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問題な王子様 36話 ネタバレ 原作 あらすじ マンガ28話 差し伸べられた傘

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36話 ビョルンは雨の中を歩いているエルナを発見しました。

 

エルナは、時計台の下にしゃがんで

息を切らしました。

雨を避けるために、

駅舎に入らなければと

思いましたが、体が思い通りに

動いてくれませんでした。

 

パーベルは来ませんでした。

事情があって少し遅れるだけ。

すぐに来てくれると

信じていましたが、

パーベルは、

姿を現しませんでした。

 

何か間違いがあったに違いない。

絶対に、こんな風に

約束を破る人ではないと

結論を下したエルナは、

慌てて駅を抜け出して、

パーベルの家がある方向に向かう

駅馬車に乗りました。

 

もしかして、

事故が起きたのだろうか。

体の具合が悪くなったのなら

どうしよう。

一体何が起こったのだろうか。

 

しかし、パーベルの家は真っ暗で

力いっぱい扉を叩いて

名前を呼んでも、

返事は聞こえませんでした。

 

パーベルは来なかったし、

家はがらんとしている。

途方に暮れたエルナは、

これから、何をどうすればいいのか

自問すればするほど、

絶望と無力感だけが

大きくなっていきました。

 

エルナは、結局、

答えを見つけることができずに

駅に戻りました。

パーベルから借りることになっていた

お金がなければ、

バフォードに戻っても、

父親から逃れるのは難しい。

けれども、これ以上、

家と呼びたくないハルディ家にも

戻れないので、エルナの行く所は

結局、駅だけでした。

 

半分閉じていた目を、

やっとの思いで開けたエルナは、

力を込めて唇を噛みました。

傷口が開いた痛みが、

鈍くなっていた意識を

呼び覚ましました。

 

立ち上がって、駅に入って

パーベルを待たなければ。

エルナは両足に力を入れましたが

悪寒がして、

骨の関節がずきずきし始めた体は

思い通りに動いてくれませんでした。

 

真夜中を過ぎてもパーベルが来なければ

一人でもバフォードに帰ろう。

列車が止まったら、今夜は、

近くで泊まるところを探せばいい。 

 

エルナは、完全に壊れた傘をたたみ

トランクを握り、

熱くなった息遣いを懸命に整えました。

 

本当に簡単だ。

こんなに簡単なことだと

自分自身を慰め、もう一度

必死になってみましたが、

エルナは依然として、

体をまともに支えることが

できませんでした。

むしろバランスを崩して、

濡れた地面に、

座り込んでしまいました。

ぼんやりとした顔に

雨粒が、涙のように流れました。

それが嫌で、

袖で顔をこすりましたが、

すでに、

びしょ濡れになってしまった服は

何の役にも立ちませんでした。

 

エルナは地面に片手をつき、

傾いた体を支えながら

目をギュッと閉じました。

そして再び目を開けると、

エルナの所だけ、

雨が止んでいました。

 

エルナは顔を上げて、

目の前で傘を持って立っている

男を眺めました。

信じられないけれど、

ビョルン王子でした。

 

この状況を、

どう受け止めればいいのか分からず、

目を瞬かせている間に、

彼がエルナの前に座りました。

 

時間が止まってしまった中に

留まっているように、

2人の動きは止まっていましたが

雷鳴が聞こえて来ると、

ハッとしました。

 

先にそっぽを向いたのは

エルナでした。

ビクビクしながら

頭を下げる女性を見る

ビョルンの目が鋭くなりました。

 

彼は、手を伸ばして

エルナの顔をつかみました。

怯えている女性の震えが、

指先に生々しく伝わって来ました。

ため息混じりの悪口を吐いた

ビョルンは、もう一度、

今度は、優しい手つきで、

エルナの頬を包みこみ、

ゆっくりと、

慎重に顔を引き上げました。

2人の目が合いました。

 

蠢く首筋が落ち着くまで、

ビョルンは静かに

エルナを見つめました。

 

会うのが最後だと信じたあの夜、

祭りの川辺にいた時のように、

女性の目は澄んでいました。

走る馬車と止まない雨。

熱で混濁していく視界と、

そこに映る男の顔。

全く、現実のようではないけれど

夢というには、

あまりにも鮮明でした。

 

なぜ、現れたのか。

自分を探したのか。どうして?

 

数多くの質問が、

朦朧とした意識の中で

チラチラしましたが、

エルナは

何も言い出せませんでした。

意識を失わないために

努力するだけでも、力が足りず

声をまともに出せそうに

ありませんでした。

ビョルンの命令通り、

馬車に乗るしかなかった理由も

そこにありました。

 

行かないと、意地を張るエルナに、

ビョルンは、

誰を待っているかは分からないけれど

その人は来ない。

あなたを捨てたと、

ぞっとするような声で話しました。

エルナが

否定しようとすればするほど、

彼の言葉は冷たくなりました。

時計台は、

いつの間にか午前0時を指し、

エルナの瞳から、

最後の希望の光が消えました。

 

エルナはひどい悪寒と

めまいに耐えられず、

そっと目を閉じました。

 

ビョルンは、

エルナが、頑固に身に着けている

水が滴る帽子とマントを

すぐに取り払いたいという衝動が

起きましたが、

そんなことをすれば、

むしろ、あの女性を、

さらに苦しめることになりそうなので

まずは放っておくことにしました。

 

エルナの傷だらけの顔を見た瞬間、

ビョルンは、この女性が

父親から逃げようとする理由が

結婚商売のためだけではなく、

あのスキャンダルのせいで

むごたらしい暴力を受けたからだと

悟りました。

 

ある日突然、エルナ・ハルディが

行方をくらましたのは、

最初のスキャンダルが

起きた頃でした。

そして、女性が再び姿を現したのは

半月ほど経った後。

このような痣と傷が

跡形もなく癒えるためには、

その程度の時間が必要だったと

思うと、冷たい怒りが

こみ上げて来ました。

自分の命綱が付いているような商品に

傷をつけるなんて、

ウォルター・ハルディは、

父親としても商売人としても

ひどい男でした。

 

完璧な取引をした仲だと思っていたのに

思わぬ借金を

背負うことになってしまったビョルンは

体を丸めて震えているエルナを

当惑した目で見ました。

女性の頬は病的に赤く、

息づかいは荒くなっていました。

 

時計台の前をウロウロしていて

座り込んでしまった

エルナを見た瞬間、ビョルンは、

夜逃げを助ける者がいて、

高い確率で、それは男で、

最後の瞬間に、

この女を裏切ったのだろうと

思いました。

 

そこまで考えが及ぶと、ふと、

王立芸術アカデミーの美術展で見た

若い画家のことが思い浮かびました。

この女性が、

あれほど心を焦がしていた

赤毛のがっしりした男。

おそらく、名前は

パーベルだっただろうか。

 

そういえば、姫の男は詩人だった。

全大陸の賛辞と愛を受けた

その男は、2年前、

30にもならない年齢で生涯を終え

夭折した天才芸術家の仲間入りを

果たしました。

 

鹿たちは、一様に

芸術活動する男たちに弱いのかと

皮肉な笑みを浮かべながら、

ビョルンは思わず、

馬車の窓の外を眺めました。

誰もいない街の中。

道路の反対側から走ってくる

馬の蹄の音が、

鮮明に伝わって来ました。

 

ビョルンは、思わず

そちらに視線を向けました。

闇の向こうから、

馬を駆ってくる男の赤い髪を

見分けられるほど距離が狭まった頃

ビョルンの静かな眼差しが

鋭くなりました。

 

パーベル・ロアー。

彼の名前が、

鮮明に浮かび上がりました。

おそらく、

ハルディ家の令嬢を連れて

逃げるつもりだった男。

驚くほど完璧に予想と一致したので

ビョルンはクスクス笑いました。

しかし、あの画家が

女を見捨てていなかったことだけは

見当違いでした。

 

ビョルンは、

予測と統制の範囲外にある

この種の変化要因を、

あまり好みませんでした。

 

再び、けたたましく

雷鳴が鳴り響くと、

意識を失っていたエルナは

驚いて目を覚ましました。

まともに焦点が定まらない目は、

馬車の中を徘徊した後、

ビョルンの顔に触れました。

時々、浮び上がって

ビョルンの神経を引っ掻いた、

あの、道に迷ったような

子供の目でした。

 

その目が窓ガラスに触れた瞬間

ビョルンはカーテンを引きました。

それとほぼ同時に、

馬に乗った男と馬車は

すれ違いました。

 

カーテンに遮られた車窓を

じっと見つめていたエルナは、

しばらくして、

再び意識を失いました。

 

再び、自分の管轄下に置かれた状況を

見守っていたビョルンは、

そっと目を閉じたまま、

座席に深く座りました。

 

まもなく、馬車は、

ハルディ家のあるタラ大通りに

到着しました。

それを知らせるために、

馬車の扉をノックした御者は、

力なく、ぐったりしている

ハルディ家の令嬢が、

ビョルンの膝を枕にして

眠っているのを見て驚きました。

めちゃくちゃになった

マントと帽子の代わりに、

王子の服に包まれていました。

 

それから御者は、

主人の命令を聞いて、

もう一度、驚きました。

慌てる御者とは違って、

彼に対するビョルンの態度は

いつもと変わらず

平然としていました。

そのため、御者が、

何の反問もなく、

主人の命令を受けました。

何とも不思議なことだけれど、

王子の命令は、

一様に理にかなっているように

感じられました。

 

御者は、

あの令嬢を降ろすべき屋敷を眺めながら

こうしているうちに、本当に

大変なことになるのではないかと

しばらく悩みましたが、

再び馬の手綱を握りました。

大公の馬車はハルディ家を後にし

シュベリン宮殿からも遠い、

都市北部につながる方向へ

走り出しました。

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もし、今までエルナが

ビョルンに対して、何の恋心も

抱いていなかったとしても

この状況で救いの手を

差し伸べてくれたビョルンに

恋をしたのは間違いないと思います。

 

そして、ビョルンも、

エルナのことが好きだから、

彼女を見つけた途端、

彼女に傘を差し伸べ、

自分が濡れることも構わず、

エルナのマントを脱がせて、

自分の服をかけてあげた。

そして、

エルナがパーベルを見つけたら

彼の元へ行ってしまうと思い、

カーテンを閉めてしまった。

自分の予測と統制の範囲外にある

この種の変化要因を、

あまり好まないとか言っているけれど

裏切ったと思った男が来たことに

衝撃を受けただけなのだと思います。

 

ところで、御者は、

エルナを見て、

ハルディ家の令嬢だと分かったので

自分の考えで、

ハルディ家に向かったのでしょうか?

ビョルンは、エルナが

ウォルターに暴力を振るわれたことを

気づいていたのだから、

彼自ら、ハルディ家に行けと

言っていないように思いますが

もしかしたら、最初、ビョルンは

ハルディ家に向かわせたけれど

途中で、気が変わって、

別の場所へ向かわせたのかも

しれません。

 

パーベルも、激しい雷雨の中、

エルナのために

必死で、馬を駆って来たのに

後一歩のところで、

ビョルンにエルナを奪われてしまって

本当に可哀想だと思いました。

***********************************

いつも、たくさんのコメントを

ありがとうございます。

皆様からの温かい言葉を励みに

続けて、頑張りたいと思います。

次回は、明日、更新いたします。

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