようになったら
どうしようと嘆きました。
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◇お父様より強い◇
乳母は回復し、ゲスターは
グリフィンが探知できる石を
新しく作って
ザイシンに渡しました。
ラティルは百花に、
さらに腹を立てていたので、
こうなったついでに、
このまま行かないで、
百花一人で行ってもらおうと
ザイシンに勧めました。
しかし、ザイシンは大丈夫だと言って
再び旅に出ました。
ラティルは、グリフィンが
ザイシンを乗せて
飛んでいく姿を見て
ため息をつきました。
前日の昼に起きた事件から
丸一日が過ぎました。
口止めをしろと言ったけれど、
結局、噂は広まってしまいました。
子供たちが幽霊を見て、
悲鳴を上げながら逃げたため、
伯爵夫人が怪我をする前から
すでに、人が多く集まっていたので
噂を鎮めるのは困難でした。
人々は、プレラが赤ちゃんの時に
貴族たちを攻撃したことと、
ハラビー・ロルドの負傷、今回の
アイギネス伯爵夫人の負傷について
ひそひそ話しました。
ラティルは、先日の夜遅く、
プレラを慰めるために訪れました。
プレラには、
特別な力があるということを
知らせるとともに、練習して、
コントロールすれば良いと言って
抱きしめてあげるつもりでした。
プレラは傷ついたようでしたが、
ラティルが自分の力を例に挙げて
話してやると、
ついに気持ちがほぐれました。
プレラは、自分にこんな力があっても
母陛下は怖くないかと尋ねました。
ラティルは、
プレラの力はお母様の力と比べると
グリフィンの爪にも及ばない。
プレラは、お母様がどれだけ強いか
知らないでしょう?と尋ねました。
プレラは、
母陛下は、そんなに強いのかと
尋ねると、ラティルは、
「もちろん」と答えました。
プレラは「お父様より?」と尋ねると
ラティルは、
ラナムンに聞こえないように
お父様はお母様に、
一度も勝ったことがない。
お母様は片手でもお父様に勝てると
子供の耳元で囁きました。
その話は、翌朝、プレラを通じて
ラナムンの耳に入りましたが、
ラナムンはラティルの体面を守るために
自分がラティル限定で、
より強くなるという話は
しませんでした。
ゲスターは幽霊を回収し、
クラインの外出禁止は、
自然に解除されました。
ギルゴールとラティルは、
二度、言い争いましたが、
それでも、この騒ぎは、
それなりに、うまく
終わりそうに見えました。
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◇手に負えない◇
しかし、事件から三日目の午後。
アイギネス伯爵夫人は、
今回のことを、よく考えてみた。
実は、その前にも
何度か考えたけれど、
皇女と皇帝のことを考えて
なかなか踏み出せなかったと
話しました。
ラティルは、
前置きが長すぎるので不安だと
返事をしました。
乳母は、
プレラ皇女の乳母を、
新しく探して欲しいと懇願しました。
ラティルは驚いて、
乳母の手をギュッと握ると、
どういうことなのか。
ここを出て行くつもりなのかと
尋ねました。
乳母は、
皇女が赤ちゃんの時から
自分は乳母だった。皇女が、
こんなに元気で立派に育っている間
自分はそれだけ年を取ったと
答えました。
ラティルは、
何を言っているのか。
乳母はこんなに元気なのにと
抗議すると、乳母は、
元気だけれど、
子供一人を新しく育てるのは
少し大変だった。
それでもプレラ皇女のために
そばにいようと思ったけれど、
今回のことを経験して
分かったと言うと、
深くため息をつきました。
ラティルは、
あの世の入り口に行ってきた乳母に
大丈夫だから、
ずっと乳母でいて欲しいと
強く主張できず、
口だけパクパクさせました。
乳母は、
皇女が怖いからではない。
もちろん、皇女が、
自分の手に負えないと思ったのは
事実だ。
しかし、皇女が怖くて
避けたいわけではない。
文字通り、皇女のように
強い力を持った子が、
自分の手に負えないと話しました。
ラティルは
心臓がドキッとしましたが、
乳母が
何を言っているのか分かりました。
ラティルは、
皇女が、あのような事故を起こしても
対応できるほど、強い人を
乳母に選べということかと
わざと落ち着いて尋ねました。
乳母は「はい」と答えると、
少し考えてから、人魚のように、
正しくて善良ならば
必ずしも、人でなくても大丈夫だと
付け加えました。
ラティルは頷きました。
プレラが悲しむことを考えると、
すでに心臓が
締め付けられていましたが、
聞いてみると、乳母の言うことは
間違っていませんでした。
プレラが事故を起こしても、
すぐに収拾できる
強い乳母が必要でした。
血人魚は習性が違いすぎて困る。
しかし、吸血鬼の中からなら
見つかるのではないだろうか。
黒死神団の傭兵の中には
女性も多いので、
貴族の生活に慣れた
女性の吸血鬼の傭兵が
いるかもしれないと考えました。
ラティルは決断を下すと、
乳母の手を握りました。
そして、ラティルは、
プレラの乳母は、
もう一度、選ぶけれど、
それでも乳母は、
ずっと宮殿で過ごしてくれるよね。
乳母は自分の乳母でもあるからと
言いました。
アイギネス伯爵夫人は、
乳母を辞めたら、
自分の城に戻ろうと考えていました。
しかし、赤ちゃんの時から
育てて来たラティルが
悲しい表情で引き留めると、
どうしても帰るとは
言えませんでした。
アイギネス伯爵夫人は、
自分が皇帝の乳母であることは
変わりない。
ついさっき、
プレラ皇女が強すぎて、
手に負えないと言ったのに、
皇帝がそのように見つめると、
自分が世話をしなければならない
赤ちゃんのように見える。
実際、強さから言えば、
皇帝が一番怖い人なのにと
言いました、
その後、ラティルが
乳母を変えることについて
言及すると、
ラナムンも素直に同意しました。
もう乳母は自分のことが
嫌いになったのか。
自分が憎くて来ないのかと、
プレラは理解できずに
悲しみましたが、
子供に弱いラナムンも、
今回だけは動じませんでした。
ラティルは、この件が、
ここで本当に終わると思いました。
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◇ゲスターの提案◇
しかし、ラティルが
ざわついている宮廷人たちと
大臣たちを宥めるのに、
忙しくしている間、幽霊騒動以後、
ずっと静かに過ごしていたゲスターは
アイギネス伯爵夫人が
プレラ皇女の乳母を
辞めたという話を聞くと、
すぐ翌日に彼女を訪ねました。
久しぶりの休息に、伯爵夫人は、
コーヒーを飲んでいましたが、
ゲスターが来ると、驚き、
何の用で自分を訪ねて来たのかと
尋ねました。
ゲスターは、些細な話から始めて
色々な話をしていましたが、
伯爵夫人の気持ちがほぐれる頃、
皇帝と自分の赤ちゃんが生まれたら
伯爵夫人が乳母になってくれないかと
本論を切り出しました。
予想できなかった話に、伯爵夫人は
コーヒーカップを置きました。
どれだけ急いで下ろしたのか、
受け皿が揺れるほどでした。
ゲスターは顔を赤らめ、
怯えたように目を伏せると、
疲れて乳母を辞めたばかりなのに
申し訳ないと謝りました。
伯爵夫人は、
驚いだけれど、 大丈夫。
ところで、
6番目の赤ちゃんが生まれるまで、
まだ何ヶ月もあるのに、
なぜ、あえて自分に
そんな話をするのかと尋ねました。
すると、突然ゲスターは、
こんなことを言ってもいいのか
分からないというような
哀れな目をしたため、
乳母は、より一層訝しみました。
数秒後、乳母は固い表情をすると
もしかして、
ロルド家とアトラクシー家の仲が
悪いからなのか。
アトラクシー家を侮辱したくて
自分を利用しようとするのかと
尋ねました。
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自分の目の前で乳母が大怪我をしたり
乳母の怪我は
自分のせいだと言われたり、
その上、乳母が辞めると聞いて、
プレラには悲しいことばかり
続いていますが、
心がひねくれることなく、
優しい心を持ったまま
大きくなって欲しいです。
子供の頃から一緒にいて
大人になってもそばにいてくれた
アイギネス伯爵夫人は、
ラティルにとって
母親のような存在なのだと思います。
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